神隠し

翔と楓が必死に戦っている中、父親が再び強く波動を放った。彼の異能「料理」によって、周囲の空気は次第に変わり、まるでその場のすべてが彼の手のひらの中で調理されているかのような異常な圧力を感じさせた。

「翔、楓…無駄だ。」父親は冷徹な声で言った。彼の目の前に広がる圧倒的な力を感じながら、翔は再びその力に押し潰されそうになった。結界はまだ翔を守っていたが、父親の力が強すぎてその防御も時間の問題に思えた。

「これが俺の力だ。お前たちの力など、一部に過ぎない。」父親は手を振ると、空間にねじれが生じ、翔と楓を包み込むように強力な圧力をかけてきた。その力は、まるで調理器具で食材を締め付けるように、二人を締め上げていく。

楓はその圧力に耐えようと必死に体を強張らせたが、足元が崩れ、彼女の体が揺れた。翔もまた、体が震えながらも結界を必死に維持しようと力を振り絞ったが、父親の力に対抗するには限界があった。

「翔、もう…無理だ。」楓は喘ぎながらも翔を見つめた。「こんなに強い力を前にして、どうして私たちが勝てるの？」

しかし翔はその言葉に逆らうように、歯を食いしばって言った。「無理だなんて言うな！俺は、絶対に負けたくない！」

翔はその時、何かを感じた。結界が弱くなっていることに気づきながらも、彼の内面で何かが目覚めるような感覚があった。彼の中に眠っていた力が、今、覚醒しようとしていた。

「まだ、終わっていない…！」翔は結界の力を再度強化しようとしたが、その瞬間、父親の力が再び圧倒的に襲いかかってきた。まるでそれが試練のように、翔の体と精神に重くのしかかる。

「君たちがどう足掻こうと、俺には勝てない。」父親は冷酷な表情で言い放ち、その手がゆっくりと翔に向かって伸びた。翔の体がその力に引き寄せられるように動き、彼は無意識のうちに膝をついてしまった。

だが、その時、翔の体内で何かが弾けるように力が放たれた。まるで封印されていた何かが解き放たれるような感覚があった。

「翔！」楓が驚きの声を上げると、翔の周囲に再び強力な結界の光が輝き始めた。それは、先ほどとは比べ物にならないほど強い光で、父親の攻撃を弾き返し、周囲に波動を放ちながら拡がっていった。

「これが…」翔は驚きながらも、その力の源が自分の中にあることを実感した。何かが目覚め、彼が完全に覚醒したのだ。

「なんだこれは…！」父親はその光を見て、表情を一瞬にして変えた。しかし、翔の力が増幅されるにつれて、父親の力が次第に押し返されていく。翔の中で新たに生まれた力は、父親の「料理」をも上回る圧倒的なものだった。

「翔、これが君の力？」楓は驚きのあまり言葉を失った。その強大な力がどこから来たのか、彼女には想像もできなかった。

翔は深呼吸をし、力を高めると、再び父親に向かって突き進んだ。「お前の異能に、俺は負けない！」

翔の新たな力が、父親の力を圧倒していく。その瞬間、父親は初めて不安を感じたような表情を浮かべ、ついにその力を解放することを決意した。