あれから何年経ったのか、数えることもやめた、 ある日の深夜。
ひとりの寂しさを紛らわすように、見もしないテレビを点けっぱなしで
ぼーっとネットサーフィンをしていたときだった。
ピンポーン、と、深夜には似つかわしくない軽快な音が部屋に響き、来客を知らせる。
誰だよ…と心の中で悪態をつきながら、立ち上がる。
そしてモニターに映る顔を見た瞬間、
全身が心臓になったように心拍数が跳ね上がるのが分かった。
気がつけば足は玄関に向かっていて、ゆっくりと扉を開けば、そこには。
「…仁人」
「…はや、と…」
「何しに来たの、」
「迎えに来た。仁人のこと」
「は、?」
「勝手だけど…夢叶えたら迎えに行くって、決めてた」
「叶えたの、あの夢…」
「取った。主演男優賞」
「これはもう、叶えたって言ってもいいだろ」
「そっか、…おめでとう」
「なぁ、仁人」
少しずつ歩み寄ってくる勇斗の顔が、
だんだんとぼやけてくる。
「愛してるよ」
そう優しく抱きしめられたことで、涙が溢れた。
何年も待ち続けた人が、今目の前にいる。
全てを逃すまいと、背中に腕を回して服を強く握った。
首筋に顔を埋めて大きく息を吸うと、あの頃と変わらない香りで肺が満たされる。
こうしてまた、この存在を実感する。
「仁人は俺のこと…まだ好き?」
「…好き、…俺も、愛してる」
鼻先が触れるほどの距離で見つめ合う。
「長い間、待たせてごめん 」
「ほんと…待たせすぎだよバカ」
ふっと鼻で笑って目を伏せると、少しずつ近づく唇。
空白だった期間を埋めるように、俺たちは触れるだけの長いキスを交わした。
「なぁ、俺がもう勇斗のこと好きじゃなかったらとか考えなかったの?」
「あー、たしかに」
「え、嘘でしょ」
「だって離れてからもずっと仁人のことばっか考えてたから」
「仁人も一緒かなって勝手に思ってたわ」
「…バカじゃねぇの、」
「ほんと素直じゃねぇなー」
「うっせぇ」
コメント
1件
夢叶えて迎えに来るとか王子様過ぎて流石に素敵スンギ