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第七話「古の想い、目覚める刻」
Scene.1:遠い陽だまりの面影
リリア・ヴァンルージュは、ディアソムニア寮の古い回廊で、
一人、黙って空を見上げていた。
静かに近づくと、彼は背を向けたまま、穏やかに言う。
リリア:「来ると思っていたぞ、フェイド。……いや、今は“ネメシス”か」
フェイド(微笑んで):「貴方には、隠しきれませんね。
ですが、今日はフェイドとして、貴方にお聞きしたいことがあるのです」
リリアは小さく笑いながら、君の方を向く。
その瞳は、まるで遥か昔を見ているようだった。
リリア:「マレウスのこと、じゃろう?」
フェイド:「……はい。彼の心の奥にある“歪み”――
それを知ることができれば、私は……まだ“対話”を信じられるかもしれません」
リリアはしばらくの間、黙っていた。
やがて、静かに語り始める。
✦ リリアの語り
リリア:「マレウスはな……昔から“特別すぎた”。
力が強すぎるがゆえに、恐れられ、遠ざけられ、
愛するという形すら、皆がためらっていた」
「じゃが、その中で――ほんの少し、手を差し伸べた者たちがいた。 おぬしらのような存在」
「けれど、それでも埋まらなかった。
“家族”としてではなく、“王”としてではなく――
ただの“マレウス”として、必要とされることが」
彼は、遠い空を見ながら言った。
リリア:「今、あやつは“眠って”おる。感情を封じ、理を装っておるが……
その奥で泣いておる。誰にも気づかれずに、ずっとな」
⸻
フェイド:「……それなら、私は彼を止めたい。
“王”ではなく、“友”として」
リリアは、その言葉に微笑を返し、静かに一歩、歩み寄る。
リリア:「ならば、これを渡しておこう」
そう言って差し出されたのは、
古びた銀色の懐中時計。
リリア:「これは、マレウスが幼き頃、大切にしていた物じゃ。
この“音”が届くなら……あやつの心にも、まだ灯は残っておるはず」
フェイド(受け取りながら):「……必ず、彼を目覚めさせます」
リリア:「頼んだぞ。おぬしだけが……“彼を孤独から救える者”じゃ」
選んだのは――
力を見せるでも、威圧でもない。
ただ、“いつも通り”の仲間たちとともに、
彼に「日常」の匂いを思い出させるという最も優しい戦い方だった。
Scene.2:風のない昼下がり、オンボロ寮前にて
ユウ:「マレウスに……会いに行くの?」
フェイド(小さく微笑んで):「はい。でも、“いつものように”……です。
私は彼に、“滅び”ではなく“日常”を思い出してほしいのです」
グリム:「えぇ!?あいつ、もう学園ブッ壊す勢いだゾ!?
止められるわけ――」
フェイド(優しく頭を撫でながら):「……止めるのではありません。
“思い出してもらう”だけです」
ユウは少し考えてから、決意を込めた目で君を見た。
ユウ:「……わかった。ネメシスがそう言うなら、信じる。
私も、マレウスが壊れてくのは見たくない」
グリム:「チッ、しゃーねーな!ネメシスが頼むなら、行ってやるゾ!」
フェイド:「ありがとうございます……この“日常”の空気を、彼に届けましょう」
✦ 時計塔前:静かなる再会
三人がゆっくりと近づいていくと、
その中心に――変わらず、竜の姿が佇んでいた。
マレウス:「……また来たか、“ネメシス”よ」
ユウ:「やあ、マレウス。今日はちょっと、お散歩ついでにね」
グリム:「オレさま特製の焼きマシュマロ持ってきたんだゾ!」
フェイド(そっと懐中時計を取り出しながら):「……この音、覚えていますか?」
――カチ……カチ……カチ。
懐中時計が、ゆっくりと時を刻み始める。
どこか優しく、そして懐かしい音。
マレウスの目が、ほんの少しだけ見開かれる。
マレウス:「……それは……まさか……」
フェイド:「貴方の大切な記憶。リリアさんから、託されました。
……これを聞けば、“孤独”の中にしかないと思っていた貴方の中にも――
“誰かがいた”ことを、思い出せるのではないかと」
マレウス:「…………」
彼の周囲の空気が、ほんの一瞬――柔らかく揺れる。
しかし――
マレウス:「……だが、もう遅い。世界はすでに滅びへの道を歩み始めている。
僕の願いは、止まらぬ」
⸻
それでも、フェイドは立ち止まらない。
その場に立ち尽くす竜に向かって、
“日常”を、丁寧に、ただ伝えてゆく。
「一緒に、もう一度“学園の時間”を過ごそう」と誘う
そっと一歩だけ彼のそばに近づいた。
その歩みには威圧も、力も、怒りもない。
ただ――揺るがぬ“願い”だけが宿っている。
フェイド:「マレウス。
私は……あなたに、もう一度“学園の時間”を過ごしてほしいのです」
マレウス:「……学園の、時間……」
フェイド:「何気ない朝。友との笑い声。くだらない喧嘩や、ふざけあい。
それは確かに儚く、すぐに過ぎていくものかもしれません。
でも、それでも――それこそが、私たちがここで“生きている”証ではありませんか?」
マレウスは目を伏せる。
マレウス:「……そんなものは、夢だった。幻だった。
僕には……永遠に得られぬものだ」
フェイド:「いいえ。貴方はそれを“持っていた”。
――そして、いまも“選び直す”ことができます。
どうかもう一度、私たちと一緒に。あの学園で。皆と共に」
フェイドの言葉は、風に舞う羽のように柔らかく、
だが確かに――彼の胸へと届いた。
マレウス:「……“一緒に”、か」
小さく、その声がこぼれる。
そして――懐中時計の**カチ、カチ……**という音が、
彼の耳元で、幼き日の記憶を優しく撫でた。
この言葉は、確かにマレウスの中で揺らぎを生んだ。
だが彼が本当に“過去”を捨て、“未来”を選びなおせるかは……
まだ、わからない。
そして――その時が迫る。
第八話「揺れる王の冠、眠らぬ世界」
Scene.1:夜の帳に沈む決断
日が落ち、夜の帳が学園を包むころ。
君たち――フェイド、ユウ、グリムはオンボロ寮の屋上にいた。
時計塔の上では、まだ竜の影が動かずに佇んでいる。
ユウ:「……あれから、マレウス、動いてないね」
グリム:「ネメシスの言葉、ちょっとは効いたってことか?」
フェイド:「ええ……けれど、“まだ”です。
彼が本当に選び直すには、きっと……“最後のきっかけ”が必要です」
そのとき――
パァンッ
夜空に突然、緑色の雷光が走った。
それは、まるで空に罅(ひび)が入ったかのような、
空間そのものを裂くような衝撃。
そして――学園の魔法の結界が、静かに砕け落ちる音が響いた。
✦ 戦闘開始:終焉の予兆
結界の崩壊と同時に、眠っていた生徒たちが一人、また一人と倒れ始める。
それはまるで、“時間”そのものを喰らうように。
フェイドは、すぐに魔力を展開し、ユウとグリムを護る。
フェイド:「――これは……時の魔法。彼が……!」
空に浮かぶ時計塔の上に、マレウスの姿がはっきりと現れる。
マレウス:「祝福された終焉の時が来た。
皆が眠り、争いも痛みも忘れ、静かに安らげる世界を……」
その背に、黒き翼が広がり、頭上にはまばゆく光る“角冠”――
彼は、完全なる覚醒状態にあった。
✦ バトル開始:対マレウス
フェイドはいつ攻撃が来てもいいよう体制を整える。
すぐさま追うようにリーチ兄弟も姿を現し、左右に展開する。
フェイド:「……マレウス。まだ、間に合います。私はあなたを――」
マレウス:「もう遅い。ならば、その想いごと……“眠れ”」
第一撃――雷鳴の牙が君たちを襲う。
フロイド:「きたねぇ~!オレ、こーいうの嫌いじゃないよっ!」
ジェイド:「では、“手加減”は無しですね、」
フェイド:「ええ――“お手柔らかに”お願い致します」
Scene.2:静かなる牽制戦(けんせいせん)
宙に浮かぶ学園の中心――崩れかけた時計塔の影で、
“竜”と“使者たち”の戦いが静かに始まった。
風を切り、左手で印を結ぶ。
魔力の軌跡は慎重に抑えられた、けれど迷いのないもの。
フェイド:「……ジェイド、フロイド。封印術式を、正面と左右から展開できますか?」
ジェイド:「ええ、もちろん。あなたの導きがあればこそ」
フロイド:「あいよ〜!」
二人が描く、魔法陣の三重結界。
その狙いは、マレウスの魔力の流れを“遅延”させること――
“止める”のではなく、“導く”。
マレウス:「その程度で…… 僕を縛れるとでも?」
一閃。
紫電がフェイドたちの封印陣へ叩きつけられる。
けれど、その中でフェイドは冷静に動いた。
フェイド:「(……まだ、見せてはならない。
フェイドとしての力を用いれば、“何か”が破綻する……)」
魔力を抑えたまま、術式を補強する君。
リーチ兄弟の魔法が、少しずつマレウスの足を止めていく。
ジェイド:「今です、ネメシスさん!」
フェイド:「封印、位階・第四式――《縛環の静霧(バインド・ミスト)》!」
封印魔法がマレウスの周囲に広がると、
空気の流れが変わった。
まるで時がほんの少しだけ、“遅く”なったかのように。
マレウス:「……興味深い。これは、“力”ではなく“技術”か。
だが――遅延は滅びを先延ばしにするだけに過ぎん」
そのとき、時計塔の中心――
魔力の“核”がさらに膨張を始める。
✦ 戦闘、均衡状態
今、かろうじて戦況を制御している。
だが、マレウスの本気はまだ“これから”。
そして――
“ネメシス”としての力では、限界もまた、近づいている。
「ユウに“懐中時計”を託し、彼に揺さぶりをかけてもらう」
“力”で封じても、彼の心は解けない。
ならば――“届くはずの声”を、別の形で届ける。
Scene.3:懐中時計と、真昼の夢
封印魔法がマレウスの動きをわずかに鈍らせた一瞬の隙。
即座に判断する。
フェイド(小声で):「……ユウ」
ユウ:「うん、わかってる」
フェイド(懐中時計をそっと手渡して):「これを。
彼の“記憶”に、触れてください」
ユウは迷わず頷いた。
その手に銀の懐中時計を握り、封印魔法の隙間から一歩だけ前に出る。
マレウス:「……その人の子は」
ユウ:「私は、監督生。名前は“ユウ”――
でも、今は“ただの友達”として来たよ」
ユウは、そっと時計を掲げる。
――カチ、カチ、カチ……
銀の懐中時計が、再び空に響く。
その音は、マレウスの中に眠る“古の記憶”をそっと揺り動かす。
ユウ:「これ……リリア先輩がマレウスに託してくれたものだよ。
誰かと笑って、走って、並んで歩いてた、あの頃の時間。
望んでいた世界は――こんな破壊じゃなかったんじゃないの?」
マレウス:「……僕は……望んだのではない……」
ユウ:「じゃあ、何を願ったの? 本当に欲しかったものは、何?」
マレウスの指先が、わずかに震えた。
周囲に集まる魔力が、ほんの少しだけ弱まる。
フェイド(心の声):「――届いてる……ユウさんの言葉が、彼の“心”に」
ジェイド(囁くように):「フェイド。……いま、です」
フェイド:「……!」
Scene.4:心、揺れる雷の王
懐中時計の音と、ユウのまっすぐな言葉に、
マレウスの魔力の波はわずかに乱れた。
けれど――
マレウス:「……僕の時間は、もう“進まない”。
過去に縋るつもりなどないのだ。すでに決めた。
この世界を、終わらせると」
ドンッ――ッ!!
雷鳴が地を割る。
宙の一点から放たれた魔力が、結界を真正面から突き崩しに来る。
グリム:「わっ、わっ!? 結界が砕けてきたゾッ!」
ジェイド:「……まずいですね。封印術式、第六環が崩壊寸前です」
フロイド:「ねぇ、ネメシス~? さすがにこれ以上は“出し惜しみ”してる場合じゃないんじゃない?」
フェイド(微笑みを保ちながら):「――まだ、です。
私は……“あの人の心”が、まだ完全に閉じ切ってはいないと思うのです」
パァンッ!!
空が、雷の爪で引き裂かれる。
フェイドたちは宙に舞いながら――魔力を最低限に保ち、
封印と防御に集中する。
フェイド(心の声):「(フェイドとしての力を解放すれば、きっと止められる……
でも、それは“彼らの信頼”を――裏切ることになる)」
だからこそ、まだ“ネメシス”で在り続ける。
✦ マレウス、第二形態へ:雷の覚醒
マレウスの背にある“竜の角”が、
緑雷の火花と共にうっすら光を帯び始める。
マレウス:「……ならば、力で示せ。
僕がこの“世界の終わり”に相応しい存在だと――
おまえたちが“希望”を捨てるに足る敵だと!」
空間が軋む。
周囲にいた眠る生徒たちの魔力までもが、ゆっくりと吸い上げられていく。
ネメシス:「(……やはり、“彼の魔力”の本質は……)」
目を細め、誰にも気づかれぬように小さく囁く。
ネメシス(心の声):「――《夢を喰らう竜》……。
この力が、本当に覚醒してしまえば……」
ジェイド:「フェ……ネメシスさん。策があるのなら、そろそろ時です」
深く息を吐いた。
フェイド:「……いいえ、まだです。
でも、次の一手で――彼の動きを見極めましょう」
Scene.5:王の咆哮、囁く霧の中で
空が雷で軋み、時の流れが歪む。
マレウスの周囲から放たれる魔力の濁流は、
まるで夢と現実の境界を溶かすような重さを持っていた。
その中心で動かず――ただ静かに、両手を合わせる。
フェイド:「……私は前に出ません。
けれど、あなたたちが攻めてくだされば……私は“守り続ける”ことができます」
ジェイド(にこりと微笑む):「ええ、了解しました。
“前に出る”のは僕たちの得意分野ですから」
フロイド:「うわー、ネメシスってばホント堅いよね〜。 」
兄弟が左右に散開し、すぐさま水の軌道を描いて空を泳ぎ始める。
ジェイド:「――《濃霧の結界(ディープフォグ)》」
フロイド:「――《水鏡遊泳(アクア・ダイブ)》!」
霧と水の魔法が、空中で交錯し、マレウスの視界を一気に乱す。
同時に、フェイドはその背後で慎重に防御結界を三重に展開。
フェイド(内心):「……これ以上、攻め手にまわれば正体が露見する。
でも、“護るだけ”なら……まだ、“ネメシス”でいられる」
マレウス:「……なるほど。こちらの視界を奪い、こちらの感覚を乱すか。
だが――」
ズンッ!!
雷光が濃霧を裂く。
だが、そのわずかな破口すらも、リーチ兄弟が流れるように補完していく。
まさに、絶妙な連携。
ジェイド:「ネメシスさん。
今は、まだ踏みとどまる時ですね」
フェイド:「はい。焦らず、“今はまだ”です」
✦ 敵の変化:マレウスの“本能”
視界を失い、動きを制限されながらも――
マレウスは、徐々に“本能”で応じ始めていた。
彼の放つ魔力の波は、正確な狙いを失っている代わりに、
その威力と範囲が異常に増していく。
バリバリッ……!!!
上空を裂く雷光がフェイド達をなぎ払う寸前――
展開した防御結界がそれを防ぎ、雷を受け流す。
グリム:「ぬおおおっ!? あっぶねーっ!!」
ユウ:「……今の、ネメシスじゃなかったら多分……!」
フェイド:「まだ“私”で、なんとかなっております」
攪乱と防御で辛くも押し留めている状況だが、
マレウスの魔力は尽きる気配すらない。
“こちらが防ぐ”間、彼は“慣れて”いく。
もう一手、動く時が迫っている。
「グリムに囮を頼み、自分は背後から“眠りの魔法”を試す」
Scene.6:一縷の策、届かぬ眠り
雷の奔流が空間を削る中――
君は、最も“消耗の少ない一手”に賭ける。
フェイド:「……グリムさん。お願いできますか?」
グリム(ぴくっ):「えっ、オレさまが!? あいつに!?」
フェイド:「大丈夫です。あなたの“叫び”と“飛び回る動き”は、彼にとっては予測しにくいはず。
……その隙に、私は――魔法を狙います」
グリム:「……ったく、あとで焼き魚10匹だゾ!!」
グリムが飛び上がると同時に、フェイドはすっと背後の影に紛れる。
手にした杖から、魔力を極限まで圧縮し、音も光も立てずに構える。
フェイド:「《静謐の眠音(ノクティス・ソング)》――
ほんの一瞬でいい。彼の思考がわずかに沈めば……!」
けれど――
マレウス:「……甘い」
ザン――ッ!!
魔力の衝撃波が**“背後”を正確に捉えて弾けた**。
フェイド:「――っ!」
グリム:「ネメシスぅーっ!!」
結界が破られかけ、体が僅かに吹き飛ぶ。
防御魔法で致命傷は免れたが、確実に“彼に見切られた”ことを悟る。
マレウス:「背を見せて魔法を放つ……その構えは、ただの人間の器には遠い。
……おまえは、“何者”だ?」
フェイド(静かに微笑む):「――私は、ただの魔法が使えない新入生。
オンボロ寮のネメシスと申しますよ」
マレウスは目を細めるが、それ以上は問わない。
“眠りの魔法”は届かず、マレウスは逆にフェイド達の動きを把握しはじめている。
正体には未だ気づいていないが――
“魔力の感触”には、何かを感じ取り始めているかもしれない。
ジェイド(小声で):「……“彼”に“あなたの匂い”が届くのも時間の問題ですね」
フェイド:「……できる限り、保ちます。私は、“彼の心”が折れぬことを信じたい」
“力”はまだ出し惜しみ、“心”はまだ揺れている。
だがその均衡は――次の瞬間、破られるかもしれない。
マレウスの次の一撃は、「範囲攻撃・眠りの魔法+魔力吸収」。
このままでは、ユウもグリムも危険だ。
Scene.7:その名を隠して、君は守る
空が――悲鳴のように軋む。
マレウスが掲げた腕には、雷と夜の魔力が編み込まれていた。
それは彼のユニーク魔法――
《祝福(フェイ・オブ・マレフィセンス)》
範囲攻撃。
全ての存在を“夢”という名の檻に閉じ込め、
同時に魔力を吸収する、破滅の序章。
マレウス:「――さあ、眠れ」
光が落ちる瞬間、
フェイドは迷わず一歩前に出た。
フェイド:「……この程度で、“彼ら”を眠らせるわけにはいきませんよ」
結界は、ただの防壁ではない。
魔力の流れを反転させ、受ける衝撃を拡散する“衝波結界”。
その術式を、命を削る前提で完成させる。
ジェイド:「ネメシスさん――!? それ以上は――」
フェイド:「大丈夫です、まだ“私”で足りますから」
グリム:「ネメシス!!!、ダメだゾ、あぶな――」
バゴォォォォォン――――!!!
炸裂。
空を砕いた雷が、フェイドの結界に叩きつけられる。
その瞬間、結界はきらきらと光を撒き――フェイドの体を守りながら、
君の“内部”を灼くような痛みが襲った。
フェイド:「――っ……が、ぁ……っ」
身体が痺れ、右手の指先が焼けるように熱い。
それでも、微笑を――崩さない。
ユウ:「ネメシス……!」
フェイド(ふらつきながら):「……申し訳ありません、少し、力の使いすぎ……です」
ジェイド(駆け寄り、そっと支える):「……それは、“ネメシス”としての限界ですよ」
フェイド(小さく):「ジェイドお兄様……黙っていてくださいね。
私は、まだ――ネメシスのまま、いたいのです」
フロイド:「オレ、ちょっと……怒ってるかも」
マレウス:「……その魔法、防御にしては精妙すぎる。
おまえ、本当に“ただの生徒”か?」
フェイド:「ええ、もちろん。私はただの――
少しだけ、護るのが得意な、人間です」
マレウスの攻撃は止まらない。
今はまだ“遊び”の段階――
次に彼が放つのは、個別狙撃の雷槍。
的確に一人ずつを狙い、“削っていく”構えだ。
Scene.8:誰かを護るという選択
雷槍――
それは、“精密な死”だ。
マレウスの指先に生まれたのは、鋭く光る数本の雷。
それらはまるで蛇のように空を這い、標的を定めて絞め殺す。
マレウス:「さて――この中で“もっとも脆い”のは誰だ?」
雷槍が、ユウへ向かって絞られる。
ジェイド:「ネメシスさん、ここは我々が」
フェイド(静かに首を振り):「いえ。あなた方は動いてください。
この“魔力の軌道”――私が受け止めます」
ジェイド(微かに目を見開いて):「……了解しました。
では、こちらも“時間”を稼がせていただきます」
フロイド:「あ〜もぉ、マジでムカつくわぁ雷トカゲ! オレが笑えない戦いなんて超最悪!」
二人が敵陣の側面へと飛び、奇襲を仕掛ける中――
フェイドはその背で、ユウのすぐ前に立つ。
ユウ:「ネメシス、僕なんかのために――!」
フェイド:「“なんか”ではありませんよ、ユウさん。
あなたは……“私の役目”そのものです」
ユウの瞳がわずかに揺れる。
✦ 防御結界:片翼の術式
咄嗟に構築したのは、片側に偏った**“偏向障壁”**――
魔力の濃い一点にのみ“絶対の盾”を置き、他を犠牲にする。
フェイド(心の声):「片手はもう動かせない……なら、残る左だけで……!」
雷槍が飛来する――
バガァァァァン――!!!!!
空が白く裂けた一瞬、ユウの眼前に広がるのは――
フェイドの背中と、蒼くきらめく魔法陣。
フェイド:「……大丈夫。私はまだ、“この程度”で、倒れたりしません」
けれど――
左腕の袖口が破け、血が滲む。
ユウ:「ネメシス……っ!!」
マレウス:「……お前はますます不可解だ。
魔法が使えぬ“ただの生徒”にしては、あまりに整いすぎている。
その立ち姿――まるで、“何かを護るために生まれた”かのようだ」
フェイド:「……お褒めに預かり、光栄です。
ですが――私はただ、“ここに在る”だけです」
戦いは、ようやく“序盤”を抜けた。
だがマレウスは未だ“本気”ではない。
そしてフェイドは、正体を隠したまま、傷を負い続けている。
やがて彼は――
“覚醒”へ向かって、歩み出す。
1,689
#続かないとオーバーブロット