翔太Side
撮影合間の休憩中コーヒーを飲んでいると暗がりのオフィスの片隅に微かな明かりが見えた
不思議に思い近くまで行くと、彼女がまた一人デスクに向かい仕事をしていた。
来た道を戻りもう一杯分のコーヒーを手に彼女の元へ向かう。
翔太💙『お疲れ様です。今日も残業ですか?』
凪 🩷『あっお疲れ様。そちらも随分と遅くまで撮影あるんですね。』
翔太💙『すいません騒がしくて、よかったらコーヒーどうぞ』
彼女はお礼を言うと美味しそうに含んだ。
翔太💙『差し支えなかったら名前聞いてもいいですか?』
自分でも不思議だ。人一倍人見知りな俺は自分から話しかけたりましてや一般の女性に名前を聞くなんてこと今まで一度だってないのに、なぜだか彼女が気になった
凪 🩷『あっ渡辺 凪です』
翔太💙『渡辺?あはは同じ苗字だったんですね?じゃ凪さんって呼ばせください。俺は翔太って言うんで!』
システムエンジニアの凪さんはトラブル対応などで急遽仕事になることが多々あるそうだ。今はシステムの入れ替えと重なり忙しいのだとか…それにしてもなぜこの部署は女性を一人で残業させているのか気になったが彼女曰く独身者は身軽だし〝どうせ暇を持て余すだけだからいい〟のだとか….そう笑う彼女の目の奥が俺には寂しそうに写った。
それからと言うもの、撮影が長引くと凪さんのもとを訪ねては一緒にコーヒーを飲んだ。彼女も人見知りなのか初めのうちは戸惑った様子だったが何度か話すうちに日に日に会話が弾み笑顔も増えた。なぜかはわからないけれど俺は凪さんと話をしていると穏やかな気持ちになれた。
ある日いつものようにコーヒーを両手に抱え残業中の彼女を訪ねるとデスクに突っ伏して眠っていた。相当に疲れているように見えた。デスクにあった紙にお疲れ様とだけ書きコーヒーを置いて立ち去ろうとすると凪さんの頬に涙が伝った。
その後の撮影は散々だった…彼女のことが気になって全く集中出来ずみんなに迷惑をかけてしまった。撮影終わりに急いで彼女のデスクへ向かうも既に帰宅したようで、彼女の姿はなかった。
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