テラーノベル
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──しばらくが経って、バイクの音が近づいてきた。
「カイのバイクだ…」
と、シュウが耳を澄ませる。
「ほら…せいぜい、脅えた顔でもしてろよ…」
ナイフがまた、顔に差し向けられる。
エンジン音が止まり、廃屋の中にカツーンカツーンと足音が響いてくる。
「ダメッ……!」思わず叫ぶも、
「声たてんなよ…少しでも騒いだら、刺すからな…」
シュウにナイフで脅され、それ以上は声に出せないまま、
『カイ、来たら、ダメー!』
心の奥で必死に願った──。
「……何してんだよ、おまえら……」
願いもむなしく、カイが私たちのいる場へ現れる。
「よく来たな…カイ」
シュウが低く凄むように、声のトーンを落とす。
「離せよ…ミクを……関係ないだろ、彼女は……」
「ミク…ねぇ…? ……もう、名前で呼んでんのかよ、こいつを……」
ナイフの切っ先が、私の首筋にチクリと当たった。
「やめろっ、シュウ!」
叫んで、そばへ駆け寄ろうとするカイに、
「……それ以上、近づいてみろよ…こいつに、傷をつけてやるから……」
ナイフを構えたシュウが、低く脅し文句を吐き出す。
「どうして、こんなことをするんだ……。傷つけるなら、俺だけにすればいいだろう……」
カイが、悲痛な面持ちでそう訴えかける。
「……この女が、おまえと結託して、つまらない企みをしようとしてるからだろ」
「そんなことはしてない……」
まだ詳細は何も知らないカイが、シュウに言い返す。
「ふん…まぁ、いい。ただ…おまえが、勝手にメンバーを脱けることは、俺が許さない……」
「カイを、これ以上追いつめるのは、やめてっ……!」
間に割って入ると、
「おまえは、喋んなよ!」
怒りをあらわにしたシュウに、鋭いナイフの刃で、首筋を薄く横へ切りつけられた。
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