テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

-scene2- Hikaru Iwamoto



『Snow Man渡辺翔太、保護される』


そんな見出しの文字が新聞や週刊誌に踊った。

中身の記事は憶測やデタラメも多かったが、概ね心配の声と復帰を望む文章で締め括られていた。


俺は今、病院に来ている。

翔太を拉致して監禁した犯人は捕まり、事情聴取を受けていると聞いた。

二人がかりの犯行で、運転役を務めた男が先に捕まり、仲間を売ったことで事件が発覚した。

当日はライブ最終日で人や物が入り乱れて、色んな車が出入りしていたから、まさかメンバーが攫われるなんて思いもしなかった。

ライブの時には勝手に帰るメンバーもいたから、特に気にしなかったのも大きな原因だった。


「会って行かれますか?」


翔太を担当している医師に、そう声を掛けられた。

あれ以来、あまり食べず、喋らなくなった翔太に会うのは心が痛んだが、それでもこうしてせっかく会いに来ているのだから一目でも会いたい。


💛「お願いします」


俺はそう言って頭を下げ、ベンチから立ち上がった。




💛「翔太、来たよ」


💙「…………」


翔太はこちらに背を向けたまま横になっていた。

ひどく痩せた肩が痛々しかった。

白い首筋が病衣の襟元から見えた。


💛「食べてる?」


💙「ん」


絶対嘘だ。

しかし、責めることはできない。

無理して食べさせても吐いてしまう。そんな日々が続いているらしい。ほんの少し、ほんの少量だけを何回かに分けて口にしていると聞いた。

そのため、食事の内容も単なるカロリー摂取の行為に過ぎず、栄養分を固めたようなブロックを少量齧るだけだった。あとは点滴。

俺はそれがどれだけ身体に良くないのか理解していたが、食べられないのならどうしようもなかった。


💙「昨日は、目黒が来た」


💛「知ってる」


💙「目黒、泣いてた」


💛「そうか」


💙「ん」


会話が途切れる。

目黒の気持ちを思うとやるせない感情が湧いてくる。目黒が翔太に特別な感情を抱いているのはみんな知っていた。そして俺を含んだ何人かにはその矢印が一方通行ではないこともわかっていた。

俺と目黒は交互に日を置かずに訪ね、他のメンバーたちはたまに顔を見せる。

一度にたくさんの人に会う許可は出ていないから、みんな順番待ちで待機している。

俺はただリーダーだから、みんなより多くここに訪ねさせてもらっているだけだ。


翔太を助けられなくて何がリーダーだ。


そんな自問も繰り返し頭に浮かぶが、その言い訳があるからたくさん翔太に会いに来られるのだと自分を慰めて俺はここにいる。


💙「俺が悪かったのかな……」


💛「翔太、やめろ」


そう言いながら、無意識に翔太は爪を噛む。

ぱち、ぱち、という音が病室にこだました。

俺は見ていられなくなって、席を立った。


💛「また来るから」


💙「………」


翔太は何も答えなかった。

肩が震えているので、声を殺して泣いているのがわかる。

掛けてやる言葉がない無能な俺は、そのまま病室を出て行くしかなかった。




🩷「照」


💛「佐久間、来てたのか」


🩷「翔太、どんな感じ?」


俺は首を振った。


🩷「蓮も相当落ち込んでる。あいつはあいつで悩みやすい性格から心配だ」


💛「そうだな」


佐久間は俺を見て言った。


🩷「照も相当酷い顔してるぞ。あんまり思い詰めないで、たまには休め。翔太は別に逃げないんだから」


💛「ん」


佐久間に励まされ、俺はその日はそのまま車に乗り込み、帰宅した。

loading

この作品はいかがでしたか?

661

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚