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シプリートは壊れた窓から飛び出し、アズキールに向かって全力で駆け出す。止めようとしたカロリーヌとザールに事情説明をすると、流石に怒られた。

「そんなこと危険っすよ!やめた方がいいだろ!自我がなくなるぜ!」とか、「ザールの言う通りです。そんなことしたら王子はいなくなって、エミリと結婚するのは誰になるんですか?」とか。

だが、世界を救うためだ。それに自分で決めたことは、愛する者全員のために守りたい。


にこりと微笑んで二人を追い越し、アズキールに飛びついた。右手と右手がちょうど重なり、二人が合体した。

黒い炎が彼の後ろから溢れかえり、広がっていく。カノーカ王国の建物に怪しげな紫色の蔦がたくさん生えて、地面は真っ黒へ。モンスターたちも黒色に染まり、凶暴化した。建物を次々と破壊していく。

「このカノーカ王国にいるモンスターは全て、連れてきた大人たちを変身させたもの。さあ、暴れまくるといい」

闇の中からこのような声がした。アズキールの声だ。


この世界は混沌と化し、浮いていた紫色の太陽はガラガラと崩れて完全なる暗黒の世界へと変化してしまう。

そこにいた三人は目を見開き、驚いた表情で辺りを見渡す。

「どうなって……!?」

紫の蔦がザールに絡まってしまい、彼の贅肉が搾り取られていった。太っていた体が痩せ細ってしまう。彼は苦しそうにもがく。こんな体、自分でも見たくもないぜと涙を流しながら嘆く。

何とか立ちあがろうとしたが、細くなった彼は食欲が一気に失せた。その場で倒れてしまう。

隣で見ていたカロリーヌは絶望的な気持ちに陥る。顔が青ざめ、叫び声をあげた。

「ザール、起きて!ザール!」

彼を助けるために襟を掴んで譲ってみるが、全く反応がない。息はしているが、腹が減りすぎて正気でいられないことだけは理解できる。


彼女は立ち上がり、赤毛でシプリートに似ている顔の男「影のシプリート」へ挑むことにした。


その様子を終始見ていたプロストフは、やはりこうなったかと呆れている様子だ。

あの蔦は魔力と力を吸うやばい植物だ。自分が所有する千里眼によれば、光属性の者と、魔力や力なしの人間には効かないのだ。

カロリーヌは炎の能力を持っているので、吸われたら大ピンチ。マナが吸収しにくくなってしまう。

「どうすればあいつを倒せる。無理だ。モンスターも凶暴化していると言うのに!」

プロストフはげっそりとした顔をして窓から這い出ると、そこは真っ暗で何も見えない世界になっていた。唯一赤い髪の男が見える。

彼こそが倒さなければならないラスボス、「影のシプリート」。しかし彼を倒せば、息子のシプリート自体を殺すことになってしまう。そんなこと絶対にしない。何かいい方法はないだろうか。

彼は手を広げて、高らかに宣言してくる。

「この世界は僕が潰すのだ。そしてこの星の王になってやる!ああ、力が湧いてくる」

目を紫一色にして真っ黒な闇を操り、モンスターたちを浮き上がらせた。色々な国から集めた大人たちを合体させて、巨大な怪物を作るようだ。


その様子を遠くで、アズキールの部下ガレスは眺めていた。その隣には洗脳済みのリリアンナがいる。この二人はすでに良き夫婦のような生活をしていた。もうアズキールは眼中にない。だから助けることもしないし、倒すこともしない。

ガレスはアズキールの命令でリリアンナを地下へ運び、嫌々している彼女を無理やり洗脳装置へ入れた。洗脳装置をガレスに設定。彼女に好かれたのだ。だからこんな生活をしている。

椅子に座って彼はポツリと呟く。リリアンナはそれに耳を傾ける。

「陛下は自分の願いが叶いそうだな。今となってはどうでもいいや」

「彼のこと好いているのですか?」

「まあな。本当はいい奴だぜ。俺を助けてくれたんだからな」

そんな会話をしながら、二人は抱きしめ合いそのままベッドへ向かう。これから二人は愛し合うのだ。


それとは裏腹にカロリーヌは影のシプリートへ殴りかかろうとした。だが炎の拳は全く効かず、バリアで弾き飛ばされてしまう。しかも足に蔦が絡まり、炎の能力が吸われる。

「うぅ……」

呻き声を上げ、徐々に顔が青ざめていく。

こうなれば、言葉で王子を説得しよう。ドミニックの時もそれで目が覚めた。彼の心の中には、ずっと冒険していたシプリート王子の存在がいる。そいつを呼び起こさないと!

「王子!私の声が聞こえてますか!目を覚ましてください!」

「うるさいやつだな。魔力をさらに吸い取ってやる!」

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

甲高い叫び声と共に、さっきより多くの魔力が吸われていく。それでもカロリーヌは王子に問いかける。なぜなら彼女はシプリートのことを愛しているから。

これはただの片思い。でも、優しい彼のことが好きなんだ。


彼女はしわがれた声で、それでも訴えかける。

「貴方のことが好きだからここまで一緒に冒険してきた。私なんか眼中にないなろうけど、よく聞いて! シプリート、エミリと結婚生活を送るつもりでしょ!彼女に愛してることを伝えて、一緒に暮らすのよ! それが貴方の使命じゃないの!」

そう強く訴えかけたら、後ろで作られていたモンスターを集めた化け物の生成が止まり、蔦も外れた。彼は焦っているようだ。この調子で話しかけなければ。

「な、何の話をしているんだ。僕には何もわからない……」

「それに私たちと冒険したことを思い出して! 一緒に夕飯食べたこととか、モンスターを倒したこと。クラーク叔母さんから服をもらったり、星のカケラを集めたり……。全て思い出せ、バカ!!」

その言葉を聞いて、彼は動揺。闇の炎が小さくなっていき、モンスターたちはバラバラと崩れ去っていく。

だがそれも一瞬の出来事。すぐにモンスターを空に上げて組み合わせ、巨大な怪物を作り上げていく。

カロリーヌに鋭い眼光を向ける。やはりまだだめだ。彼女では、目醒めない。動揺するだけ。

「お、おのれ!!この小娘め!」

カロリーヌは手から出てきた闇魔法でふっと飛ばされてしまい、建物に激突した。その瞬間、星のカケラが胸元からこぼれ落ちる。声が震えた。

「これを完成……させないと……カノーカ王国は……復活……しない」

カロリーヌは星のカケラを握りしめ、怪我をした体のまま踏ん張って立ち上がる。頭から血が流れてフラフラした。でもこの星と王子を守るためにしなければ。怪我なんか関係ない。


彼女は唇を噛み、影のシプリートの方へ向けた。

言葉を告げようとしたところ、彼の胸元から黒い星のカケラが浮く。共鳴の力で、自動的に合体したのだ。次の瞬間、完成した星がカロリーヌの手から離れて浮き、高速で回転する。大きな黒い風が現れた。

何かおかしい。カノーカ王国は平和になっていない。まさか私たちは利用されていた!?

そうか。わざと取らせたのは、自分たちの手でこの国が滅ぼすための鍵を託すため。色が水色じゃなかったのも、そう言うことだったのか。

「うあぁぁぁぁぁ!!」

事実を知ってしまい、大きな声を張り上けた。初めてカロリーヌが泣き喚く。

彼女のせいで世界が滅びるのだ。シプリートから受け取らなければよかったのに……。

しかし、もう起きてしまったこと。嘆いていても仕方ない。

なんとかして、阻止しなければ。この暗くて巨大な体をした美しい女王さまを。

失われた姫と消えた秘宝

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