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非情
深澤「あ”ぁ“…ぎづぃ………」
俺はここ数日体調を崩している。久し振りにこんなに体調が悪くなり、辛くて辛くてたまらない。それに何故かわからないが身体がムラムラする。体調が優れなくても性欲はまともらしい。
Ωなのか……そう思ったが俺はβだ。昔病院でちゃんとした検査を受けた時、医者からはβと言われたから。医者の発言を嘘と捉えてしまったらそれっきりだ。
両親は俺の体調不良が心配なのだろう。ずっとネットやら知人やらに聞いて原因を調べているようだ。迷惑かけるな。
次の日、母親が「病院に行こう」と言い出し、久しぶりに病院へ。おれは軽い気持ちで「この頃気温差が激しいからだろ」と思っていた。でも、結果は違った。
深澤「は………?俺がΩ…?」
予想もしていなかった。俺がΩだなんて。
医者から言われたのは昔診断した医者が誤診をしたのだろうとの事だった。俺は怒りよりも不安がかった。16歳までずっとβとして生きてきた。なのに残りの人生Ωで過ごさなければならない。
これがどれだけ俺にショックを与えたことか。周りは理解できないだろう。
医者は言った。
『今はヒートの状態。でも辰哉さんは症状が軽く、フェロモンもあまりでない体質。だから気づけなかった。抑制剤を飲めば多少は動ける。逆に言えば無理をしたら悪化する恐れもある』と。
俺は先生の話などは横にいた母親に任せて、少しの間だけベットで横にならせてもらった。医者も母親も凄く心配そうな顔をしていたのだけ覚えている。
ヒートから1週間。ようやくダルさが無くなり学校にも行けるようになった。Ωはヒートしたらほとんどの人が1週間ほど休みを取るらしい。学校なんかαが溢れかえっているから尚更のことだと言う。
俺がΩと知ったのは入学から2ヶ月ほど。それまで俺は一人でいることが多かったが、なぜかこの頃話しかけてくる奴がいる。それは“向井康二”。関西出身で関西弁ペラッペラ。俺は圧倒されながらも話すようになった。
深澤「康二、昼めし一緒食うか?」
向井「おん!食べる食べる!」
向井「ふっかさーんひとくちちょーだい?」
深澤「またかよ…ほら」
向井「わーいっ!あんがと!」 パクッ!
「ん〜っ!おいしぃ!」
深澤「そらよかったな笑」
向井 モグモグ「…ふっかさんって暗くなったよな、なんかあったん?」
深澤「…ん?何もねーよ笑笑 お前の勘違い!」
向井「…ほんま?じゃあなんで涙目なん?」
深澤「…え?」
気づかなかった。俺は図星を突かれたかのように焦った。言えない…友達になったやつに俺がΩだなんて言えるわけがない。もし、康二がαだったら…そう考えると震えが止まらない。
向井「ふっかさん、俺たち友達やで?…ちょっとは頼ってーな……俺は心配なだけやから」
深澤「グスッ……俺ッッ…」
向井「うん……」
深澤「Ωに……なった………」
向井「…?“なった”?元々違ったん……?」
康二は俺の背中を擦りながら話を最後まで聞いてくれた。医者からの誤診、これからΩとして生きて行かなくてはならないこと、不安で押しつぶされそうなこと、全て…洗いざらい話した。
康二は終始目に涙をためていたが、俺の話が終わる頃にはキリッとした、決断したかのような顔になっていた。
向井「…大丈夫、不安なこといっぱいかもやけど、俺もおるで…」
「困ったことあったら何でも言ってや…いい?」
深澤「…グスッ……うん……ありがと、康二」
向井「うん!俺もΩやからっ力になるで!」
深澤「えっ…?康二Ωなの?」
向井「?」
「おん、そーやけど…なんで?」
まあ要するに俺の勘違い。αと思っていた康二は俺と一緒でΩだったらしい。でもそれを聞けて、少しだけ心が軽くなった。Ωは俺だけじゃない。いっぱい居て、康二みたいに明るい人はたくさん居るんだって思えるようになった。
深澤「今日康二休みか…」
あれから数日後。康二は今週発情期のようで1週間休み。ちょっと悲しいが俺は一人で授業をサボる。屋上は風が涼しく、7月としてはまあまあだった。
深澤「寝てよー…」
そう思った時、屋上のドアが開いた。そのにはガタイの良い2人組が。先輩だろう。
先輩『ん?なんだよ先客いるじゃん…』
先輩『…?深澤かお前?』
何故か話しかけられる。俺そんなに有名?そう思いつつ先輩の質問には答えなければならない。
深澤「そーですけど、俺邪魔っすかね?じゃ俺は撤退しまーす」
先輩『待てよお前』
深澤「なんすか?」
先輩『お前、1年なのに他校の不良総締めにしたんだろ??噂になってんだよ』
深澤「あぁなんか喧嘩売られたんで買いました」
先輩『俺たちちょっと興味あるんだよ……手合わせ願おう……笑笑』
深澤「はぁ……ちょっとだけっすよ…?」
正直、今は喧嘩なんかしたくない。あの時は康二も居たから勝てたというのもある。でも今は康二も居ないし、それに何故か身体が重たい。ヒートは3ヶ月に1度と聞いていたのに……
深澤「ゲホッ……ゲホッ!……はぁッッ!……」
先輩『なんだやっぱよえーじゃん』
先輩『戦い甲斐ないなぁー…』
深澤「……ッッ!」 フラッ…
あ、ヤバい意識が…
意識がなくなりかけ倒れそうになった時、俺の身体は地面につかなかった。不思議に思い最後の力で顔を上に向けた。
深澤「……みや……だて…?」
宮舘「…大丈夫ですか?」
どこか落ち着いた、心配した声。何の焦りもなく、ただ俺の体を支えてくれている。“宮舘涼太”はオレの顔をのぞき込んで少しの困り眉を見せた。でも、その他にも声がする。
「ねぇー大丈夫〜?」
深澤「………さ、……くまっ…?」
そう、そこにはピンク髪が特徴の“佐久間大介”が立っていた。この2人は一学年の中でも喧嘩がずば抜けており、それは康二や俺の耳にまで届いていた。
宮舘「……佐久間、あの人達一人で倒せる?」
佐久間「うん!俺っちはいいから保健室連れてってあげてー!」
宮舘「ごめんね、すぐ戻ってくるから」
佐久間「はーい!」
そんな会話をしている宮舘と佐久間。宮舘は「ごめんね」とだけ言って俺を持ちあげた。こんなに人を軽々持ちあげれるんだと謎の関心を得て、俺の意識はここで途切れた。
少しだけ修正してます(_ _;)