蒼白
話し声がする。俺は目をそっと開けた。ピンクのカーテン、白い天井。いつもサボってみている保健室の光景だった。
話し声の主は宮舘と佐久間だった。俺が起きたことに気づくと、二人して顔をのぞき込んできた。不良仲間と言ってもあまり話したことはない。
宮舘「…深澤くん、大丈夫…?」
佐久間「だいじょーぶかぁ?」
深澤「……ぅ…ん」
見た目に反して宮舘の口調は優しく、穏やかさが伝わってくる。不良…だよな?不思議なやつ…
佐久間は見た目どーりと言うか、明るいやつなのはなんとなく分かってたけど煽り口調なのが気になるな…
深澤「あの先輩たちは…?」
佐久間「ん〜?俺っちがぶっ倒したけど?」
深澤「!?1人で…?」
佐久間「?うん、あのぐらいなら一人で十分かな?」
深澤「……」
俺が惨めに思えた。俺は一人でこんなにボコボコにされたって言うのにこいつは余裕を持て余している様…腹が立つがここは感謝しておかないとだよな。
宮舘「佐久間、そんな事言わない…煽るのもやめて……?」
佐久間「あっごめん涼太ぁ…許して?」
宮舘「ん……分かった」
佐久間「わぁっ!ありがと!」 ギュッ!
深澤「仲、いいんだな…」
そう思っていたのも束の間。勢い良く保健室のドアが開いた。寝ているやつがいたらどうするんだと思いながら顔をのぞかせる。と思ったらカーテンがこれまた勢い良く開いた。
阿部『佐久間っ!!お前またやらかしたのかッッ!?!何度目だよッッ!!』
佐久間「わぁぁっ!阿部ちゃんシーー!!」
「深澤今起きたばっかなんだから大声やめて!」
阿部『あ”ッッ?………あ、深澤ごめん』
深澤「い、いえ……大丈夫っす…」
阿部『とにかくっ!佐久間生徒指導室行きっ!とっとと来い!!宮舘もっ!!』
佐久間「うぇぇッッ??まじかよぉ〜」
宮舘「あの………俺何も…」
『あー阿部先生?宮舘は俺が預かるよ〜』
深澤(また誰か来た… )
その声の持ち主は渡辺翔太、確か宮舘のクラスの担任だったか?まぁ何でもいいから早く出てって……俺はヒートのような症状が出始め、凄くきついのだ。
宮舘「……!」
「先生達、一旦ここから出ましょ……怪我した人いるんだから静かにしないと…」
渡辺『ん?それもそっかぁ深澤悪いなっ』
深澤「いえ…大丈夫っす……」
そう言って四人は出ていった。多分宮舘が俺の異変に気がついたのだろう。とんだ目を持ってるなと思いつつまた身体がだるくなり始めて俺は眠りについた。
次に目を覚ました時、時刻は18時。最終下校の30分前だった。俺は起きようとしたかが語らだがうまく動かせない。なんだか寝る前よりだるさがまして今にも泣きたくなった。康二がいれば、相談に乗ってくれるのに…
宮舘「…深澤さん……辛い?」
深澤「ビクッ!……え、なんで宮舘いるの…?」
宮舘「心配になったから…俺だけ戻ってきたの、きついんでしょ?無理にしゃべらないで……」
その言葉は俺が一番欲しかった言葉。うれしくて泣きそうになる。だが、そんなのを考えたのもつかの間、俺は一気に血の気が引いた。
深澤「っ!!お前αだろ!ダメっ……!俺今多分はつじょ……ッッ!!」
宮舘「……心配しないで…俺に発情期は効かないから……」
深澤「えっ……ま、さか……?」
宮舘「……俺の口からは言えない…察してくれ」
深澤「っ!」
そう俺が懸念したのは宮舘がαではないかと。でもそれは違った…と言うか尚更驚くことが判明した。宮舘も俺や康二と一緒で“Ω”なのだ。俺の口からは言えない…?どういうことだ?
宮舘「…とにかく、抑制剤飲んで?学校出るまで安心できないんだから…」
深澤「あ、…うん…すまん」
コンコンッ
深澤「?誰だ…?」
突然、ドアを叩く音がする。誰か先生なのかと思った瞬間、宮舘の顔が一気に恐怖の顔へと変わった。
宮舘「ッッ!」 タタッ!
ドンッ!
深澤「ぅえ?!何やって…!」
宮舘「……“翔太”…今入ってきちゃダメ…お願いッ」
渡辺『……どーして?何かあったのか?』
宮舘「あっと……深澤が!汗かいちゃって着替えてんのっ!だからっ……!!待ってて……」
渡辺『…“涼太”お前だけ外出てこい。』
宮舘「っ………分かった…」
テクテクッ
宮舘「深澤さん……俺ちょっと部屋出るから…薬効き始めたなって思ったらそっちのドアから出て…カバンと靴はそこに置いてあるから、」
深澤「え?…あ、え??」
宮舘「…絶対だよ…?」
深澤「う、…うん……」
そう言って宮舘は部屋から出ていった。声の主はおそらく渡辺先生だろう。互いに下の名前で呼び合っていた。たった数ヶ月でここまで仲良くなるのか?思いつつ、宮舘の顔が気になった。
何かを諦めたような、絶望したかのような顔。何か変な感じがして俺は宮舘の言う通りにすることにした。
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