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3
「……で、なんでこうなったわけ?」
自室のベッドの上で、俺は枕に顔を埋めながら、狂いそうな頭を必死に抱えていた。
対する目の前の男
我が家にやってきてまだ二日目の義弟は、大型犬なら
ちぎれんばかりに尻尾を振っているのが見えるかのような、超ご機嫌な笑みを浮かべている。
「兄さん今日も可愛いね。制服も似合ってるけど、その部屋着のちょっとダボっとした感じ、すごく好き」
「黙れ。お前に褒められても一ミリも嬉しくない」
あの夕暮れの昇降口での、心臓が止まるかと思った突然の告白。
あまりの衝撃にキャパオーバーを起こした俺は
まともな思考ができないまま、直哉の真っ直ぐな瞳に圧されるようにして、勢いでコクコクと頷いてしまったのだ。
その結果。
───出会って二日目の義弟が、俺の「恋人」になった。
文字にしても言葉にしても、正直意味がさっぱりわからない。
完全に人生のレールが急カーブを描いて暴走を始めている。
「ねぇ、兄さん」
「……なんだよ、用がないなら自分の部屋に帰れ」
「付き合ってるんだから、そんな遠くにいないでもっと近くに来てよ」
「は!?そんな義理はない!」
「すごくあるよ?」
即答だった。しかも、恐ろしいほどの真顔だ。
こいつ、本当に学校の廊下で女子生徒たちから「王子様」だの「高嶺の華」だのと騒がれている
あの田口直哉なのだろうか。
外ではスマートで爽やかなモテ男を演じているくせに
家に入って俺と二人きりになった途端、甘えん坊の大型犬に変貌しすぎる。
俺が本能的な危険察知能力に従って
ベッドの壁際へとじりじりと後ずさると
直哉は「逃がさない」とばかりに、当然のような顔でずいっと距離を詰めてきた。
みしり、とシーツが擦れる音を立ててベッドが沈む。
「ちょ、待て、近っ……!近いって!」
「んー……兄さん、やっぱりすごくいい匂いがする」
「犬かお前は!!」
俺の鎖骨のあたりに、直哉がその色素の薄いサラサラとした髪の頭を容赦なく埋めてくる。
必死に男の胸板を両手で押し返そうとするのだが
筋肉のついたがっしりとした体躯は、ビクともしない。
力が強すぎる。
なんなんだこいつ。
年齢は俺の方が一つ上なのに、身長差が二十センチ近くもあると
普通に体格差だけで押し潰されそうで怖いんだけど。
「兄さん、本当に小さいね。160cmだっけ?すっぽり収まっちゃうね」
「違う!162センチだから!ちょっと小柄なだけで、普通だわ!」
「俺から見たら、小さくて、白くて、めちゃくちゃ可愛い」
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