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巡る時間、繋がる想い-奏太とあかり-

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巡る時間、繋がる想い-奏太とあかり-

17 - 第十七章:失われた記憶―あかりとの再会

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2025年02月24日

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1.過去への再帰、戻れた時間

再び、過去に戻ることができた――。

奏太は、高校時代の映画部の部室で目を覚ました。

12年前の机の感触、窓から差し込む夕陽、仲間たちの笑い声――。

全てが、前に戻ったときと同じ光景だった。

しかし、今回は明らかに「違う」ことがあった。

前回戻ったときよりも、心が落ち着いている。

初めて過去に戻ったときは混乱ばかりだったが、今回は違う。

なぜなら、奏太は一度、父の未来を救うことに成功しているから。

「……この時間を、必ず生かす。」

奏太は静かに決意を固めた。


2.「あかりは、俺を覚えていない?」―違和感

放課後、校舎の裏庭へ向かった。

そこには、いつものようにあかりがベンチに座り、本を読んでいた。

「……あかり。」

呼びかけると、彼女はゆっくり顔を上げた。

しかし――。

「……あなた、誰?」

奏太の心臓が、一瞬止まったように感じた。

「え?」

「ごめんね、私……君と知り合いだった?」

彼女の目には、純粋な疑問が浮かんでいた。

まるで、奏太のことを知らないかのように。

――おかしい。

前回、過去に戻ったときは、あかりは普通に話してくれた。

それどころか、未来でも「私も病気なんだ」と告白してくれた。

なのに、なぜ今、彼女の記憶がリセットされている?


3.「この世界は、少しずつ変わり始めている」

動揺を隠せないまま、奏太はあかりの隣に座った。

「……もしかして、本当に俺のこと覚えてないのか?」

「ごめん……。」

あかりは申し訳なさそうに微笑んだ。

「最近、よく記憶が飛ぶことがあるの。大事なことでも、ふと忘れてしまうことが……。」

――記憶が、飛ぶ?

それを聞いた瞬間、奏太の頭の中に警鐘が鳴った。

「もしかして、俺が過去に戻るたびに、世界に歪みが生じているのか?」

父を助けることができた。

過去の出来事を変えることができると確信した。

しかし、その代償として――あかりの記憶が失われている?

「……あかり、病院には行ったことあるか?」

「え?」

「その、記憶が飛ぶこと……原因を調べたことは?」

あかりは少し考え込むように視線を落とした。

「……ううん。私は元々、あまり体は強くないから……気にしてなかった。」

その言葉に、奏太は強く歯を食いしばった。

――未来のあかりは、確かに「心臓に持病がある」と言っていた。

でも、この時代のあかりは、それをまだ知らない?

いや、違う。

もしかしたら――。

「俺が過去に戻ったことで、あかりの未来も変わり始めているのかもしれない。」


4.「俺のことを、覚えていてほしいんだ。」

奏太は、あかりの手をそっと握った。

「え……?」

「もし、君が何かを忘れてしまったとしても……俺のことは、覚えていてほしいんだ。」

あかりは驚いたように目を丸くした。

「君は、俺にとって大切な人だから。」

「……。」

あかりはしばらく黙っていた。

それから、小さく微笑んだ。

「不思議な人だね、君は。」

「なんで?」

「私のことを大切に思ってくれてるのに、私は君のことを覚えていないなんて……。」

あかりは少し寂しそうに笑った。

「でもね……不思議と、そんな気がしないの。」

「……?」

「君と話してると、何か大事なことを思い出せそうな気がする。」

彼女は、ぎゅっと奏太の手を握り返した。

「だから、また会ってくれる?」

奏太は、微笑んだ。

「もちろん。」

――彼女の記憶は失われても、また築けばいい。

何度でも、何度でも。

この時間が許す限り、俺は彼女と向き合い続ける。


5.「俺たちの映画を、必ず完成させる」

その日、奏太は映画部の部室に戻り、メンバーたちと撮影の準備を進めた。

「お前、なんか今日いつもより気合い入ってるな?」

友が笑いながら言う。

「まあな。」

――俺たちの映画を、必ず完成させる。

それが、今の奏太にとって何よりも大切なことだった。

映画が完成したとき、もしかしたら、あかりの記憶も戻るかもしれない。

そして、今度こそ、彼女の未来を変えられるかもしれない。

「俺は、まだ諦めない。」

自分がこの時間に戻ってきた意味を、絶対に無駄にしない。

――俺たちの生きた証を、映画として残すために。


第十七章・終

巡る時間、繋がる想い-奏太とあかり-

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