(ホークスが敵の個性で記憶が無いまま公安時代の姿に。時系列で見ると本誌の+1年後ですが、ホークスがヒーロー活動っぽいことしてたりするので頭空っぽで読んでください。書きたかったんだなぁと思って見てください)
気がついたら、知らない男の人がしゃがんでいた。黒い、鳥の頭をしている。
「名前は言えるか」
名前….。
「たかm……ホークス」
「……お初にお目にかかる。俺はツクヨミ。
外はもう暗い。部屋に行こう」
ツクヨミって人は、俺に手を差し伸べた。多分ヒーロー。だから、ついて行っても大丈夫。ツクヨミさんは俺と繋いでいない方の手を耳に当ててなにか話している。
しばらく歩くと、大きな建物に着いた。
「今から会うのは俺の友人だ。安心してくれ」
扉が開いて、中から出てきたのは、黒い髪に紫の瞳のお姉さん。
「こんばんは。はじめまして。ゆうです」
俺に背丈を合わせたお姉さんはニコリとした。
「……ホークス、です」
「ホークスくん。よろしくね。喉乾いてない?お茶飲む?」
お姉さんはパタパタ….パタパタとどっかへ行っては帰ってきた。
「ここに座ってどうぞ」
紫色の紙コップに麦茶が入っていた。案内されたソファに座ってお茶を飲む。
お姉さんとツクヨミさんはなにかを話し出した。
“ 先輩達には伝えておく “
” よろしく。私は家で様子を見るよ。近いし “
” わかった。ヴィランは拘束済みだ。警備を進める “
会話からして、やっぱりヒーロー。お父さんがいない、安全なところだ。
ツクヨミさんが出て行って、お姉さんと2人きりになる。
「大丈夫?疲れてない?」
お姉さんはパタパタと何かを片付け出した。
「だいじょうぶ」
「良かった。痛いところとか、寒かったりとかしたら、遠慮なく言ってね」
片付けが一通り終わったお姉さんは、隣にストンと座った。
「今から、私のお家に一緒に来てくれないかな?」
「……….」
お姉さんは続ける。
「分からないことがいっぱいで不安だよね。でも大丈夫。お姉さんたちは君の味方だから」
「……わかった」
正直、疑ってた。いつもの周りの人じゃないから。公安の人じゃないから。でも、味方なら。お父さんと会わせないならいいかな。
お姉さんは俺の手を引いて、ちょっと離れたマンションまで歩いた。
「疲れてない?」
「うん」
何度も気遣ってくれる。
エレベーターでちょっと上がって、お姉さんの部屋に着いた。
中は俺の家より綺麗で、ゴミ袋とか缶とかなくて。普通なのかもしれないけど、とっても安心出来る場所だ。
玄関は傘立てと靴箱。スニーカーとか下駄とかブーツとか、なんかオシャレなのがある。木の机と椅子。紫色のマットレスとテレビ。本棚には本がいっぱい。キッチンもやっぱり綺麗で、コップが伏せてある。
「け…..ホークスくん、お腹空いてる?それともお風呂がいい?」
け….って、多分俺の名前だ。公安の人から聞いたのかな?
「…….トイレ」
「ぜひどうぞ」
お姉さんの部屋はトイレすら綺麗で、ピンクのマットレスが引いてあった。公安で教えて貰ったように用を済ませて、さっき台を出してくれて手を洗った場所…..手洗い完了。
「終わった?」
お姉さんは携帯から顔を上げ、俺に笑いかけた。
「……….」
「ご飯にするか、お風呂にするかー、」
俺のお腹がキュルキュルと鳴った。
お姉さんはくすっと笑って、
「ご飯にしようか」
テレビ見てていいよ、と椅子に案内される。クッションがふわふわだ。テレビをプチッとつけると、今日のニュースが流れる。
政治・ヒーローの話・天気…..。ヒーローにしようかな。
「ホークスくん苦手なものある?」
「べつに、ないよ」
変な匂いがしなきゃなんでもいい。
「あ、明日雨なんだ。ラッキー」
パッとテレビを見たお姉さんが呟く。
雨好きなのかな….。
しばらくすると、何かが焼けるいい匂いがした。なんだろうと思ってお姉さんの方を見ると、ちょうどお皿に盛っているところだったみたい。
「できたよ。嫌いだったりおなかいっぱいだったら無理して食べなくていいからね」
じゃがいもにハムとチーズが挟まっていて、コショウとケチャップがかかってる。その横にはレタスと紫キャベツ。スープは春雨とたまごが入っている。
「足りなかったら、まだなんか出すから。遠慮しないで、思ったこと教えてね。食べていいよ」
さっきと同じようなお茶を持ってきてくれた。遠慮なく…..じゃあ…..
「お姉さんは、たべないの?」
「食べるよ。一緒に食べていい?」
お姉さんが隣に来ると言うので、俺は頷いた。公安にいて気づいたことだけど、ご飯って美味しいんだ。
「いただきます」
「…..いただきます」
ホカホカのじゃがいも。ハムもチーズも美味しい。レタスとキャベツは、シャキシャキで、ドレッシングが特に美味しい。スープは暖かいし、春雨は麺みたいな感覚が楽しい。
「……お姉さん、ヒーローなんでしょ?」
「うん?そうだよ。駆け出し見習いヒーロー。k……ホークスくんは、ヒーローが好き?」
「うん。かっこいい。俺もああなりたいんだ。……お姉さんさ」
「うん?」
「むりしてホークスっていわなくていいよ。こうあんのひとからきいたんでしょ?けいごって」
「…….うん。でも、ホークスが呼んで欲しい呼び方で呼ぶよ」
鷹見啓悟とはさよならした。俺はホークス。…..だけど、お姉さんには、なんか…..啓悟って呼ばれたい。暖かい家族で、お姉さんみたいなお姉ちゃんがいたら、きっとこんな感じかなって。
「啓悟でいいよ」
「いいの?じゃあ、啓悟くんね」
水が弾けたように笑ったお姉さん。俺は目の前の食事も忘れて、お姉さんのその笑顔に見惚れてしまった。
可愛い笑顔。人を元気にさせるような、そんな笑顔。
「…….ん、」
笑顔を見ていたら急に恥ずかしくなって、お皿を見つめた。
「どうした?お腹いっぱい?残してもえぇよ?」
えぇよ?
「だ、だいじょうぶ。たべる、」
「そう?なんでも言ってや?」
言ってや?
ツクヨミさんと話してる時とちょっと違う話し方。なに?それ。なんか似てる。
「ご馳走様でした」
「あっ、」
お姉さんが行ってしまう。そう思うと思わず声が出た。……いや、ヒーローは忙しいじゃないか。だから止めちゃいけないんだ。
「ん?」
止まっちゃった。
お姉さんは空になったお皿とお椀、コップをちょっと退けて頬杖を着いてこっちを見た。
「どうした?」
優しい顔だ。俺を見る、優しい顔。
「……..な、なんでもない。このあと、なにするの?」
「この後?お風呂入って、寝ようと思ってるけど。なにかしたいことがあった?」
お風呂…..。寝る…..。
「とくには……..」
……本当は、本当は、あった、けど、
「なんでも言ってみ?」
………なんでも、いいの?
「お姉さんと、いたい……」
様子を伺うようにお姉さんを見ると、ちょっと驚いたあと、いいよって言った。
「お風呂は…..うーん…..いいか。一緒に入って、一緒に寝よう」
「いいの?」
「ちょっと刺激強いかもしれないぞ」
カラカラと笑うお姉さん。あ、俺、服….。
「ごちそうさま。….あの、ふく…」
「うん….ちょっと立って?」
お姉さんは俺をじっと見て、お姉さんの胸下と俺の頭を右手で行ったり来たりさせた。
「パンツ…..コンビニで買うかぁ」
本当は一緒に行きたいけど…..。お姉さんははちょっとまってねと言って、窓を開けてベランダに出て行った。水溜まりが足の裏にできて、ひゅんと飛んではすぐに帰って来た。
「ただいま。Sでいいかな」
窓を締めながら、お姉さんは袋を俺に差し出す。
「上の服は私の半袖着て貰って、ズボンは短パンかな。不自由させてごめんね」
脱衣場でびっくりしたのは、お姉さんの身体だ。傷がいっぱいある。白くて綺麗な身体。でも、
「それ…..いたくない?」
「え?もう全然。それより着替え、背中切らないとね」
それより…..って…..。
お姉さんは俺の身体に優しく泡をつけたりお湯を流したり。お湯の温度はちょっとぬるいけど、羽の隅々まで行き渡る。
お姉さんは髪も羽も乾かしてくれて、自分の服に容赦なく切り込みを入れた。
「い、いいの….?!」
「いいのいいの。普段着だし。啓悟くんが不自由する方がやだ」
やだ….って、子どもかよ….。
「お姉さんさ….なんさい?」
「16になったとこ」
16歳?!10こも違うの?!ドライヤーをかけるお姉さん。10こも年上のお姉さんに、ご飯の時からドキドキしてるんだ….。
「さ。寝よっか」
マットレスに案内されて、ドーナツみたいなクッションを渡された。
「うつ伏せで寝ても呼吸楽だよ。良かったら使って」
お姉さんはモゾモゾと布団に入った。一緒に寝るって言ったから、隣でいいんだよね….?
「啓悟くん、上の布団ある?」
「うん」
横になったお姉さんは、同じお風呂に入ったのにいい匂いがした….気がした。
「……お姉さんはさ、」
「うん」
「俺といるの、いやじゃない?」
「嫌じゃないよ。むしろ嬉しい」
変なの。…..変だけど、嬉しいし、暖かい。
「……お姉さん、手….」
「握る?いいよ?」
俺の右手をお姉さんは両手で握った。
「暖かいね…..うふふ…..」
お姉さんは嬉しそうに笑って….それで….俺も、なんだか眠くなってきた…..。
「おやすみ…..」
「うん…..おやすみ….啓悟くん…..」
お姉さんが、頭を…..撫でて、くれた…..。
息苦しさで目が覚めた。
目を開いて1番最初に見えたのは、愛嶋ちゃん。そりゃあ驚いたし声も出そうになるけど、愛嶋ちゃんが起きちゃうんでとりあえず静かに。
なんか記憶が鮮明になって来た…..ヴィランと戦って、煙吸って、やばいと思ったらツクヨミくんがいて….愛嶋ちゃんに引き取られて、…….あーあーあー!!!!
見てはいけない物を見てしまった…..!一旦冷静に、とりあえず服着ないと犯罪になr
「……….ホークス…….????」
起きてしまった。
「…….事務所なら着替えくらいありますよね??とりあえず水で包むんで、あの、服着ましょう、」
…..そうだ。冷静に。冷静になれ俺…..!!
幸い人にはすれ違わず事務所に行くことができた。着替えを着ながら、パジャマのまま下駄を履いている愛嶋ちゃんの質問に答える。
「体調はどうですか?」
「変なところはありませんねぇ」
「そ、それは良かったです…….」
…….冷静に対処されると、これはこれで残念というか。好きな女の子の部屋行って数時間同じ生活してお互い裸見てなんにも反応無いとか。さすがに傷つきますよね。
「愛嶋ちゃんの料理、美味しかったですよ」
「き、記憶があるんですか、」
「あっちゃ不味いんですか?」
そ、そりゃあ、とたじろぐ愛嶋ちゃん。
へぇ。それならちょっとは期待してもいいんですかねぇ?
「愛嶋ちゃんさ。警戒した方がいいですよ。一緒にいたいって言われて風呂も睡眠もなんて。しかも今。ノーブラでしょ?」
「………あ、あの、提案がありまして、」
まぁ聞くだけ聞いてあげましょう。
「忘れませんか?今回のこと、」
「いやぁ。今回敵の個性でこうなったと考えると、大事なことなので忘れない方がいいと思うんですよね。それに忘れたくないですし」
愛嶋ちゃんは俯いてしまった。耳まで真っ赤にして。
「ねぇ」
愛嶋ちゃんの肩をぽんと叩く。
「そろそろ意識。して貰えます?」
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