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てっきり来ないと思っていた彼、茜とは、すぐに再開することができた。
それでも、十年前とは見違えるような姿になっていた。
私と変わらなかった身長は、見上げないと顔が見れない程に伸びていて、少し、格好良かった。
それから、彼とまた明日会う約束をして、余韻に浸りながら、家に帰って、すぐにベッドに入った。
まだ胸の高鳴りが抑えられなかったが、何とか眠りについた。
翌日、彼と今までのことを話した。
私が代り映えの無い退屈な毎日を過ごしてきたのと同じように、彼も退屈な日々だったらしい。
そしてまだ自分の心が戻っていないことを話すと彼は、
「それなら、昔行ったところを一緒に回らないか?」と提案してきた。
私は、ためらうことなくこれを承諾した。
「それじゃあ、まず一緒にあの公園に行こうか。」
あの公園というのは私たちの家から少し離れたところにあって、よく二人きりで遊んでいた公園だった。
歩いていく途中目に映る世界は、いつもより眩しくて、輝いて見えた。
そこへは、30分ほどでたどり着いた。
「あー…大分ボロくなっちまったな。錆びだらけだ。」
「うん…でも、すごく懐かしい。このジャングルジムとか、よく競争しながら登ったよね。」
「ははっ、そんなこともあったな。んじゃ、久しぶりに競争だっ!」
彼は言い終わる前に困惑する私を置いて走り出していた。
「えっちょっと待って!ずるい!」
慌てて走り出したが、当然追いつけるわけもなかった。
「遅いぞー。はい俺の勝ち。」
「いやいやいやいや今のは反則!」
いつの間にか二人とも夢中になって、十年前のように遊んでいた。気付いたころには日は沈みかけ、空はオレンジ色のグラデーションになっていた。
「ありゃりゃ、もうこんな時間かぁ。」
「結局、俺に一回も勝てなかったな!」「茜くんが反則ばっかりするからでしょうが!」
「ナンノコトカナー」
あからさまな棒読みについ吹き出してしまった。つられて彼も笑っていた。
「ふぅ、もう遅いし、帰るか。」
「そうだね。」
そう言って、もう一度同じ道を引き返す。
「私、家こっちだから、またね。」
「おう、じゃあな。」
そうして別れた後、淡い青紫色の空を見上げる。
久しぶりに二人で過ごした世界は、優しくて、少し、気持ちよかった。