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帰宅した瑞奈は、自身のALSについて進行性球麻痺型の疑いが強いことを、ご両親と咲良に伝えた。
余命が三か月以内かもしれないと言及すると、それまで黙っていた瑞奈のお母さんが「嘘でしょお!」と発狂するように声をあらげ、顔を覆った。
泣くのを我慢しているのか黙ったままの瑞奈のお父さんが、そっとお母さんの背に手をやる。室内から、鼻を啜る以外の一切の音が途絶えた。
俺の視界は色彩を失ったままだ。クーラーが効いている室内で汗をかいていた。
夜、緊張の糸がぷつりと切れたように、瑞奈が高熱をだして倒れた。
息苦しそうにひゅうひゅうと乾いた呼吸を繰り返している。すぐに救急車を呼んだ。担架で運ばれる瑞奈の瞼が閉じられる寸前、彼女の瞳が曇るように光を反射させなくなった。
「瑞奈!」
「下がって」救急隊員が瑞奈を救急車の中へと運び込む。
鳴り響くサイレンの赤色灯は、灰色のままだ。救急車が遠ざかっていくほどに、身体の中に重石を積まれていくみたいだった。
滅茶苦茶だ。
眼前の出来事が、世の中が、現実が、不合理で狂っている。冷鉄の扉で出口をすべて塞がれたみたいだ。叩いても音が虚しく響くだけ。それでも俺は叩き続ける、殴り続ける。骨が折れようとも。血が吹きだそうとも。瑞奈を守るためにぶっ叩く。
しかし、叩くほどに鉄扉が分厚く頑丈になっていくみたいだ。俺を嘲笑うように硬くなっていく。
いつしかがっくりと膝をついていた。
腕もあげられずにだらりとさげる。瑞奈が乗った救急車はもう見えない。
辺りはもう、真っ暗だった。