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雰囲気が和らいだ感もあり、
「その道の……っていう、さっきのお話は?」
気になっていたもう一つの疑問を思い出し、ふと投げかけてみた。
「それは……、私の経験がとぼしかったんで、その道のプロのクラブの女性に、あしらい方を聞いたんだが……」
彼から告げられたことに、「へっ?」と思わず面食らう。
「その道のプロって、もしかしてクラブのホステスさんにですか?」
「そう、だが?」と、彼が何かおかしいことでもと言うように、いぶかしげな顔つきになる。
「それでは、あの接し方も仕方がないような……」
突拍子もない話に驚いて、目を丸くする。
「いや、あまりストレートに訊いてはと思って、どんな男性が好みでと言うように訊いてみたんだが」
「ああ、そういうわけで……」と、その場面のやり取りをにわかに察する。
「やはりまずかったのだろうか? そうしたら割りと素っ気ない男性の方が好かれると、そう聞かされて。初めからガツガツ来ると、女性は避けてしまうと言われたものだから、それで──」
なんていうか彼の話を聞いていると、クールな外見にそぐわず、内面はすごくピュアで可愛らしい人のようにも思えてくるみたいで、驚きからやがて笑みがこぼれると、クスクスと笑いは止まらなくなった。
「……そんなにおかしかっただろうか?」
やや心もとなさそうな彼の問い返しに、笑いを引っ込めて「いいえ」と首を左右に振った。
「事情がわかって、微笑ましく感じたっていうか……ですが、」と、そこまで話して、彼の顔を上目に窺った。
「クラブの女性に聞いたら、大抵はそう言われるんじゃないかと。接客をしていれば、男性から言い寄られることも多いでしょうし、それで逆に素っ気ない男性の方が、むしろがっついてなくて好きでと話されたのでは」
「ああ、それは……確かにそう、だな」
ようやく合点がいったように、彼が頷く。
「だとすると、私は根本から間違っていたのか?」
自問するかのように呟いて、ひとり首をひねる仕草に、
「とりあえず聞かれる方は、ちょっと間違っていたのかもしれないですが。だけどあまりデートをしたことはなくても、クラブの女性とのお付き合いはあったんですか?」
気取らない自然体な感じが垣間見えて、疑問が一つ解けると、彼自身のことがもっと知りたくなった。