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辛い。ひどく辛い。今までにないほどに。あんな光景見てしまったら、耐えられる訳がない。陽佑は、元々自分のことなんか好きじゃなかった。あの光景を見て、やっと気がついた。気がつくことができた。これ以上寝ていても辛いだけだと思って、今日は仕方なく眠りにつくことにした。
月曜日、朝。憂鬱だ。あの時の辛さが、今もフラッシュバックする。「身だしなみ……は、いいか」もう全体的に割とどうでもよくなって、身だしなみも整えぬまま、玄関から出た。
学校に行きたくない。陽佑と顔を合わせられない。相手は何とも思ってないのは分かってるけど、自分はどうしても気まずい。自分がいることで2人を不幸にしてしまうかもしれない。そう思ってしまう。頭の痛みを感じたので、とりあえず学校へ向かう事にした。
学校について、支度をして、席に着く。そこで大雅は衝撃的なニュースを聞いた。「裕太さんと湊さんが、火事で亡くなったそうです。まだ火元は特定されておらず……」あの2人、いつもはショッピングセンターにいるけど、昨日は見ないなと思ったら……そういうことだったのか……
少し、迷ってしまった。陽佑が振り向いてくれないなら、自分に生きる意味なんてない。ふと、そう思ってしまった。裕太と、湊の席には花の入った花瓶が置かれている。あの花は……オキナグサだろうか。もうあいつらに会えないと思うと、凄く寂しかった。面白い奴だったな、そんなことを思っている間に、1時間目が迫っていた。
午前の授業が終わって、給食の時間になった。いつも通り、給食を食べようと口に入れた。が……味がしなかった。(某ウイルスではありません)何も感じることが出来ない。以前はあんなに美味しかった給食が、全く味のしない物になってしまった。辛いと、思ってんのかな。自分。自分では、よく分からなかった。
放課後。部活に行くのがちょっと憂鬱で、少し躊躇いながら体育館に向かっていると、「かいちょ、大丈夫?表情暗いよ?」樹がそういった。「大丈夫wちょっと疲れただけだよw」「土日はしっかり休めよw」「じゃあ俺部活行かなきゃだから!じゃーね!」話を半ば強引に切り上げて、体育館に向かった。 本当に、部活に身が入らない。いつもはそんなに指摘されないのに、今日は指摘点ばかりだった。2人は、楽しそうに向こうで話している。あぁ、羨ましいな。勝手に恋して、勝手に嫉妬して、勝手に失恋しているのも分かっているけれど。どうしても羨ましい。今日は具合が悪いと顧問に伝えて帰ることにした。2人が、心配げな顔でこちらを見ていた。
家に帰って、思った。ほんとに、自分に生きてる意味なんてあるのか?本当に、意味が見いだせない。このまま生きていても辛いだけなのではないか。そう考えたら、消えたくなってしまってならなかった。でも、自分まで消えたら、みんなに辛い思いをさせてしまう。だから、思いとどまった。ただ。それだけだ。
翌日。いつも通り学校に来た。いつも通り笑ってるようにして、楽しそうにしている。それだけで、みんなが楽しくなってくれるから。それなら、嘘でも笑ってた方がいいかな。そう思って、今日も笑い続ける。
ほとんど耳に入らない授業を終えて放課後。もう、限界になってしまった。ぼぅっとしながら、いつもと違う方向に歩いていく。その時だった。「会長!!どうしたの?!ぼーっとしてるし、帰る方向じゃない方に歩いてるじゃん!!」樹に呼び止められた。「いや、ちょっと寄り道しようと思って……w」「絶対違う!目に光が宿ってない!!」勘が鋭いんだな……こいつ「とりあえず僕の家来てよ!今の会長なんか危なっかしい!」手首を掴む樹の手を、大雅は無理矢理振りほどこうとした。「1人にしてくれよ!」「だめ!今会長を1人にしたら何するかわかんないもん!」「……とりあえず着いていくよ……」何故か、着いていく事になってしまった。
「お邪魔します……?」とりあえず、樹の家についた。結構広めの家だった。「会長!好きな様にくつろいでね!」「くつろげって言われてもさぁ……この状況てどうくつろげって言うの……」「会長なんか今日元気なさそうだったからさ!ゆっくりしてって欲しくて!」樹はそう言ってケロッと笑った。本当に綺麗な笑顔だ。ちゃんと、心から笑ってる。羨ましいな、「会長、ちゃんと笑えてるの?」
「え?」
「本当は辛いんじゃないの?」なんで……分かるんだよ「会長、言ってよ。俺、会長が辛い顔してるの見てられない。」
お前は、……なんでそんなに優しくなれるんだよ……今日は、今日だけは、
その優しさに、甘えても、いいかな。
そう思った瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。
「ごめ、俺、情けないよな……」「そんな事ない。大丈夫」
大雅は、樹の胸の内でしばらく泣いていた。
泣き止んだ頃、ふと、樹が言った。「会長、ちょっと聞いてくれる?」「なに?」「俺、会長の事がずっと好きだった。俺なんかが会長の心の傷を埋められるかは分からないけど、俺、会長の為に精一杯努力する。だから、」「俺と付き合ってくれませんか?」
少し間を開けて、大雅は答えた。
「よろしくお願いします。」
大雅は、急に恥ずかしくなって、あっけらかんと笑った。樹も笑った。このまま、ずっと笑ってられたらいいのにな。
大雅はまた、幸せになれた。
お わ り
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