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放課後の噴水広場。夕暮れ時、オレンジ色の光が水面に反射して輝いていました。
私は今日の配信を終えて、ゼノ君と一緒にベンチで一息ついていました。
「ふう……。ゼノ君、今日もお疲れ様ですわ。ほら、見て。皆様が『リリアーナ様、今日も可愛い!』って、たくさんコメントをくださっているの」
私が鏡を覗き込んでニコニコしていると、隣に座るゼノ君がふいっと顔を背けました。
「……勝手なものだ。俺を人殺しだとも知らずに、気楽な言葉を並べおって」
「あら。でも君、今はもう人殺しじゃなくて、私の専属カメラマンでしょう? 私は今の君の方が、ずっと素敵だと思いますわ」
私が本気でそう言うと、ゼノ君は沈黙しました。
そして、おもむろに立ち上がると、私の目の前にしゃがみ込み、私の靴紐が解けているのを無言で結び直してくれたのです。
「……リリアーナ様。お前は、隙だらけだ。俺がいなければ、今頃シャーリーの罠に嵌まって、泥まみれになっていただろうな」
彼が懐から取り出したのは、小さな紙包み。開けてみると、学園で大人気の「限定ストロベリータルト」が入っていました。
「まあ! これ、いつも行列で買えないものですわ! どうしたの?」
「……撮影の合間に、影に潜んで並んだ。お前が、食べたいと独り言を言っていたからな」
「ゼノ君……! 嬉しいわ! 最高のパートナーですわね!」
私が大喜びでタルトを頬張ると、ゼノ君は鏡を構えて、その無防備な笑顔を無言で撮り始めました。
「……お前が笑っているアングルは、嫌いじゃない」
ゼノ君は小さな声でそう呟くと、夕闇に紛れるようにして、優しく微笑んだのでした。