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必死にコロという名前の小型犬を助ける。なんでこんなことをしているのか、私にもわからない。だって、自分の命を犠牲にしているのだから。

遠いところで奏茉達の声が聞こえる。それから大人の声も。

犬の首輪を掴み、足をバタつかせながら岸へ向かう。犬は安心したのか、自分で泳いでいた。私も少し安心しかけたその時、水量が一気に増え、私の体を波が襲った。

___奏茉side___

相羅が走って川へ飛び込んでいくのが見えた。俺よりも先に、相羅が動いた。

びっくりして俺は必死に叫んだ。なんでかわからないけど、叫ばないといけないと思ったからだ。

わんちゃんと相羅が浅瀬の方まで戻ってきたのを見て、安心して近寄った。でもそれを空茉に止められた。

「何するの空茉!」

「水量が一気に増えたぞー!!」

大人の声が聞こえた瞬間、相羅を見つけようとしたけどできなかった。たくさんの水に飲み込まれたから。

俺は一気に体の体温が下がっていって、頭が真っ白になった。

相羅が、死んでしまう。俺の大好きな人がいなくなってしまう。すぐにわかった。

目の前が霞んでいって、真っ暗になった時、空茉の声が聞こえた。

「奏茉、見て!」

「…おじさん、おばさん!」

「はぁっ、はぁっ…間に合った」

おじさんは両手に相羅を抱えていた。おばさんはわんちゃんを抱えていた。

いなくならなかった。けど相羅は怪我をしているのか、頭から血を流していた。

「あいっ、相羅…相羅!!」

「どなたか救急車を呼んでください!」

冷たくなった相羅を、俺はずっとゆすっていた。起きるんじゃないかと信じて。


目を覚ますと、そこは知らない場所だった。

白い天井、ちょうどいい室温に湿度。定期的に聞こえる機械音。それから、人の泣く声。

「えっ、死んだ?」

「生きてるよ」

空茉の声が聞こえて思わず飛び上がる。すると、頭に強烈な痛みが走った。

「相羅…相羅起きたっ、あいらぁ」

泣きじゃくっている奏茉を見つけて、少し安心する。助かったんだ。

「お母さんと、お父さんは?」

「2人とも川に飛び込んだから切り傷とかあってね、今看護師さんに手当てしてもらってるって」

空茉の説明で、両親が私を助けてくれたんだと察する。

川の中での記憶はほとんどない。岩に頭をぶつけて気を失ったのもあるけど、何も見えなかったし何も聞こえなかったからと言うのもあるだろう。

とりあえず生きていることに私は安堵する。

「ごめんね、ごめんね相羅…オレっ、助けに行けなかったぁ…!」

「逆にその方が私としてはよかったよ。2人で溺れてたら、私の両親は確実に助けきれなかっただろうし」

もし奏茉が私を助けようと川へ飛び込んでいたら、あの犬は諦めて私と奏茉の救助を優先しただろう。それでも助かるかわからない。だから、奏茉はいい判断をしたのだ。

「奏茉が飛び込もうとした時、上の方から水が一気に流れてるのが見えて止めたんだ。ごめんね、相羅。見捨てたって思った?」

「水の中の記憶あんまりないけど…でも空茉の判断は間違えてないし、奏茉を止めてくれてありがとう」

空茉が奏茉を止めたことを知って納得する。

やっぱり空茉は冷静な判断ができる子なんだ。







名前もないモノガタリ

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