レイブとバストロが適当に薪を拾って戻った食卓は更なる盛り上がりを見せていたのである。
無表情なままでフランチェスカが大声だ。
「あははは、傑作じゃないのお! それで? ペトラぁ、アンタ何て言ってやったのよぉ!」
『えっ? えっと、なんだったかな? うん、そうだわ、ゴホンッ、『バストロのお師匠、ほどほどにしないと駄目よ、良い? 必要以上に多くを求めるものはね、結果必要以上のものを失う、そんな未来しか待っていな――――』
「あはははははっーーーっ! 今日、超楽しいぃーっ!」
『えっ? 今言い終わってなかったじゃん…… んまあでも、楽しかったんなら良いかぁー! イェーイッ! フランチェスカぁー!』
『イッエエーイッー! あははは、あはははぁー!』
もうっ! 酔っ払いの話ってこんなものだよねぇ…… バストロやレイブが甘党だからね、必要以上に集めてしまった葡萄や棗(なつめ)、桃や林檎を、適当に冬の間の飲み水にぶっこんで寝ふいた挙句、この春先に自然発酵した果実水は、皆さんに判りやすく言えば、ストロング的なアルコール分を含んでしまっていたようである。
薪を降ろし自分の席に腰を下ろしたバストロは、この場の中央にある焚き火の上方で両手を擦り合わせながら言う。
「楽しそうだなセスカ、お前のそんな姿が見られて今夜は良かったよ」
フランチェスカは嬉しそうに弾む声を響かせる。
「ええ、楽しいわ! アタシの所もシパイが来てから賑やかになってさ、白竜の男の子カタボラと十六歳のトナカイ、雌のエバンガが加わってねぇ、でも、スリーマンセルが三組、九人で過ごす夜なんてぇ…… ねえ、バストロ! 昔を思い出さない? 昔こうして九人で過ごした事が有った事、覚えて無い?」
干し肉を齧り取った後、果実水(アルコール入り)のカップを手に取ったバストロは嫁に答える。
「うん? 九人、か? 師匠とお前、俺にヴノとジグエラだろ? ザンザスとガイランゲル…… 七人だけだったじゃあ無いか?」
フランチェスカは無表情なままで呆れたような声音で返す。
「何言ってんのよ! パリーグと彼女の息子、パダンパも一緒だったじゃ無いの! ずっと九人で過ごしていたじゃないのよぉ!」
「あ、ああ、そうだな、キャス・パリーグとパダンパか…… すまんすまん、魔術師とスリーマンセルだけでカウントしてしまったよ…… でも、そうだな、あの頃はいつも賑やかだったな……」
『パダンパか、モグモグ…… もう随分会っておらんのぉ、モグモグ…… あれも大きくなったじゃろうて、ふぅ、モグモグモグ……』
口一杯に昨秋の大量の乱獲で手に入れたモンスターの魔石を頬張り続け、今現在進行中でグングン大きくなっている最中のヴノの言葉にレイブは問い掛ける。
「パダンパ? 初めて聞いた名前だ、誰なの?」
『ん? ワシの孫じゃぞい』
「そっか、豚猪(とんちょ)かぁ」
『いいやライオンと虎の混血でのぉ、俗に言うライガーってヤツじゃぞい! あ、いや母親がライオンの場合はタイゴン、じゃったかのう?』
「へえ~、あ! そっかそっか、パリーグさんって養女だって言ってたよね、それでかぁ~」
『うむ、パリーグは雌の獅子の魔獣なんじゃよ、優しい娘でのぅ、フォフォフォ、モグモグモグ』
「そうなんだぁー」







