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「やっぱり女が関係してたね。」
高校生は、颯馬と真白に任せて5人はホテルの部屋に戻っていた。
阿部はびしょびしょに濡れていたため、入浴中だ。
「誰か1人でも殺せって…もう、なんでもありかよ…」
険しい表情で渡辺が呟く。
「多分、誰か殺せれば強い感情が生まれるって思ってるんだよ。」
深澤は淡々と、呆れた表情をする。
「…今回は助かったけど、これからもこんなことはあるんだろうね。」
目黒も冷静さを取り戻していた。
「…許せ、へん…そんなこと、していいわけないやん…」
向井は辛そうに声を震わせる。
そんな向井を優しく撫でる目黒。
「今回の件、照たちに伝えとこうか。」
深澤は岩本に今回の件の詳細を送った。
「…よし、今日の見回りはこれで終わりにしよっか。」
毎日の見回りを東京に残された4人で行っていた。
「にゃす!みんなおつかれぃ!」
佐久間の明るい声が響く。
この後は家で夕飯を食べる予定で、ワクワクとした気分の中、岩本のスマホに着信が来る。
(ふっかから…?)
それは、深澤からの連絡だった。
「…?岩本くん、どうかしたの?」
スマホの画面を見て固まる岩本に、ラウールが声をかける。
「………家に帰ってから、話すことがある。」
岩本は険しい顔をしていた。
家に帰り、岩本は連絡の内容を伝える。
神奈川に行き、颯馬と真白と共に行動していること。
敵が2体いること。
そのうちの1人が阿部を襲ったこと。
犯人は高校生で、阿部が溺死寸前だったこと。
女が関係していること。
そして、自分たちは命を狙われていること。
その全てが、詳しく書かれていた。
「………」
「…佐久間…?」
話を聞き終えたあと、佐久間は静かに席を立った。
そして、玄関に早足で向かう。
「…どこ行くの?」
静かすぎる佐久間の行動に不安になる3人。
「…神奈川だよ…神奈川に行く。」
佐久間は、静かにそう告げた。
「あべちゃんが…殺されかけたんだぞ…!また、また狙われるかもしんない…!!あべちゃんだけじゃねぇ…みんな危ない…俺も行かないと…!」
「佐久間、落ち着け。」
怒りと焦りでいっぱいになっている佐久間の肩を岩本が掴む。
「わかってる。今、あいつらは危ない。…でも、来るなって、ふっかが言ってるんだ。」
メールの最後には、
『でも、心配しないで。俺らは俺らで頑張るから、そっちもそっちでよろしくね。』
と、書かれていたのだ。
「俺らは俺らで任されてる。だから、”落ち着け”。」
岩本も不安でいっぱいだ。
向こうには深澤もいる。
深澤が危険な目に合うかもしれない。
顔を見れないまま、二度と会えなくなるかもしれない。
今すぐに神奈川に行きたい気持ちを必死に抑えている。
Snow Manのボスとしての判断をしている。
それを、佐久間も感じたのだろう。
佐久間は、静かに玄関のドアノブから手を離した。
「んっと…『わかった。気をつけてね。』だって。」
深澤が岩本の返信を読み上げる。
「…佐久間に、悪いことしちゃったな…」
阿部は東京にいる佐久間のことを考えていた。
きっと、辛いことをさせてしまっただろう。
申し訳なさそうな顔をする。
「佐久間のことは照が何とかしてくれてるよ。だから、阿部ちゃんは気にしないで。」
深澤が阿部の心配を拭うように明るく振る舞う。
「……ありがとね。」
それでも、阿部の心配は消えなかった。
(阿部視点)
ふっかの言う通り、佐久間のことは照が何とかしてくれてると思う。
でも……
佐久間、辛いよね。
ここで俺が死んでたら、佐久間は俺と会えないままだった。
佐久間に、さよならって伝えられないまま、会えなくなってたかもだよね。
佐久間に謝んないとだね。
心配かけて、不安にさせてごめんねって。
佐久間は、きっと大丈夫って言う。
俺が助かって良かったって笑ってくれる。
…不安だった気持ちを、俺に見せないようにしてくれる。
俺に心配かけたくないから、我慢するよね。
……そんなことさせないよ。
我慢しなくていいように、いっぱい甘やかそう。
佐久間の頼みを、なんでも聞いてあげようかな。
帰ったら、佐久間と一緒にいよう。
神奈川で会えてなかった分の時間を、佐久間と一緒に過ごそう。
「佐久間に、会いたいな……」
翌日、5人でホテルを出ると、颯馬と真白がいた。
「おはよ!みんな、元気そうかな?」
真白が驚く5人ににこにこと笑いながら手を振る。
「阿部くん、調子はどう?一応、心配だから見に来てみたんだけど…」
颯馬が阿部に視線を移す。
どうやら、2人はわざわざ確認のためにここで待っていたようだ。
「おかげさまで。昨夜は本当にありがとうございました。」
阿部が頭を下げる。
2人は、当然のことというようにほほ笑む。
「”仲間”のピンチに駆けつけるのが俺らの当たり前だよ。」
「言ったでしょ?俺らはSnow Manの味方だって。」
「ところで、今日は向井くんと目黒くんは仕事?」
颯馬が向井と目黒に向き直る。
「いえ、今日はオフです。明日と明後日で撮影を行う予定です。」
目黒の説明に隣で向井も頷く。
「よかった。なら、今日は5人に協力してもらいながら、”もう1匹”を探すよ。」
颯馬の言葉に5人は頷く。
「ま、探し出すって言ってももう候補は出てるよ。」
真白が余裕そうに笑う。
「観光半分、犯人探し半分ってとこかな…ということで!さっそく2チームに分かれまーす!!」
テンション高めに神奈川の観光パンフレットを掲げる。
真白のいつも通りのテンション感に空気が緩む。
「チーム分けは、こっちで決めさせてもらったけど…問題ない?」
颯馬が5人に確認を取る。
もちろん異論なんてない。
「まず、俺と一緒に行動してもらうのは、目黒くんと向井くん、そして阿部くんの3人。」
颯馬が3人を手招きする。
目黒、向井、阿部は颯馬との行動でほっとする。
一方で…
「だ・か・ら!俺のとこにはふっかくんと渡辺くんね!よろしく~♪」
深澤と渡辺は頭を抱える。
真白のストッパーも颯馬がいない中での行動だ。
不安でしょうがない。
「あの、颯馬くん。…どうしてこんなふうに分けたの…?」
チームで分かれる前、深澤は颯馬にチーム分けの意図を聞く。
颯馬は、ゆっくりと微笑んで、
「…真白が、『ふっかくんと一緒のチームじゃないと俺仕事しなーい!!』って…。…あいつが働かないのはかなり困るから、仕方なく承諾したんだ…」
疲れたほほえみを浮かべていた。
その理由を聞き、深澤もひきつり笑いを浮かべる。
「……深澤くんにはほんとに申し訳ないんだけど、真白が1番大きい戦力だ。今回はびしばし働いてもらわないと…」
颯馬は深刻な顔で深澤に告げる。
7人の中で、真白は圧倒的な力を持っている。
それを6人も理解している。
「…俺は、なんで一緒なんです?」
理由には納得したが、なぜ自分も?と渡辺が問いかける。
「全然深澤だけでもいい気するんだけど?」
「おい!お前な!」
渡辺が不満そうな声をもらす。
「深澤くん1人っていうのもあれかなって思ったからね。阿部くんのことは俺が見ときたかったし、目黒くんとも話したいことがあるからね。」
颯馬は申し訳なさそうに理由を説明する。
渡辺はまだ不満が残ってはいるが、承諾した。
「俺らは、こっちのルートで向かおうと思う。だから、観光は楽しめないかな…」
2チームに分かれ、颯馬が阿部、目黒、向井に向き直る。
「いえ、俺らも観光する予定はなくて…探索のみで問題ないです。」
阿部は予定通りと言った顔をする。
もちろん、目黒も向井もそのつもりだ。
颯馬も、まあそうだよねという顔をする。
観光をしたいのは真白のみのようだ。
「それじゃ、行こっか。」
颯馬チームは早速探索を始めた。
「よし!俺らのコースは観光ガイド4ページの…あ、配るの忘れてたね!はい、これ2人の分ね!で、これの4ページの…」
「ちょちょちょちょ!」
「一旦待ってもらえますか!」
一方で真白チームは、観光ガイドを配られ、そのまま話が進められていた。
その勢いに着いていけず深澤と渡辺は待ったをかける。
「ん?どうしたの?そろそろ出発しないと人はどんどん増えて回れるとこ少なくなるよ?」
真白はキョトンとする。
「いや、あのそれじゃ半分どころか全部観光じゃないですか?」
「颯馬さんに怒られるぞ。」
深澤は呆れながら、渡辺はジト目で真白を見つめる。
「あぁ、それなら問題ないって!俺に任しといて!」
だが、真白は笑顔で答える。
そして、2人の腕をグイグイ引っ張り歩き出す。
深澤と渡辺は、腕を引かれながら思う。
(この人と1日いないといけないのか…)
(早く帰りてー!)
「あ、あとね…」
真白は、思い出したように足を止める。
そして、
「2人は、帽子の色を見てて欲しいな。黒か赤…一応黄色も、見かけたら写真を撮ること。忘れないようにね。」
と、含み笑いを浮かべる。
その笑顔に、深澤と渡辺は表情を変えた。
今の真白は、間違いなく”dominatorのボス”だった。
「よろしい!じゃあ、4ページを見てもらって…あ、しまった!ここの店もう開いてるや!」
しかし、すぐにいつものわがまま真白に戻ってしまい、先程、深澤と渡辺が認めたボスの威厳など、一瞬で消え去ってしまった。
「1つだけお願いがある。帽子を見ていて欲しい。」
颯馬のチームでは、歩きながら指示を聞いていた。
「赤、黒。ここの2つを中心に見て欲しいな。一応、黄も警戒しとこうか。見かけたら、俺に声をかけて。」
真剣な表情で指示を出す颯馬に、同じ司令塔として、特に阿部が感心していた。
恐らく、dominatorの司令塔は颯馬なのだろう。
かなり有能な司令塔だ。
きっと、颯馬がいるからSnow Manと戦う前までは、dominatorとの勝負で勝つものはいなかったのだろう。
「その帽子の人だけでいいんですか?」
あまりにも正確に対象が決められている。
目黒の発言に向井もこくこく頷く。
「うん、問題ないよ。”真白の勘”が言ってるんだ。信用していい。」
颯馬が少し微笑みながら肯定する。
「…え?ホンマに?」
真白の勘という言葉に不安がある3人。
だが、颯馬は微笑んだまま続ける。
「あいつの勘は昔からよく当たるんだ。…未来予知、みたいなものだと思ってる。そして、阿部くん、君にもそれがあるよね。」
「…でも、俺のは未来予知ってほどではなくて…あくまで相手の行動の予想しかできないんです。」
急に話題を振られたが、阿部は丁寧に答える。
「それで問題ないよ。今回は”それ”が必要になってくるからね。」
「………ぇ?」
その言葉の意味を理解できない3人。
だが、颯馬はこれ以上詳しいことを語らない。
“まだ知らなくていい”
颯馬の沈黙をそう受け取り、探索に戻ることにした。
「そして、目黒くん。君も今回重要な鍵だ。」
探索を続けながら、今度は目黒に話題を振る。
「俺が、向こうから予定外ってことですよね。」
「その通り。向こうは目黒くんと真白の乱入を想定していなかった。」
目黒の発言に颯馬も頷いて続ける。
「昨日捕まえた子が言ってたよね。”5人組”がいたら殺せって…つまり、2人の乱入を想定していない発言だよね。」
「…たしかに…」
「目黒くんにも、今回は頑張ってもらわないとだからね。」
颯馬の真剣な瞳に見つめられる。
「…もちろんです。」
目黒も、同じ覚悟で答えた。
「…あの…俺は…?」
阿部、目黒と役割があって選ばれた2人だが、向井はなぜ自分も同じなのか問いかける。
「向井くんには、”伝言”があるんだ。」
「伝言?」
「そう、伝言。」
颯馬はスマホを向井へ手渡す。
「…久尾雨くんから…?」
向井には、久尾雨からの伝言があった。
颯馬が向井に読むように促す。
向井は、スマホの画面に視線を落とす。
『こーじへ
あん時は、ホンマに悪いことしてしまったな。許して、とまでは言えへん立場やけど、ホンマにごめんな。
こーじは、たしかに強くなっとったんやね。
人に恵まれたんやね。
言い訳になるかもしらんけど、俺、他人と感覚がズレてるんよ。
限度っちゅうもんが分からんくてな…
そのせいで、こーじ傷つけてたんやろ?
こーじが、東京に行くって言い出した理由も俺から逃げるためだったんやろーし…
後悔しても、しきれない。
俺は、こーじと一緒にいるのが楽しかったと思っとる。
それは嘘やない。
せやから、たまには少し話さん?
俺がお願いできることちゃうかもしれんけど、俺はこーじと話がしたい。
返事は、せんでええからな。
気をつけてな。』
久尾雨からのメールは、これで終わっていた。
「…くお…う、くん…」
向井の視界が滲む。
自然と涙が溢れそうになる。
涙脆いがため、このメールを読むことで、久尾雨がどのような思いでこれを書いたかを想像することで、涙がこぼれそうになる。
久尾雨は、自分が向井を傷つけていたことに気づき、しっかり謝罪をしている。
Snow Manと、向井と全力で戦う前の久尾雨なら絶対にありえないことだ。
向井が逃げずに、全力でぶつかったことによって、久尾雨は変わることができた。
鼻をすする向井の背中を阿部がトントンと優しく叩き、目黒は優しく頭にポンポンと手を置く。
「…久尾雨は、ずっと向井くんのことを考えててね。すごい悩みながら、この文章を書いたんだよ。」
颯馬も優しく微笑む。
「……ぅっ…うぅ…ありがとう、ありがとなぁ…」
耐えきれず、向井は泣きながらスマホを胸に抱えて膝を崩した。
コメント
4件
とても面白かったです!毎日楽しみに待ってます!頑張ってください!
第39話、読み終えました。チーム分けの意図や久尾雨くんからの伝言がもう……胸に来すぎました。向井くんがメール読んで膝を崩すところ、阿部くんと目黒くんがそっと支える描写が優しくて泣けます。真白の“勘”の話も気になるし、帽子の色の伏線も含めて、次の展開が待ち遠しいです。
3,266
はれる.
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚