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私は今、錬金術師ギルドの前にひとりで立っていた。
今日はそれぞれ単独行動。
ルークは武器屋に、エミリアさんは大聖堂に、そして私は錬金術師ギルドに……という流れだ。
それぞれ有意義に過ごしてくるだろうから、私もせいぜい有意義に過ごすことにしよう。
「さて、それじゃ入ってみるかな……」
錬金術師ギルドの入口は全部で3つ。
お店フロアの入口、錬金術師用の入口、そして職員用の入口……の3つだ。
昨日はお店フロアの入口に入ったから、今日は錬金術師用の入口から入ってみよう。
大丈夫、鑑定によれば私はしっかり錬金術師。だから、場違いなことは無いはず……!
そんなことを思いながら、緊張しつつ入ってみると……少し奥に、冒険者ギルドと同じような受付があった。
遠くの方には掲示板が見えて、そこにはいろいろな紙がピンで留められているようだった。
恐らくは錬金術の依頼を張り出しているのだろう。
とりあえず、受付に行って案内をしてもらうことにしようかな?
受付には、可愛い女の子の職員さんがちょこんと座っていた。
……うん、話し掛けやすそうで助かる。
「おはようございます、よろしいでしょうか」
「はい、いらっしゃいませ! 今日はどういたしましたか?」
「私は辺境都市クレントスからやってきた錬金術師なのですが、お話を伺わせて頂こうと思いまして」
「わぁ、そんな遠くからいらしたんですね!
錬金術師ギルドはその名の通り、錬金術師の方々をサポートするギルドです。
登録が必要なのですが、王都で活動するなら絶対にお勧めですよ!」
……あ、事務的な対応じゃない!
クレントスのケアリーさん以外はみんな事務的だったから、それだけで心躍るものがある。
「それではお願いしたいです!」
「ありがとうございます!
登録にあたりまして、魔導具によるステータス確認と、年会費と手数料を頂くことになります。
年会費は錬金術師ランクに応じて変わりますので、まずはステータス確認をさせてください」
……おお、懐かしい。
クレントスの冒険者ギルドでもやったけど、それ以来になるかな?
受付の職員さんはステータス確認用の石板を取り出して、カウンターの上に置いた。
「えっと、手を乗せれば良いんでしたっけ?」
「はい、2回目の音がするまで乗せていてくださいね」
「はーい」
ピッ
手を乗せると、石板から音がした。
ピピッ
しばらくしたあと、もう一度音がした。
……と同時に、石板の上の空中に半透明のウィンドウが開いた。
「それでは情報を記録させて頂きます。
えぇっと、『アイナ・バートランド・クリスティア』さん……っと。
職業は『錬金術師』……で、問題ありませんね。
それで錬金術レベルが――」
ガタアアアアアンッ!!
「……へ?」
私の目の前で、唐突に受付の職員さんがのけぞって、椅子ごと後ろに倒れた。
「ちょ……だ、大丈夫ですか!?」
私もカウンター越しに心配するが、その音を聞いた他の職員さんも様子を見にやってくる。
「おい、テレーゼ。大丈夫か?」
「……はっ! 主任!」
「どうした、突然ぶっ倒れて」
「あわわ、すいません……!
こちらの方の錬金術レベルが高くて、思わず意識がぶっ飛んでしまいました!」
「お前なぁ……。
いくら高いっていっても、倒れるほどのものじゃ――
……は?」
テレーゼさんの言葉を受けて、主任と呼ばれた男性がウィンドウを覗き込むと、そこでまた言葉を失っていた。
あれ? ユニークスキル『情報秘匿』を使って、錬金術のレベルは14にしていなかったっけ……?
「レベル51、だって……!? え、この子が……?」
……あ、そういえばどこかのタイミングで、14から51にしていたんだった。
驚いているところ申し訳ないけど、本当は99だよ! ……なんて、さすがにそれは言えないけど。
「すいません、何か不都合ありますか?」
「え、あ……いや、申し訳ない!
錬金術レベル51なんて、才能ある錬金術師が一生を賭けて辿り着くレベルだから……少し驚いてしまった」
「しかもまだ17才でだなんて……。
アイナさん、私と友達になってください!」
「こら、テレーゼ! 公私混同はダメだぞ!」
「とほー」
レベル51っていうのも自重したつもりだったんだけど、やっぱりそれでも高いんだね。
でも一般に流通している以上のアイテムを作ってきたし、見せかけとしてはそれくらいがちょうど良いかもしれない。
「まだ勉強中の身ではありますが、ぜひ錬金術師ギルドで活動をしていきたいな、と思いまして」
「おお! おお! それはとても助かる!
ここにはいろいろな依頼や相談が持ち込まれるからな。えぇっと……アイナさん、と言ったか。これからよろしく頼むぞ!
俺の名前はダグラス・アラン・オールディスだ。覚えていてくれると嬉しい」
「私はテレーゼ・ブレア・アップルヤードです!
とりあえず住所を教えてください!!」
「こら、テレーゼ! 公私混同はダメだって!」
「ひぃぃんっ」
うーん? 錬金術師ギルドって、もっと知的なイメージがあったんだけど……何だか愉快な人たちだなぁ。
いや、他の職員さんたちは違うよね? 変なノリなのは、この二人だけだよね……?
「えぇっと、私はアイナ・バートランド・クリスティアです。
今後ともよろしくお願いします」
「よし、テレーゼ。さっさと登録するぞ、俺も手伝う!」
「なんと! いつもは仕事を人に丸投げの主任がそんなやる気を!?」
「ばっか! せっかくの逸材だぞ!? 逃げられる前に登録しちまうんだよ!!」
「そ、そうですね! かしこまりです!!」
あのー。本人が目の前にいますよー?
今の会話、少しぶっちゃけ過ぎじゃないですかー?
「テレーゼは書類をよろしくな! 俺はアイナさんに、色々と確認をさせてもらうから!
よし、アイナさん。錬金術レベルが51ということなんだが、専門は何かな?」
「専門、と言いますと?」
「え? ファーマシー錬金とか、マテリアル錬金とか、アーティファクト錬金とか、ホムンクルス錬金とか――」
おぉ? アーティファクト錬金は知ってるけど、他のは全部初耳だ!
ファーマシー錬金は……薬関係かな? これはポーションとかそこら辺の分野だよね?
マテリアル錬金は……鉱物関係かな? ダイアモンド原石は作ったことがあるけど、それで合ってる?
アーティファクト錬金は……アクセサリとかのやつだね。
ホムンクルス錬金は……え? それもあるの? これって人工生命を作るっていう……。え? 本当にあるの?
「……そういう括りですと、ファーマシー錬金とアーティファクト錬金が多いですね。
マテリアル錬金も少しばかり……? ホムンクルス錬金はやったことがないです」
「なるほど、冒険者に寄っている感じか。
ところで今までで、何か作ったものは持っているか? 別の日でも構わないんだが、実物を見せて欲しいんだ」
「そうですね、どうしようかな……」
そう言いながら適当に、アイテムボックスから作ったものを出してみることにした。
高級ポーションと歩行障害(小)治癒ポーションあたりで良いだろう。
「お、アイテムボックスまで持ってるのか。
この薬は……ポーションか。テレーゼ、鑑定を頼む」
「はい、喜んで!」
そう言いながらテレーゼさんは瓶をひとつ取って、石板の上に乗せた。
石板から音が鳴ってしばらくすると――
ガタアアアアアンッ!!
テレーゼさんが、また椅子ごと豪快に後ろに倒れた。
「おい! またかよ!」
ダグラスさんのツッコミも当然のことである。
「しゅしゅしゅ、主任! だってこれ!」
テレーゼさんは鑑定のウィンドウを指差して慌てている。
「おほぉ……、これは……」
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【高級ポーション(S+級)】
HP回復(大)
※追加効果:HP回復×2.0
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「しれっと突然、S+級なんて出されたら驚きますよね!?」
「あ、ああ……そうだな……。
ちなみにもうひとつも、鑑定を頼む」
「はい! 心して!」
そう言いながらテレーゼさんは、瓶をひとつ取って石板の上に乗せた。
石板から音が鳴ってしばらくすると――
ガタアアアアアンッ!!
「またかよ!!」
「……だ、だってぇ~……」
テレーゼさんは起き上がりながら、鑑定のウィンドウを指差した。
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【歩行障害(小)治癒ポーション(S+級)】
歩行障害(小)以下を永続的に治癒するポーション
※追加効果:筋力回復(中)
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「……何だ、これ……?」
「こんな薬……、あるんですね……?
私、初めてみましたよ、こんなの……」
「俺も、こんなピンポイントな薬は初めてだわなぁ……。
ついでにこれも、S+級だし……」
……私のポーションは、錬金術の本拠地でもこんな扱いである。
いやぁ、私の錬金術は無敵だね……。