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ワイルドウルフ討伐から数日が経ち、いつも通り冒険者ギルドに向かうと驚くことがいくつかあった。
なんと「王立フューチャー学園」から推薦状が届いていたのだ。
その事に驚いた俺がマリナさんに事情を確認すると、ギルド長が俺のことを紹介をしてくれた、との事だった。
そして、この前一緒に依頼をしたカインさんは学園の教師だった。
それを聞きさらに驚いた。しかし、ギルド長の紹介を受け俺を試しに来たのだと、カインさんの言動に納得できた。
そして今、紹介をしてくれたギルド長にお礼を言うべく、ギルド長室にいる。
「まずは自己紹介からだね。私はクロスフォード支部冒険者ギルドの長をしているノールト言う」
「初めまして、冒険者をしているアルトと言います。この度は王立フューチャー学園への紹介していただきありがとうございました」
「いやいや、私は紹介しただけ。その権利を得たのは君の実力、私はその切っ掛けを作っただけに過ぎないがね」
ノールトさんは俺にそう言ったが、切っ掛けをくれただけでも感謝しかない。
正直言ってしまえば俺は「王立フューチャー学園」を受験しても絶対合格出来るという自信はなかった。
「王立フューチャー学園」への推薦をもらえた結果、志望すれば入学できるようになった。
「それでもです。切っ掛けを下さらなければ推薦すらありませんでした」
「君は謙虚なのだね。それは君の美徳なのだろう。大切にするといいかね。……さて、ここに呼んだ理由だが、君に推薦を受けるかどうか、そして謝罪を兼ねて呼ばせてもらったがね」
「謝罪ですか?」
何か俺に謝罪することがあるのだろうか?
俺は黙ってノールドさんの話を聞く。
「出来るだけアルト君の安全は配慮していた。でも審査のためとは言え、君を危険に依頼を受けさせてしまった。この件は謝罪せねばならないかね。すまなかった」
「!?頭を上げてください。確かに危険はあったと思います。しかし安全は考慮して頂いていましたし、俺自身も良い経験ができました」
ギルド長は謝罪を言ったあと、その場で頭を下げた。
俺はすぐに辞めるように言って俺自身の今回の件の考えを話す。
するとノールドさんは俺の言葉を聞いた後頭を上げて笑った。
「そう言ってくれると助かるかね。……さて、君がそう言ってくれていることだし、推薦の話をしよう。この件はアルト君はどうするかね?」
ノールドさんは真剣な表情で聞いてきた。
答えは決まっている。
今までそれを目標に努力してきたんだ。
「はい。お受けしたいと思います。俺はもともと合格のために努力をしてきました。そのチャンスがあるんですから」
「そうか。安心したかね」
俺の言葉にノールトさんは案したように表情が緩めた。
そして、ふと何か気になったのか俺に質問をしてくる。
「これは興味本位の質問なのだが、君は短期間でCランクまで上がりかたは異常だがね。差し支えなければどうやって実力を身につけたのか教えてもらえないかね?」
ノールトさんの質問に俺は聞かれてもしょうがないと思った。
確かに疑問に思うのはしょうがない。
推薦の件もあるしお世話になった。
でも理由を説明するには身バレしきゃいけないが、この人には隠し事はしたくない。
俺はそう思い、教えることにした。
「そうですね……これはあまり広めてほしくないのですが、ノールトさんにはお世話になりましたし、お教えします」
俺の言葉にノールトさんは真剣な表情をする。
前置きが大袈裟過ぎたかなと思いつつも話を続ける。
「冒険者登録では家名を言わず、名前のみで登録しました。俺の名前はアルト=クロスフォード。クロスフォード子爵家の嫡男です」
「?!」
俺の身バレした瞬間ノールトさんは驚いた。
でも、それを覚悟で話した。
これで変わった態度を取られても嫌なので、すぐに話を続ける。
「俺が貴族だったとしても、今までと同じ態度でお願いします。いきなり態度を変えられるのが嫌で隠していましたので」
「………そうか。わかったかね。それにしても子爵様の息子さんだったとは……でもそれなら実力があるのに納得だがね」
どうやら態度は変えずに接してくれるらしい。
貴族と身バレして変わらずに接してくれる人は少ない為ありがたい。
とは言ってもクーインとノールトさんくらいだが……俺って知り合い少ないな。
学園入ったら友達作ろう!!
「まぁ、驚いた事もあったがこれで要件は終了したかね。後は学園の試験についてだが、この推薦状と一緒に冒険者証を受付に渡せば良い。ただもしも紛失した場合は推薦取り消しの可能性もあるかね。絶対に紛失せずに保管しておくかね!」
「は、はい!わかりました。気をつけます」
ノールトさんは推薦状についての注意点を教えてきた。
しかも真に迫ってくるように。
正直怖かったが、それだけ大切だという事なのだろう。
俺はすぐに返事をした。
「ならいいかね。今日はこれから依頼を受けるかね?」
「いや、今日は帰ります。こんな大切なものを頂いたので、両親たちに報告もしたいですから」
「そうするといいかね。もしもこのまま依頼を受けると言っていたら無理矢理にでも帰していたかね。ならさっさと周りに注意し続けて気をつけて帰るかね。わかったかね?」
「……はい。帰ります」
「うむ!」
どれだけ念押しするんだよ、過保護かよ。
ここまで来ると恐怖すら感じるわ!
とりあえず俺はここにいるのはまずいと思い、ノールドさんと部屋の外で受付をしているマリエさんに挨拶をして帰宅をした。
そして帰宅後すぐに両親とゼフに報告した。
そうした結果
「あぁ……我が子は天才だ!クロスフォード家は安泰だな!」
「あなた、今日はお祝いよ!!」
「アルト様……」
父上、母上、ゼフがそれぞれ変わった反応を見せた。
父上と母上は普通の反応だが、ゼフに限っては膝をついて泣いていた。
大袈裟過ぎだろ。
それに父上……俺が天才ならこの世界天才しかいませんよ。
色々と突っ込みたいことがあるが、心から祝ってくれたことがわかった。
こうして俺の「王立フューチャー学園」への合格が確定したのだった。