テラーノベル
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俺が西谷の魂を取ると、グリムがいきなり姿を現した。
グリムは俺から西谷の魂を受け取ると
「うわぁあ、ネトネトして汚ねぇ」
と意地悪く笑う。
俺が黙っていると、グリムは俺を見て言った。
「魂の外側は汚いけど、研磨されてから紗羅に使われるよ」
「え?」
俺が驚くと、グリムは少し困ったように笑った。
「なんだ。紗羅にそのまま使われると、心配していたワケじゃなかったんだ」
「あ、そうだったんだ」
薄い反応でボソっと答える俺に、グリムは不思議そうな顔をして首を傾げた。
「樹は、なんでそんな顔をしている?」
「え? そんな顔って……俺、なんか変な顔している?」
グリムが無言で頷く。
——俺の表情の変化を、よく見ているんだな。
グリムの洞察力に少し驚いたが、俺はチラッと横目で西谷を見た。
魂を取られた西谷は、俺を見ることなく円卓の料理を両手でわしづかみして、ひたすら食い続けている。
いや、食い続けてるというより、食い散らかしていると言った方がいいぐらい、とにかく暴食しているのだ。
「こいつ、このまま食い続けてるけど……まさか、ここで……」
「だとしても、樹は気にしなくていいよ」
グリムは表情を変えずに言った。
「え?でも、このまま死んだら、店に迷惑をかけるだろ?」
心配する俺を、グリムは目を見開いて見たが、
「変なことを気にするんだね」
と呆れたように言う。
「いや、だって、俺の家もパン屋だろ。客のトラブルって困る……」
「羅象飯店は大丈夫」
「え?」
「……個室だから、なんとかするはずだよ」
そう言ってからグリムは、丸囲いの中に赤文字で[韓]と書かれた壁を押した。
韓の文字が真っ二つに分かれて、壁が扉になって開いていく。
開かれたその先は——
「え?ここって……」
俺の無意識で構造されている巨大図書室だった。
図書室の青空から差し込む光は同じなのだが、何故か空気が冷んやりしている。
静寂が増した気がするのは、気のせいだろうか?
グリムは本棚から一冊の人名本を取り出し、俺に差し出した。
「これは……」
俺はグリムの顔を見た。
グリムは俺がほんの少し前に見ていた表情とは違う、冷酷な死神の表情に変わっていた。
そして、冷ややかな低い声で
「蒲生哲也——怠惰の罪を見極めろ」
と、言った。
———蒲生哲也は大学の講義を終えて、大学の門を出た。
大学の門の近くにいた二人組の男が、待ち構えていたのだろう。
蒲生哲也に近づき、声をかける。
「蒲生哲也さんですか」
「え?はい、そうですけど……」
蒲生は驚きながら二人を繁々と見た。
一人は40代ぐらいで、もう一人は20代後半ぐらいだが、二人とも眼光が鋭く、只者じゃないと蒲生は思った。
40代ぐらいの男が手帳を開き、
「少しお話しを聞かせてもらえませんか?」
金色の記章をみせた。
「……あ、あの警察の方が、何の用ですか?」
蒲生は少し怯えながら聞く。
「今、我々は蒲生さんの担任だった清水正高さん、彼の聞き取りをしているんですよ」
「清水先生の……ことですか?」
刑事の柔らかい口調に、蒲生は少し緊張が解けていたのだが……
「清水さんが、亡くなったのはご存知ですか?」
「え?」
また緊張で身体を強張らせて、蒲生は首を横に振る。
「知りません!今、初めて聞きました」
「そうですか……」
刑事は少し目を伏せると、もう一人の若い刑事が蒲生に言う。
「じゃあ、梶原樹のことは知っていますよね?」
「え?」
「おいっ、先走るな!」
若い刑事を諫めた刑事は、蒲生の顔を見る。
「清水正高さんは、先日校舎から飛び降りまして……」
「——ッ!」
目を見開く蒲生に、刑事は淡々と語る。
「亡くなる前に『梶原樹に殺される』と言ったのですが、梶原樹さんのことも詳しく聞かせてもらえませんか?」
蒲生は首を何度も横に振り、後退りした。
「し、知りません。梶原とは、アイツが学校を辞めてから会ってもないし、僕は何も知りません」
そんな蒲生に対して、刑事は深くため息をついた。
「他のご友人も、梶原樹さんと交流はないのですか?」
刑事の探るように見る視線に、蒲生は耐えきれず
「知りません!何も、知らないです!僕に聞かないでください」
声を荒げてた。
「何も知らないので、失礼します」
立ち去ろうとする蒲生に、若い刑事が言った。
「小学校の同級生だったんでしょ?」
その一言に、蒲生はキッと若い刑事を睨み、
「そうでしたが、今は全く関係ありません!」
強く言い放って、足早に歩き出した。
——なんなんだ! 一体!
清水が死んだ?
そんなの知らねーよ!
梶原に殺されるって言ってた?
だからと言って、なんで俺に聞きに来るんだよ!
蒲生は真っ青な顔で、小走りで一人暮らしのアパートに向かった。
梶原……樹が、清水を……?
ありえない!
蒲生は何度も首を、横に振った。
震える手でスマホを取り出し、連絡先をタップする。
見つけた連絡先——西谷順。
何かがわかるかもしれないと、この時の蒲生は縋る思いで、西谷に電話をかけた。
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