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るるくらげ
いと
#和風ファンタジー
蒲生が電話をかけると、西谷は呑気にコラボ配信をしようと言ってきた。
もしかして西谷は何も知らないのかも——
そう思ったのは、清水の名前を聞いた西谷が、同窓会をするのかと言ってきたからだ。
蒲生は意を決するように、清水が死んだこと、そして自分のところに警察が来たことを話した。
すると西谷が驚くことを言った。
「いやいや、おかしいだろ?だって、梶原って今、意識不明だろ?」
「え?」
——梶原……樹が、意識不明?
「だってさ、あいつ……事故で頭ぶつけて死にかけてるって、溝口が言ってたよ」
「梶原が意識不明って、なんで溝口が知っているんだよ?」
蒲生は驚きを隠せなかったが、西谷は
「梶原、アイツ一年遅れで大学に入ってから、女が出来たらしい。で、たまたま溝口が、あいつの女と知り合ったんだけど、梶原の泣き叫ぶ顔を見たいって。それで女を寝とったんだよ」
下品な笑い声をあげて話を続ける。
「その後すぐに梶原が事故ったって、その上に意識不明って、溝口が女から聞いたらしい。
女を取られて、死にかけって、梶原はとことん不幸だよなぁ」
——梶原……樹、大学に進学していたんだ。
蒲生は思い出す。
小学生の頃、一緒にゲームをしていた樹が
「宇宙とか、凄いよね?そういうのを勉強するって、ゲームのルールブックを読むみたいなんだって」
笑って言った。
樹は物理学を学ぼうとしていた。
あれから大学に行って、彼女が出来て、樹は前向きになっていたのか……?
それをまた溝口が壊して、今は事故で意識不明?
スマホを持ったまま、蒲生は愕然としていた。
だが、スマホから西谷が
「お前……梶原?」
と言った声に、ハッとした。
「お前、意識不明だったんじゃ……それに、なんだその格好……」
西谷の声が聞こえてきたが、他の声は聞こえない。
ただ西谷が何か言っているが、独り言のようにぶつぶつ言っている。
「西谷?」
西谷の返答はなく、次第に声も遠くなって聞き取りにくい。
「西谷!……おい、どうした?梶原って……」
全く返答がない西谷。
どうなってるのか?
そして西谷との通話が切れた。
西谷にもう一度電話をしたが、電話は繋がらなかった。
焦燥感に駆られながら、蒲生がアパートに戻るとポストの中に、宅配の不在通知が入ってた。
宅配物は実家からだった。
——食べ物かな?
何を送ってきたのか、見当がつかない蒲生は実家に電話をした。
電話に出た母親に、蒲生は聞いた。
「なんか宅配を送ってくれたみたいだけど、何を送ってくれた?」
「え?この前に帰ってきた時、持って帰るのを忘れたから送ってって、言ったじゃないの」
「そんなこと、言ったっけ?」
「言ったわよ。ほら、昔のゲームソフト?あれを持って帰るのを忘れたって、送って欲しいと言ったでしよ」
「あー、そんなこと言ったような気がする」
「言ったわよ。箱に入れてるからって言ってたのは、全部送ったから」
「そうか、ありがとう」
蒲生はそんなこと頼んだのだろうかと、曖昧な記憶だった。
親がそういうなら、そうなんだろうと思い電話を切ろうとした時だった。
「あのね、哲也……」
急に母親が暗い声を出した。
「樹くん……事故に遭って今、意識不明なんだって」
母親に言われて、蒲生は言葉を詰まらせた。
「お姉ちゃんの紗羅ちゃんも、一緒の事故に遭って意識不明なの……」
「え?」
蒲生は驚きの声を上げた。
「樹くんのお見舞いに……」
「行けるわけないだろっ!」
声を荒げた蒲生は、慌てて電話を切った。
電話を切った後も、蒲生の心はさらに焦燥感が高まり、じっとしていられない気持ちになった。
だが蒲生の手には、宅配の不在通知の紙がある。
不在通知の紙を見つめた蒲生は、とりあえず宅配の再配達を依頼することにした。
幸いにも宅配が、今日中に届くようだ。
宅配を待つ間は、家から出ることが出来ない。
——仕方がない。
それまでの間、ゲームをして時間を潰しことにした。
だが、パソコンを起動させて、ゲーム実況の配信でもしようと思ったが、どうしても気が乗らない。
配信はやめて、オンラインでゲームだけをすることにした。
オンラインゲームでは、常連のメンバーが何人かいて、そのうちの一人と親しくなった。
ハンドルネームはジュート。
チャット会話だけの相手だったが、蒲生はジュートとゲームをしているのが楽しかった。
だが、ジュートは急に現れなくなった。
現れなくなった理由、蒲生はわかっていた。
ジュートと親しくなるにつれて蒲生は、気を許し過ぎてしまっていた。
気を許し過ぎたせいで、蒲生はいじめを受けてた昔の友人を助けなかったと、ジュートに話してしまったのだ。
話した日を境に、ジュートは現れなくなった。
今日もジュートは現れない。
——やっぱり、話さなればよかった。
悔やむ気持ちが強くなった蒲生は、ゲームをする気分が失せてしまった。
ゲームをやめてしまった蒲生は、考えないようにしようと思った時だった。
インターフォンの音が、鳴り響いた。
インターフォンのモニターを見ると、宅配員の男の姿が映っている。
思ったより早く再配達されたと思いながら、蒲生はドアを開けた。
宅配員の顔も見ずに、蒲生は宅配の箱を受け取った。
宅配員が、
「サインを頂けますか」
と渡してきた受領書にサインをして、返すそうとした時に男の顔を見た。
「ひっ!」
宅配員の顔は——黒いフードを被った梶原樹の顔。
荷物を落として後退りをした蒲生だったが……
「だ、大丈夫ですか?」
と言って宅配の箱を拾って、蒲生に手渡そうとしたのは梶原樹の顔ではなかった。
インターフォンモニターに映っていた、宅配員の顔だ。
「え?あ、はい。大丈夫です」
平静を装って、蒲生は宅配の箱を受け取ってから、慌ててドアを閉めた。
——何故、アイツ……樹の顔に見えたんだ?
蒲生は動揺のあまり、自分の心拍が異常なほど早くなっていることに気づく。
——落ち着け。梶原は……樹は意識不明なんだ。母さんも言ってた。
西谷が梶原の名前を出していたが、あれは俺が清水の話をしたからだ。
だから西谷は、梶原の名前を言っただけ。
電話が聞こえなくなったのも、そうだ!あれだ!
西谷が配信に没頭したからだ!
蒲生は自分が気にしすぎで、変な事を考えようとしているだけだと思った。
この動揺は、悪く考えないようにすればいいと、理由をつけて自分を落ち着かせようとした。
そして宅配の箱を見て
——そうだ!中のゲームをすれば気分も変わるだろう。
箱を開けて、中を見ると……
「うわぁぁああ!」
蒲生は絶叫した。
中には小学生の時に遊んだゲームソフト。
そして転校した時にクラスメイトから貰った色紙。
色紙に一番大きく書かれた文字。
【はなれてもおれたちは親友だ 梶原樹】
蒲生は半狂乱になっていた。
呼吸をハァハァと荒げながら、ビニールの大袋にゲームソフト、色紙を詰め込みビニール袋の端を縛った。
——全部、捨ててやる!
そう思った時だった。
蒲生の背後から
「相変わらず、見て見ぬふりをするんだな」
と声がした。
目を見開いた蒲生。
恐る恐る振り返ると……
黒いフードマントと鎌を持った男——梶原樹が立っていた。
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