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蘇枋視点
今日は、朝から妙に落ち着かなかった。
理由は分からない。
ただ、胸の奥がざわざわする。
蘇枋「……なんだろう、これ」
自分に問いかけても、答えは返ってこない。
俺はいつも通り笑って、教室を出た。
その日の放課後。
俺たちは、少し離れた場所で起きた騒ぎの様子を見に行くことになった。
大したことではない。
そう思っていた。
少なくとも、その時までは。
楡井「蘇枋さん、桜さん、あっち!!」
桜「……!!」
蘇枋「分かった」
路地を抜ける。
少し先で、人の声が聞こえていた。
その瞬間。
鼻をつくような匂いがした。
蘇枋「……」
焦げた匂い。
足が止まる。
楡井「蘇枋さん?」
蘇枋「……うん」
返事をした。
でも、自分でも分かる。
声が少し震えていた。
視線の先。
建物の一部から、煙が上がっている。
その向こうに――
赤い炎が見えた。
蘇枋「……っ」
息が止まった。
炎。
赤。
煙。
熱気。
全部が、一瞬で昔の記憶と重なった。
蘇枋「……違う」
ここじゃない。
俺が知っている場所じゃない。
そう頭では分かっている。
なのに。
身体が動かない。
「蘇枋さん!!」
「蘇枋!!」
誰かが俺の名前を呼んだ。
聞こえている。
でも、遠い。
耳の奥で別の音が響いていた。
――ぱちぱち。
何かが燃える音。
――ごうっ。
熱い。
熱い。
蘇枋「……っ」
右目が痛む。
眼帯の上から押さえる。
すると。
記憶の中に、何かが浮かんだ。
小さな俺。
煙の中。
息が苦しい。
前がよく見えない。
誰かがいる。
「……待って」
俺の声だ。
小さい。
今よりずっと幼い。
「待って……!」
手を伸ばす。
その先に――
誰かの背中。
「お願い……」
行かないで。
そう言いたかった。
でも。
その言葉は、声にならなかった。
楡井「蘇枋さん!!」
桜「蘇枋!!」
蘇枋「……!!」
肩を掴まれた。
俺は勢いよく振り返る。
蘇枋「……あ」
目の前に、仲間がいる。
煙も。
炎も。
あの場所じゃない。
今いるのは、現在だ。
楡井「……大丈夫っすか?」
1,432
どっかの誰かさん。
154
ℝ𝕒𝕟
79
蘇枋「……うん」
笑おうとする。
いつものように。
蘇枋「大丈夫だよ」
けれど。
今度は、うまく笑えなかった。
桜「……蘇枋」
蘇枋「平気」
桜「でも――」
蘇枋「本当に大丈夫だから」
自分でも驚くくらい、強い声が出た。
2人が黙る。
俺は視線を逸らした。
蘇枋「……ごめん」
少しだけ息を吐く。
桜「…………」
楡井「ちょっと、びっくりしただけっすよ」
その後。
騒ぎが落ち着いてからも、俺の右目の痛みは消えなかった。
帰り道。
俺は一人で歩いていた。
蘇枋「……」
夕方の街は、いつも通りだった。
なのに。
頭の中だけは、ずっとあの日のままだ。
――待って。
――お願い。
――行かないで。
蘇枋「……」
足を止める。
俺は眼帯に触れた。
蘇枋「……誰だったんだろう」
あの背中。
あの声。
あの場所。
何度思い出そうとしても、最後だけが抜け落ちている。
でも。
今日は一つだけ、分かったことがあった。
俺は、あの日。
誰かを呼んでいた。
そして。
その人が――
俺のところに戻ってこなかった。
「……」
胸の奥が、きゅっと締まる。
どうして?
何があった?
俺は何を見た?
そして――
どうして俺は、一人だったんだろう。
蘇枋「……分からないな」
小さく笑う。
でも、その笑顔は自分でも分かるくらい弱かった。
俺は空を見上げた。
夕焼けが、赤く染まっている。
その色を見つめながら、俺は静かに呟いた。
蘇枋「……もう、思い出さなくてもいいのかな」
答える人はいない。
ただ。
右目の奥だけが、まだ痛かった。
また切り悪くてすみません。
多分この話12話位になって、少し長いですが、最後まで見ていただけると嬉しいです!!
話変わりますが、今私親と喧嘩してて、めちゃ家に居るの気まずいんですよ。私の部屋2階で、1階で今親が私のこと言ってて、ばり気まずいです( ੭´꒳` )あえて聞こえるよう言ってたら性格悪すぎだろって感じですw
最後まで読んで下さりありがとうございました!!
では안녕!!
コメント
1件
蘇枋視点エピソード、拝読しました。朝のざわつきから始まり、炎と煙で蘇る過去の記憶——眼帯を押さえる右手、遠くで呼ぶ声、幼い自分が手を伸ばす場面。最後に「あの人は戻ってこなかった」という気づきがとても切ないです。右目の痛みが物理的なフラッシュバックとして描写されているのが生々しくて……。過去の断片がどう繋がるのか、次が気になります。12話までとのこと、しっかり追いかけます! 家の空気が気まずい中でも物語を届けてくれてありがとうございます。お互い、なんとか乗り切りましょう……。