テラーノベル
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カーテンの隙間から刺す日差しが頬を照り付けた。目をこすりぼやけた視界からは、やけに違和感を感じた。
「…?」
知らない天井・知らない家具・静まり返った空間。
即座に異変に気付いた宏斗は、ベットから飛び降りて脳裏にまで響く鼓動を抑える。
「ここ…どこだよ…」
夢を見ているのか?それにしても感触も視界も鮮明であまりにも夢とは思えないリアルさだった。
ふと、自分の服装に目がいった。
「……え?」
見たこともないブレザー。漫画でしか見たことない真っ白なジャケットに、胸元には、やたらキラキラした校章。
(こんな制服、泉桜にあったか?)
いや、絶対にない。
宏斗は慌てて部屋を飛び出し、玄関の扉を開けた。
外に広がっていたのは―、見覚えのない街並みだった。
やけに色彩が鮮やかで、空気が澄みすぎている。
(……なんだよこれ)
とにかくどこかへ行けば何か分かるかもしれない。
そう思い、宏斗は走り出し角を曲がった、その瞬間。
「きゃっ!」
「うわっ!」
パンを咥えた女の子と、高身長のイケメンが真正面からぶつかった。
少女はスローモーションのように転びかけ、男は慌てて腕を伸ばして支える。
「っぶね…大丈夫――?」
「だだだだだだ!大丈夫です!」
男の背後で、なぜか花びらが舞った。
どこからともなくキラキラのエフェクトまで飛んでくる。
宏斗は固まった。
(……いやいやいやいや、待て。パン咥えて走ってる女子って……
これ、少女漫画の“あれ”じゃん……!)
一旦落ち着け。
宏斗は自分の頬を思い切り殴った。
「っい……!」
ジンジンと痛む頬を押さえながら、深呼吸する。
これは夢だ。そうに決まってる。
顔を上げた瞬間、またあの二人が視界に入り、少女は頬を赤くしイケメンを見上げて固まっていた。
男は風に前髪を揺らしながら、優しく微笑んだ。
その瞬間――背景に薔薇が咲いた。
(……いやいやいやいや待て待て待て!それにしてもベタ過ぎだろ!)
これは夢…いくらなんでも背後にバラが咲くことなんてないだろ。
よし、もう一発殴っておこう。___ゲシッ
_____________
“キーンコーンカーンコーン”
聞きなじみのないチャイムが鳴り響く。
____目が覚めてから数時間が経った。
そして、この数時間で分かったことがいくつかある。
一つ。知らない世界に飛ばされてしまったこと。
二つ。この世界が、少女漫画そのものだということ。
そして三つ目――これは夢じゃない。
“ガタン…”
席を立ち拳を握りしめた。
普通の人間なら、この状況をどう思うのだろうか…。
きっと、元の世界へ戻れる方法を探したり、この状況を理解することに精一杯になるだろう。
____しかし、この男は違った。
「俺…ついにヒーロー様になれるんじゃね…?」
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