テラーノベル
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日帝は逃げることを決心した。
食事の時間、照明の切り替わる間隔、ナチスが部屋を離れるわずかな隙。
すべてを数日かけて観察し、成功率を計算した結果だった。
――いける。
感情は排除した。
これは生存と自由の問題だ。
その夜、ナチスが今日の予定を確認しに部屋を出た瞬間、日帝は動いた。
鍵の構造は把握している。解除にかかる時間も想定内。
廊下に出たとき、心拍数は上がらなかった。
冷静だった。自分でも気味が悪いと感じるほど。
角を曲がり、非常用通路に向かう。
――あと少し。
その時だった。
「日帝」
背後から、静かな声。
振り返るより早く、照明が落ちる。
足音は一つだけ。慌てていない。
その声主はナチスだった。
「……計算は合っていたか?」
責める口調ではない。
むしろ、残念そうですらある。
しくじった。そう思った瞬間に日帝の意識は暗闇の中に落ちた。
目が覚めたら日帝はベッドに寝かせられていた。
「やっと起きたのか。」
日帝は諦めてナチスに質問をした。
「お前は、外にいたはずだ」
「お前がいなくなる可能性を考慮しないほど、俺は甘くない」
ナチスは近づき、日帝の手首を掴む。
乱暴ではないが、外れない力。
「どうしてだ」
日帝の声は落ち着いている。
「俺は、お前の管理下にいるだけでよかったはずだ」
ナチスの表情が、ゆっくりと歪んだ。
「……だから、だ」
一瞬、強く引き寄せられる。
抵抗する前に、額が触れるほど近くなる。
「俺は“足りなかった”」
ナチスの声は低く、静かだった。
「お前に選択肢を残していた。 希望を持たせていた。 それが間違いだった」
日帝は理解してしまった。
これは叱責じゃない。ナチスの自分自身の反省だ。
部屋に戻された後、環境は明確に変わった。
ドアは二重。
照明は外部操作。
そして日帝の足首には足枷がついていた。完全に動けないわけでは無いがこの部屋から出れるほどではない。
「……過剰だ」
日帝は冷静に告げる。
ナチスは首を横に振った。
「必要な配慮だ」
椅子の前に膝をつき、視線を合わせる。
「お前は賢すぎる。
だから、自由があると無理をする」
手が、日帝の頬に触れる。
優しい。拒めないほどに。
「もう、逃げる計算をしなくていい」
それは慰めの言葉だった。
「考える必要もない。
選択する必要もない」
ナチスは微笑む。
「俺が全部、先回りして無くしてやる」
日帝は初めて、目を伏せた。
逃げようとした結果、
自由は減り、管理は増え、
それでもナチスの態度だけは、以前より柔らかくなっている。日帝のことを甘く溶かすように。
―それが、何よりも不気味だった。
「……お前は、俺を壊す気なのか?」
ナチスは即答しなかった。
少し考え、それから言う。
「壊さない」
額に口づけるほどの距離で。
「完成させる」
逃走未遂は完全に失敗に終わった。
そして同時に、
日帝から逃げるという1つの選択肢が失われた。
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尊タヒするて