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羽海汐遠
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職業別おすすめ
面談室は、
静かすぎる。
机を挟んで、
端末がひとつ置かれている。
椅子に浅く腰かけ、
背筋を伸ばす。
モカ色のジャケットは肩で止まり、
袖口は少し擦れている。
ズボンは折り目が残ったまま、
靴の先は揃えて置かれている。
髪は整えてきたが、
額の端に癖が出ている。
画面が点く。
職種。
業務内容。
推奨。
いくつかの言葉が、
当然のように並ぶ。
沈黙。
調整力。
持続。
使わない理由はありますか、
と問われる。
声は穏やかだ。
圧もない。
ただ、
待っている。
説明する側になると、
言葉が重くなる。
個人の選択。
自分のやり方。
そう言いかけて、
止まる。
理由は、
ある。
だが、
言葉にすると弱い。
一覧の横で、
推奨の表示が点滅する。
周囲は、
ほとんど付けている。
付けていないほうが、
珍しい。
頷けば、
話は早い。
触れれば、
終わる。
断るには、
理由が要る。
選ばないという選択に、
説明が求められる。
端末を見つめたまま、
視線を上げない。
モカ色の袖口を、
指でなぞる。
仕事に必要な言葉と、
自分の中に残したい言葉が、
少しだけずれている。
それを、
どう説明するか。
面談室は、
まだ静かだ。
次の言葉を待つように、
端末の光が、
消えずにいる。
コメント
1件
うわあ、これは刺さる…😭✨ 静かな面談室の空気感がひしひし伝わってきて、読んでるこっちまで息を詰めてしまったよ。特に「仕事に必要な言葉と、自分の中に残したい言葉が、少しだけずれている」ってところ、すごく響いた。周りが当たり前のように付けてるものに、自分だけ違和感を覚えて選べないもどかしさ、すごく分かるなあ…。推奨を断る理由を求められる社会のプレッシャー、上手く言葉にできない主人公の心情が細かい描写から伝わってきて、考えさせられる回だったよ📖💕