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白山小梅
白山小梅
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折角追い出したのに、柊はあたしの脳内にすぐはいりこむ。入るだけならいい、あたしの思考回路を占領してしまうから、確かに柊はタチが悪い。
「いやほんとに、なにしてんのよ」
「だから、忘れ物」
ん、と柊はスマホを傾ける。ほんとうに、それだけを理由にこの場に居るらしい。あたしもスマホを取り出すと、連絡先を更新させる。
「なんて登録すればいい?” 絶世の美少女? “」
「なんで疑問形なわけ?あたしは柊のこと” 巨乳好き “にするからね」
「それもなんでだよ。てか、胸は大きさじゃなくて形と色と触り心地じゃね。お椀型のやわらかおっぱいさいこうじゃん」
へー、説得力ゼロだよ。しかも、胸のことを力説しているあたり、どうやら胸派の男らしい。
二人で並んで歩きながら、真新しい連絡先に ” 柊 碧音 “の名前を大切に登録する。
……ていうか、あたしの目の前でエミちゃんに連絡はほぼ返さないって言いながら、ちゃっかり連絡先交換させる男もどうかしてる。
嘘だよ。嬉しい。忘れ物なんだって、普通に嬉しい。
いつ気づいてくれたんだろ。あの日、一限の途中で?それとも、今日、あたしと会ってから?
「つか、飲み会って飲んだ気しねえから、飲み直さね?」
「はあ?どこで」
「もちろん柴崎ん家」
「図々しいにも程があるでしょ」
「徒歩10分だし、セブンの隣だよな。酒買お」
「なんで知ってんの!?ストーカー」
「あほか。ストーカーするならもっと胸デカくて可愛い子選ぶわ」
「はい言質とった。巨乳好き認めたね?さっき胸はなんて言った?」
「思ったけど、柴崎も胸でかくて可愛い系?じゃん」
「だからなんで疑問形なのよ!せめてハッキリ言って!」
「はいはい、ハッキリな。ここのセブン?」
「ここのセブンです」
言い争いをしていれば、秒でコンビニにたどり着いてしまっていた。いつもより随分と近くなったみたいだ。人工的な青っぽいライトが照らす店内。週に5、6は立ち寄るコンビニなので、店員さんとはもちろんほぼ毎日顔を合わせているわけだ。
そんな場所に柊が居ると思うと、ちょっとだけ気恥ずかしいものがある。
「柴崎は何飲む?ストロングでいい?」
「氷結がいい。あまいやつ」
「500があるやつね。ツマミは常備されてるよな?」
「うーん……あたしあれ食べたい。うずらの卵」
「そういや、柴崎のオススメ食べたかったな。今更超後悔してるわ」
「なんで頼まなかったのよ、あれ、本気で美味しいからね?」
「ああいう、人数も多くて誰のものでも摘めるような場所で食ったら、いつの間にか届いて全然知らないやつの胃の中に入るのが落ちっしょ。一人で来た時に頼むわ」
「一人居酒屋行けるんだ」
「あの店カウンターあったじゃん。余裕」
余裕と豪語する柊は、こんど、一人であたしのバイト先に来てくれるらしい。
二回目の言質とったもんね。
柊って男は、あたしの機嫌をとるのが上手らしい。