『虎視眈々(燈和)』
カキーンッ……
私の耳にはそんな音が入ってきた
その直後、私の目に映ったのは
虎のように走り
ベースを踏む彼だった
野球をする人というよりかは
物事に一生懸命になれる人が
人として、好きというか
憧れる存在だった
だから彼ももちろんその対象に入っていた
きっと野球も好きなんだと思う
だって
“バットにボールが当たる音”が好きだから
彼がバッターになったとき
球は綺麗な円を描いて
綺麗な音が出して宙を舞う
だからきっと私は彼の野球をする姿が
大好きなんだと思う
いいや、大好きなんだ________
風にさらわれたとき
何もかもが消え去ったような気がした
私の中にあったはずの疎ましい感情は
どこかへ消え去り
彼への愛情が溢れ出した
きっと最初から好きだったんだと思う
隠していたんだ
出てこないよう内に秘めて
誰にも気づかれない場所に
この風は私に始まりの風を吹かせてくれた
でも、この感情に気づいたからといって
何かが変わるわけでもなく
二人の距離が縮まることもない
でも、これが一番、私の心に響くものであったのだ
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