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風花🎧🫧🥀@中学受験生
219
かんな
123
一歩、足を前に進めるたびに、懐にある銀色の包みが鈍く胸を叩く。
万事屋からの帰り道。
寒風が吹き抜ける夜道を、俺はまるで鉛の塊でも引きずっているかのような、重い足取りで歩いていた。
(……何のために、あんなところまで行ったんだ、俺は)
脳裏に過るのは、神楽と新八の言葉だ。
『銀ちゃん、すっごい不機嫌そうでしたね』
あいつが不機嫌だった理由なんて、一つしか思い当たらない。
昼間、路地裏でうじうじとチョコを抱えて立ち往生していた俺の姿。
男からの、それも日々言い争いばかりしている警察組織の副長からの、重苦しい恋愛感情がこもった銀色の箱。それを見てしまったからこそ、あいつは気色が悪いと、鬱陶しいと、世界が滅びるかのような顔をして家を飛び出したのだ。
俺から逃げるために。
俺の独りよがりな想いに捕まって、バレンタインの空気を台無しにされないために。
他の女からどれだけ「格好いい」と言われ、山のようなチョコを贈られたところで、俺が本当に欲しかったのは、あいつの、あの気怠げに笑う一瞬の表情だけだった。なのに、俺のこの割り切れない感情のせいで、あいつに不快な思いをさせ、逃げ出させてしまった。
(……もう、終わりにしよう)
屯所の門が見えてきた頃、俺の心は完全にすり潰され、深い絶望に染まりきっていた。
部屋に戻ったら、この銀色の箱は引き出しの奥底にでも放り込んで、二度と見ないようにしよう。
明日からはまた、いつも通りの「真選組副長」と「万事屋の旦那」という、ただの腐れ縁に戻るんだ。そうやって自分に言い聞かせ、ようやくの思いで屯所の敷地へ足を踏み入れた、その時だった。
「副長ォォォ!! 助けてください、もう本当の本当に限界なんですゥゥォォォ!!」
夜の静寂を切り裂くように、山崎がまたしても涙と鼻水を撒き散らしながら、猛烈な勢いでダッシュしてきた。俺の胸ぐらにすがり付く勢いで、山崎は白目を剥きながら叫び声を上げる。
「旦那が! 万事屋の旦那が、不機嫌そうにアンタの部屋に入り浸ってんですけどォォォ!!」
「……は?」
絶望のどん底にいた俺の思考が、あまりの衝撃に一瞬で停止した。
万事屋の旦那が、俺の部屋に? 留守の間に?
「最初に入ってきた時は、それこそ般若みたいな、この世の終わりみたいな不機嫌な顔して『糖分寄こせェ!』って暴れてたんです! あぁ、副長から逃げ回ってここに八つ当たりしに来たんだって俺も絶望したんですけど……! なのに、なんか副長のデスクの引き出しを勝手に漁り始めたと思ったら、急に『なーんだよぉ、用意してくれてんじゃん♡』とか言い出して!! 今、すっごいニヤニヤしながらアンタの座椅子に居座ってんですけど!! 不機嫌かと思えば急に機嫌良くなって、もう最高に気持ち悪ィんです、助けてくださいィィィ!!」
山崎の悲痛な叫びが、俺の耳の奥を通り抜けていく。
不機嫌そうに、俺の部屋にやってきた?
そして、引き出しを漁って、急に機嫌が良くなった……?
(待て、引き出し……? あそこには、さっき総悟の野郎が置いていった、悪戯用の……)
そこまで考えが至った瞬間、俺の心臓が今までにないほどの速さで、ドクン、と大きな音を立てた。
あいつは、俺から逃げていたんじゃない。むしろ、俺を探しに、俺から糖分を毟り取りに、わざわざ屯所まで乗り込んできていたというのか。
絶望で凍りついていた身体に、じわじわと熱い血が巡り始めるのを感じる。
俺は山崎の肩を乱暴に振り払うと、重かったはずの足に力を込め、自分の部屋へと向かって一気に走り出していた。
コメント
1件
あ、9話もめっちゃ熱かった…!!🔥 土方が「終わりにしよう」って絶望しきった直後に山崎が走って来て「銀さん副長の部屋に居座ってる」って展開、ジェットコースターすぎて心臓もたんかったわ😭💦 「逃げられた」と思ったら実は探しに来てて、さらに引き出しの総悟トラップに引っかかって機嫌直す銀さん、もう最高に銀さんだし土方の走り出したラストめっちゃエモかった…!続き早く読みたい、どうなるのこれ!?⋆♡