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一枚自体そんなに時間は掛からないが、これだけの量だとそうもいかない。…これを一人で終わらせようとしてたのか、コイツは。
そんな事を考えていると、隣からガサゴソと物を漁る音がした。
『探し物か?』
「…ボールペンのインクがなくなってしまって」
『貸すぞ 』
「ありがとうございます…すみません」
全く、コイツはもっと人を頼る事を覚えたほうがいいのではないかと思う。
…こればっかりは、俺もどう教育していいか分からない。きっと頼ることができない環境で生きてきたのだろう。
『…不器用だな』
そう、ボソッと呟く。
「…」
聞き取れなかったのだろう、反応が返ってこない。
…良かった。
**
『やっと終わったな…』
ポツポツと会話らしき事をしていると、もう朝日が昇りきっていた。
「…手伝っていただきありがとうございます」
何処か申し訳無さそうに呟く声は弱々しい。
…そういえば、この仕事ってコイツの仕事じゃなかったのか。
『次押し付けられたらまた手伝ってやるよ、仕事 』
変に俺から注意しても、コイツへの風当たりが強くなっては意味がない。それにもう上司と一晩を明かしたくないだろう、自然と断れるはず だ。
「ソ連様はお優しいのですね。…、すみません生意気なことを」
違う、そういう受け取り方をして欲しかった訳ではない…訳では無いのだが…
『…んなこと言ってくれるのお前だけだぞ?』
「思ったことを口にしたまでです」
経験が浅いからなのか、言葉に穢れがない。いつまでもこうであってほしいが、そうはいかないのだろう。…俺だってそうだった。
『俺は一旦家に帰るが…お前はどうする?』
「あ、私は残ります。この会社結構快適なので…」
シャワー室もあるし仮眠室もあるし…とつけ足すのをよそに、コートを羽織る。
夜が明けきった空が、徹夜明けの目には眩しすぎた。
『じゃあ、また数時間後』
「ええ、また数時間後に」
ドアノブに手を掛けようとした時、ふと好奇心が湧いた。
「どうされましっ…!?」
口元に、軽く口付けをする。
『挨拶だ。ソ連では普通なんだよ、男同士でも』
「、そうなんですね、初めて知りました」
表情一つ崩さない。ゲルマン系のやつらは、口付け慣れしてない傾向にあるから楽しみにしていたのに。
は?
『!?、っすまん、いや引くよな…すまない、本当に…!』
不可侵条約を結ぶ時、アイツに引かれてからはしないようにしていたのに。…特にゲルマン系には…!
「いえ、大丈夫ですよ」
俺は俺で焦り過ぎてるし、コイツはコイツで落ち着き過ぎてる。多分あれだ、徹夜でおかしくなってるんだ、二人とも。
『じゃ、じゃあ、また数時間後』
「ええ、また数時間後に」
先程と同じようなセリフを口にして、急ぎ足でドアノブに手を掛けた。