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カチコチ、カチコチと、時計はないのに針が進む音がする。
天井じゃないけど空ではない。床ではないけど地面でもない。ただ終わりのない白い空間が広がっている。そこに、清心と少年は立っていた。
「やっぱり思ったとおり……! 夜でも、十時十分ならここに来れるんだ? 便利だなー」
清心が目を輝かせながら言うと、少年は眉を下げて答えた。
「ふーん、そうなんだ。……俺も知らなかったよ。でも、ここに来ちゃだめだって言ったじゃん」
「どうして? 戻ろうと思えばいつでも向こうに戻れるんだろ?」
「そうだけど。────半分死んじゃうよ」
清心の笑顔は、言葉と共に消えた。
死。それに直結する理由までは分からないが、ゾッとして身構える。そういえばここは寒くも暑くもない。時間が止まっているということは、ここにいれば一生老いることなく生きながらえるんだろうか。
「君は……どうして現実に帰らないの?」
「そりゃあ、帰ってもいいことないもん。俺はこっちでいい。めんどくさいことは全部、半分こした方が頑張ればいいんだ」
はぁ……。
やっぱり、彼が何を言ってるのか分からない。それでも目的が達成できた為、ひとまず座り込んだ。
「なぁ、腹減らないか? コンビニでケーキ買ってきたんだよ、一緒に食おう」
「リラックスし過ぎでしょ、お兄さん。でも食べる!!」
少年はぱっと明るい笑顔を浮かべると、幼い子どものように近寄ってきた。そしてケーキなんて十年ぶりと言い、美味しそうに頬張って食べていた。
不思議だ。初めて会ったのに、初めまして、という気はしない。
古く錆び付いた記憶を呼び起こそうとしたが、何故か鍵をかけられたかのように頭が回らなかった。たかが数年前のことすら曖昧で、よく思い出せない。それだけが気がかりだった。
「あぁ~、ごちそうさま! ここじゃ腹減らないんだけど、美味しかったよ。ありがとう!」
「どういたしまして。ところで君、名前は?」