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皆様今晩は。黒留です。

地雷の方は別の作品へ。

其れでは、どうぞ。

_____________________

謹慎4日目。何もする気は起きない。当たり前だ。だってする事が無いんだから。いっそ睡眠薬でも飲んで眠り続けて仕舞おうか。そんな事を考えて居た時、ふと呼び鈴が鳴った。


《太宰さん…!大丈夫ですか…?》


聞き覚えの有る声がドア越しに聞こえて来た。此れは拙いなぁ…と苦笑し乍玄関に向かう。


「今開けるよ。少し待ってね。」


重く気怠い体を起こし、フラフラとした足取りで玄関に向かい、鍵を開ける。


「どうかしたの?敦君。」


「太宰さん…!顔色が…」


私が出た瞬間敦君は血相を変えた。きっと酷い顔をしているんだろう。先刻軽く鏡を見てきたが、中々に酷い顔をしていた。


「嗚呼…大丈夫だよ。それより何か用があったんじゃないのかい?」


「えっと…此処に誰か入って行くのが見えて…」


来客など無かった。監視の為の嘘だろうか。でも反応的には何方とも取れる。ましてや敦君は嘘が下手なのだ。こんな嘘、つけるだろうか。


「此処には誰も来ていないけれど…」


「え…そんな筈は…!」


嘘はついていない様だ。楢誰が此処に居るのだろうか。ふと敦君が言った。


「後ろに…!」


言われて後ろを振り返る。矢張り誰も居ない。


「敦君…私を誂うならもう少しマシな嘘を…」


「__え?」


焦っていた敦君が急に目を見開く。そしてふと私を見ては「分かりました。」と優しそうに微笑み。


「太宰さん!外に行きましょう!」


「…駄目だよ。外に出るのは買い物か探偵社だけ。それ以外は外出禁止だ。」


「…なら僕の独断です!」


グイと腕を引かれ慌てて靴を履き玄関を出る。あの雨の日から外に出ず、遮光布を締め切って部屋の明かりしか見なかった。

外に出る。

眩しく光る。

ふと横を見る。

其処には。

____其処には。

明るい世界が広がっていた。


「行きましょう!」


嗚呼…眩しい。彼の笑顔も。此の世界も。


「…敦君、矢張り部屋に戻ろう。君が怒られる。」


「僕の独断です。それはもう判ってますよ。」


柔らかく笑い、彼は再び手を引く。


「其れに言われたんです。『太宰さんを頼む。』って。」


「誰に…?」


「わかりませんけど…赤い髪色で、太宰さんより背が高くて、砂色の外套を着ていました。見た目的には30代くらいで。太宰さんの後ろで悲しそうにしてました。」


そうか。彼が。彼が敦君を。


「……そうかい…」


「其れで、『外の世界に連れ出してやってくれ』って。」


「………。」


なら、あの時私を助けたのも、頭を撫でたのも。全て彼だったのか。





「此処は…」


「前に太宰さんが居た場所です。」


多くの墓石。木陰に一つ。穏やかに建っている者がある。そうだ。あの時。


「僕、偶に誰かに誘われる様に此処に来るんです。」


「そうなのだね…」


「……僕、少し外しますね。」


微笑むと彼は別の場所へ行ってしまった。其れを見て気が抜けたように彼の墓石へもたれ掛かる。


「御免ね…織田作…」


『気にするな。』


「君に、また迷惑を掛けたよ…」


『何時もの事だ。慣れてるさ。』


「何時も…君が助けて呉れる…こんなにも仲間に呆れられたのに。それでも君だけは…」


自然と涙が溢れて止まらなくなる。風が吹く。其れは優しく頬を撫でる。


「御免…御免よ…織田作…君をあの時…」


『お前が生きてるなら、其れで十分だ。』


「嗚呼…嗚呼、そうだね…」

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