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ザッザッザッ
一体どれだけ走っただろうか。
初めて直に感じる土の匂い、鮮明に聞こえる風の音 しかしそれらに感動している暇は無い。
自分以外の足音…先ほどまで聞こえなかった炎の音…もう彼らが追ってきたのだろうか。
「逃げなきゃ…もっと遠くへ…」
自然と早まる心臓の音、もし彼らに捕まったら
「殺される…」
幼いながらに感じる死の気配。今はただ逃げる以外の術は無いのだ。
あれからどれだけの時間が経っただろうか。
夜の闇の中に見える確かな灯り。
そこには小さな小屋があった。
ドンドンドン
「誰か、誰かいませんか?」
助け…その言葉を出す前に意識が遠のき始めた。
無理もない、永遠とも感じ取れる長い時間、幼き身体で走り続けたのだ。
冷たい土の上、朦朧とする意識の中、7年という短い走馬灯を思い起こしていた。
ああ…僕はここで死んでしまうのか…
涙がとめどなく流れていた。 だが…もう、拭いてくれる人はどこにもいない。
そう思いながら、意識は完全に暗転した。
「ほいほいっ 今開けますよっと、いやー新しく開発した作業用ビームカッターの最終調整が終わってなくてね、危ないからさっさとやった…ってオイ!小僧!大丈夫か!?あ~あこんなに冷たく…よしっ息はあるな、こんな泣いちゃって…可哀想に…とりま暖房つけてすぐに温めてやっからな!」
ーー数十年前ーー
世界は数千以上の国が点在しておりそれぞれが独自の文化、技術を持っていた。
世界最古の国であり、魔法を扱い、武力 生産力 共に頂きに君臨する国
「リュミエル」
人の叡智、科学を極め、年々勢いを上げており、生産力ではリュミエルに次ぐと言われる大国
「サジェス」
生き物の魂が集まると言われ、そこに住む人々は妖術という不思議な技を使う。忍術という高度な戦闘技術を使い、世界でもトップクラスの武力を持つ集団「忍者」を有する国
「ランブドラ」
様々な国の中でも、この3つの国が大国と謳われ恐れられできた。故にその他の国は共に助け合い大国の恐怖から抜け出すための準備を進めていた。しかしこの3つの大国は周りの国々、そして互いに不可侵条約を結び世界に安泰をもたらした。 大国の恐怖が無くなった国々は次第に他の国や大国と貿易や援助をし合い世界は豊かになっていった。
しかし、突如リュミエルがサジェスに進行を始めた。 サジェスは他の大国の脅威が無くなり、様々な国と取引を始めたため急速に成長していき遂に生産力にてリュミエルを越すことに成功したのだ。 次々に開発される道具や兵器、それらを大量に生産するための工場、リュミエルはそれを恐れ同時に欲しいと願った。 「…まだ武力ではこちらが上だ。」
突如始まったリュミエルとサジェスの全面戦争リュミエルはサジェスに奇襲を仕掛けサジェスの命とも言われる工場に大きな被害を負わせることに成功した。 対してサジェスは新型の人形自動走行兵器「機兵」を使いリュミエルの進軍を妨げた。 機兵はそれぞれが銃や剣を持ち武装し立ち向かった。 しかし強力だが単調で決まった攻撃しか出せない機兵達は攻撃に対応し進化を続ける魔法相手に日に日に抗う力を失い最後には命がけで撤退するしかなかった。奇襲や兵の衝突により疲弊するサジェス、しかし戦いの中であろうと開発の手を緩めなかった。リュミエルの進行が始まって2年半、サジェスの領土の3分の2がリュミエルに奪われた。取り返すための戦力の大部分を占める機兵のほとんどをリュミエルに破壊され生産するための工場も今やリュミエルの支配下にある。 そんな中リュミエルの軍基地にて新型の機兵が確認された。よもや人形と捉えられるかも怪しい異様なそれは瞬く間にに軍基地を壊滅させていった。従来の機兵では敵わない魔法相手に数々の戦果を上げていった。炎、水、雷、風。様々な魔法を無効化し一方的な蹂躙を可能とするそれは重い鎧を着込んでいる様に見えたことから。「重機兵」と呼ばれていた。
重機兵を導入したことによりリュミエルの支配地域は激減、しかも重機兵の躍進により希望を見出したサジェスの民による抵抗によりリュミエルは段々と疲弊していった。 「これ以上兵を失う訳にはいくまい…勇者の出撃要請を。」
勇者、はるか昔からリュミエルを守る英雄。
誰しもが一度、魔王と勇者の伝説を聞いたことがあるだろう。 魔王が世界を支配しようと企み、特別な力を持った勇者がそれを阻止する。どんな世界、時代にも存在する至って平凡でありふれた英雄譚の一つ、この世界だってもちろん存在する。 ただ一つ違うと言えるところといえば、とても強大な力を持った勇者という存在をリュミエルが野放しにしとくはずがなかったということだ。魔王討伐後、勇者は兵器として育成され今や魔王などいともたやすく葬り去るほどの力を持っていた。
数ヶ月後 重機兵により戦況を覆しつつあったサジェスはたった一人の力により完全に滅びた。 サジェスの宝である工場はリュミエル支配下の3つ以外破壊され、そこに立て籠もっていた技術者は反乱の意志があるものは殺され、希望を失ったものはリュミエルの支配下におかれている。それ以外の民は焼け野原と化したサジェスを見てある者は自害しある者は狂い魔物やリュミエルの兵に殺された、精神を保ち、生きる術を考えられた者は別の国に避難したりリュミエルに保護されリュミエルの民として暮らしている。
唐突に始まった2つの大国の戦争は一人の戦士によって終わりを迎えた。
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「う〜ん…ここは?」
目覚めた場所は暖かなベッドの上だった。着替えがベッドの上においてある、不思議とサイズはピッタリだった。今思えば体もきれいになっている。しかし服を脱いだ様子も無い。魔法だろうか? ふと周りを見てみた、壁に様々なものがかけてある、鉄のグローブ 剣の柄のようなもの、机の上にはなんか緑に光っている箱のようなもの。 どれも見たことがない。
僕は追手から逃げ延びることができたのだろうか? 誰が僕を助けてくれたのだろうか?
…そもそもここはリュミエルなのだろうか?