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霧の森の奥、誰も足を踏み入れない湖のほとりに、ひっそりと光る街があった。
街の住人たちは昼間は姿を消し、夜になると空に浮かぶ光の橋を渡り、森の動物や精霊たちとともに暮らしていた。
ルカはその街に一人だけ取り残された少年だった。
幼い頃、迷い込んだ森で魔法の水晶に導かれ、この場所に辿り着いたのだ。
水晶は静かに光り、ルカにだけ言葉をかける。
「君の道は、まだ終わらない」
しかしルカには意味がわからなかった。
街の人々は夜だけ現れ、光の橋を渡ると二度と戻れない。
ルカもいつか橋を渡ることを知っていたが、心の奥では誰かに「待っていてほしい」と願っていた。
ある雨の夜、湖に赤い光が落ちた。
それは、ルカがずっと探していた少女――セリナだった。「君を探してた…」
セリナもまた、森に迷い込んだ一人で、長い時間をかけてこの街の秘密を知っていた。
二人は笑い、湖のほとりを歩く。
しかし、空に浮かぶ光の橋は二人をじっと見つめていた。
「僕たち、もう一緒にはいられないのかな…」
ルカがつぶやくと、セリナは静かに手を握った。
「私たちは、この森の時間の中でしか会えない。でも、ここで過ごした日々は、永遠に私の心にある」
夜が更けると、二人は湖のほとりで語り明かした。
星空の下、森の風が二人の髪を揺らす。
過去の悲しみも、孤独も、すべて水晶の光に包まれ、少しずつ心を溶かしていった。