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 ――達ってくれてる。


 私の体内で彼の肉棒が大きく膨らみ、ビクビクと震えているのが分かる。


 暁人さんは最後の一滴まで出すように、二度、三度と腰を叩きつけてから、私の体の上に倒れ込んできた。


 触れ合った肌が温かい。


 彼の体の重みが愛しく、それでいて切ない。


 私は暁人さんの背中に両腕を回し、彼に気づかれないようにこっそり泣いた。


 ――私は彼の〝特別〟にはなれない。


 私は心の底で期待している、純粋で愚かな自分に言い聞かせる。


(暁人さんを好きになったとしても、三峯家を救ってくれた彼のためにも、絶対に迷惑になる行為はしない)


 こんなに素敵で優しい男性に抱かれて、好きになるなというほうが難しい。


 いまだ彼の過去も、プライベートはどう過ごしているのか、交友関係も知らないままだけれど、私は暁人さんに抱かれてすっかり心を許してしまった。


 私はサラリと彼の髪を撫で、天井を見上げて息を吐く。


(あなたが私を求める限り抱かれます。ご飯も作りますし、何でもします。あなたは家族を救ってくれた恩人ですから)


 私は心の中で呟き、また涙を零す。


(でも、あなたはいつか私よりずっと素敵な女性と結婚するから、その時のためにこの気持ちは口にしないようにしますね)


 図らずも、私の脳裏にはウィルとレティシアが浮かんでいた。


 御曹司の隣には、お似合いの令嬢がいるのがお決まりだ。


(私みたいな一般人は、絶対に夢をみてはいけない)


 NYで嫌というほど現実を知ったはずだ。


 いくら暁人さんが私に優しく接してくれても、御曹司と一般人の人生が交わる事などない。


「……芳乃」


 顔を上げた暁人さんは熱の籠もった目で私を見つめ、顔を傾けてキスをしてきた。


 唇を舐められたあとに甘噛みされ、ヌルリと舌が侵入してくる。


 いまだ繋がったままの彼はゴロリと横臥し、脚を絡めると想いの籠もった口づけを交わしてきた。


 暁人さんは最後にチュ……と舌を吸ったあと、愛しげに私を見つめて微笑む。


(ウィルも事後にこんなふうに笑ったっけ。……でも、結局はセックスをしたあとだけ。〝本命〟は別にいるんだから)


 私は暁人さんに微笑み返し、彼の胸板に額をつけながら、自分に言い聞かせて想いを鎮静させていく。


 胸板を通して、トクン、トクン……と彼の鼓動が聞こえてくる。


(今は新しい職場での仕事に真剣に取り組んで、家では暁人さんの要望に応えるしかない。私が一番に優先すべきは、家族を安心させる事なんだから)


 本来の目的のためなら、恋心の一つや二つ、なかった事にするのは簡単だ。


 暁人さんは私の髪を優しく撫で、その手つきにうっとりする。


 ――――けれど、不意にグゥゥ……とお腹が鳴ってしまい、私はとっさに両手で腹部を押さえる。


「わ……っ」


(そうだ! 外商さんたちが来て、一日中着せ替えごっこみたいになっていて、そのまま夕方で……、い

ま何時!?)


 我に返った私は慌てて時計を見ようとしたけれど、その姿を見た暁人さんにクツクツと笑われてしまった。


「ごめん。無理させたな。飯…………、を作るのは無理そうだから、デリバリーでも頼もうか」


「い、いえ! 私が作りま……っ、んぅっ」


 私は起き上がろうとするけれど、いまだ体内に入っていた屹立を抜かれ、色っぽい声を漏らしてしまう。


 それでも起きようとするものの、体に力が入らない。


「???」


 こんな状態になった事のない私は、言う事をきかない自分の体に首を傾げる。


「無理しなくていいって」


 暁人さんは明るく笑い、ゴムを処理したあと、下着を穿いて「何を食べる?」とタブレット端末でデリバリーサイトを開き、私に見せてきた。


「あ、明日からちゃんと働きます……」


「OK。でも適度に外食やデリバリーも必要と思っているから、あまり気負わないで」


 クスクス笑う暁人さんは、まるで恋人のように接してくれる。


〝副社長〟はどこかへ、今は二十五歳の男性そのままだ。


(きっと社員さんたちは、みんな暁人さんに憧れてると思う。この人のこんなに無防備な姿を知っているのが、私なんかでいいんだろうか……)


 私はそう思いながらも、ひとまず液晶画面を覗き込んだ。




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