昼間とは思えないほど、空は重たく、灰色の雲が空を覆っていた。
雨は遠慮なく窓を叩きつけ、室内にまで湿った空気を引き込んでくる。
明かりもつけず、薄暗い部屋にぽつりと浮かぶ二つの影。
ソファの上で、重なる身体。
濡れたような息が、重なり、混じり合う。
「……雨、すごいな」
涼太の指が、俺の髪を梳く。
指先から伝わる熱に、身を震わせながら、うっすら笑った。
「……ん。雨音のおかげで、外に聞こえないからいいじゃん」
そう言って首筋に唇を寄せ、ぬるく肌を這う。
ちゅ…くちゅ、とやわらかく響く音。
それは雨か、それとも身体の奥から漏れる熱い音か。
雨のせいで、どこか閉じ込められたような部屋。
外の世界なんてどうでもいいと思えるほど、二人だけの温度に満たされていく。
「なぁ、照明……つける?」
「いらない。……」
目を閉じても、唇の熱、肌を滑る指の軌跡、ゆっくりと混じり合う音がはっきりとわかる。
ぴちゃっ、ぴちゃっ——
濡れたような音が、静かに繰り返される。
それは、雨か。
それとも、ふたりが互いを欲しがる、湿った音か。
もう、どちらでもよかった。
ただ、この薄闇の中で。
他の誰にも見せない、誰にも邪魔されない、この時間に溺れたかった。
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