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「何か用?」
現れたミナはさっきと変わらない姿で気だるそうに発言した。
「いや用って事はないけど、どんな部屋か興味があって…」
「快適に過ごしているわよ」
「そうか。ならいいんだ…」
適当な返事を返すバックだが、ミナの部屋は快適と呼ぶには程遠い白一色の世界だった。
壁も床も冷たい石を張り付けたような印象を受ける。
テーブルも簡素な作りでベッドも色はない。
まるで病室だった。
菌一つ入れないといった突き放される感じがしてならない。
そうだ!
殺風景すぎるんだよ。
女性が好む部屋ってこんな感じなのか?
「聞いて。私の家のベッドよりもめっちゃフカフカなの!」
心底嬉しそうなミナにどんなわびしい生活を送っていたんだ!
とツッコミたくなったがやめた。
むしろ、モブとはいえ貴族設定の自分が優遇されていたのかもしれない。
たぶんそうだ。
「へえ~!よかったな」
目頭がピクピク痙攣するのを抑えながら当たり障りのない返事を心掛ける。
変に同情しているなんてバレたら彼女を傷つけてしまうかもしれない。
「ねえ。折角だから泣き虫さんのところにも行きましょうよ」
幸い、バックの考えはミナは気づいていない様子だった。
「泣き虫?」
「ヴェインの事よ」
「ああ、そうだな」
ミナの扇動でヴェインの部屋へと向かうバック。
やはり扉は二人と同じデザインの鏡っぽいテカテカした板である。
「ヴェインいる?」
ミナの問いで現れたヴェインは上機嫌だ。
「よう!どうした?」
開かれた部屋はミナの真っ白な世界とは異なりピンク一色だった。
なんだか目がチカチカしてくる。
そしてなぜだか胸のあたりがザワザワと這い上がってくる。
この部屋を眺めているとアダルティという言葉が頭をちらつく。
一体なぜ?
「どう?快適?」
ミナはごく自然な形で問いただした。
「ちょっと薄暗いのは気になるけど、斬新なデザインで楽しんでる」
「楽しんでるのか?」
バックは思わず返した。
「ああ!ウフッ!」
ヴェインはとても清々しい返事をした。
確かにベッドはミナやバックよりもはるかに広い。
枕がハート型などを除けば広々と足を広げられるだろう。
それでもなぜかこの部屋に魅力は感じられない。
バックはなんとも言えない感情を処理できずに押し黙っていた。
「なんだよ。だんまりしちゃって…」
「あっ!いや、なんでもない」
あの毒舌なミナも何も言わないし、本人も楽しそうだ。
だから、これ以上口に出すのもおかしな話だよな。
バックはただ笑って返した。
お部屋訪問とは言ったが、なんせ滞在者が少ないのですぐに終わってしまうんだよな。
「どっちも中々ツッコミどころ満載の部屋だったな」
再び、冷たい廊下を歩きながらつぶやくバック。
まあ、あいつらが満足しているならいいか。
その証拠に二人とも、もう寝ると言い残して引っ込んでしまった。
俺も寝ようかとバックも思った。
「待て。まだセイの部屋を見ていない」
バックは少しばかりの好奇心に駆られていた。
そういえば、セイの部屋はどこにあるのだろう。
聞いていなかったな。
まあ、乗務員も少ないし、歩けばすぐに見つかるだろう。