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人狼

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人狼

1 - 第1話

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50

2024年12月05日

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細い川を挟んで三軒ずつ並び、上流に小屋のような民家が一軒ある程度の小さな集落だった。東側の裏手には標高の低い山があり、西側の裏手には畑があり、その奥に森が広がっている。道は南北に延びていて南下すれば百人ほどの村があり、北上すれば切り立った岩山へと続き、その先は地区が変わる。南下した先にある村には、人の足で歩いても半日かかるほど距離がある。

集落では畑で穀物を育て、山でキノコや木の実を採り、時として獣の類も狩る。川は生活用水だが、上流では魚が捕れることもある。何か大きな災害でもない限り、食うに困ることは無く安穏とした毎日を過ごすだけ。

そこには、何の刺激も無かった。



暗い森の中を走っていた。


───もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ。


そんなことを言いながら走っていたように思う。

どこへ行くのか、どこに逃げるのか、当てなんかなくて、ただひたすらに走っていた。

頭上に月の姿は無く。

辺りを包む暗闇に恐怖感を覚えながら、手足が血まみれになっても走るのを止めなかった。

息が苦しくて、肺がつぶれてしまいそうで、口の中に血の味が広がって、「ああ、もう嫌だ」と声を絞り出して、何かにつまずいた。

面白いほど軽やかに山道を転がり落ち、太い幹にぶつかって止まる。

それで、もう、動けなくなった。

息をするのもやっとで、指一つ動かすことも出来なかった。

「お前が”新月の人狼”じゃなきゃ、もっと長生きできたのになぁ……」

そう言って視界に入って来たモノを見た瞬間、死を覚悟した───。




そして、パチリと目を開ける。

いや、ずっと目を開けていたはずなのにおかしいことだと思って、あれが夢だと気が付く。見慣れた天井、質素な部屋、寝返りをうって荒れた机の上を見て、安堵の息を零す。


(…今日は収穫の日だ…)


だがまだ日は昇らない。彼は再び目を閉じて、眠りについた。次こそは良い夢が見られるようにと願いながら。

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