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「ねえー、作業終わりそうにないんだけど。授業中に描いたらダメ?」まつりは半泣きで咲苗にしがみついた。
「ダメに決まってるでしょ。先生用心深いし、あなた先生にマークされてるでしょ?描いた瞬間バレるからだめ!ペンタブ没収されていつもの時間でも描けないの嫌でしょ?」咲苗はため息をついた。
「それはそれで嫌!」まつりは叫んだ。
「じゃあ教科書で机ぐちゃぐちゃにしてペンタブ隠すように置いてやるってのはどうだ?幸いにもお前の隣は壁と咲苗、後ろは俺と鈴之助なんだからよ。」真央は聞いた。
「バレるに決まってるよ。後ろの方の席って案外見えやすくてバレやすいって聞いたよ〜。」鈴之助は苦笑いした。
「まつりちゃん絵を描くことが好きなの?!私も!今は下手なんだけどね、私もいつかイラストレーターになりたいんだー!」いのりは話を聞いたように叫んだ。
「そ、そうなんだね。」まつりは少しとまどったように返事をする。
いのりは笑うと咲苗の手元のスケッチブックを見た。
「わあ〜!咲苗ちゃんも絵を描くの?!アニメ系すごい上手!」いのりは褒めた。
「そう。」咲苗は短く言った。
「ねえねえ、咲苗ちゃんの絵の描きかた、教えてくれる?」いのりは咲苗の机の前にしゃがんだ。
「悪いけど、前に教えた時にはひどくなってたから、教えられない方が身のためかもね。」とそっけなく答えた。
(あ、これうざがってる時の態度だ。)とまつりは思った。
咲苗との付き合いは長い。出会ったのは小学三年生の頃だっただろうか。
紫色の地毛だということでいじめられて、掃除当番を押し付けられそうになった時に咲苗に助けられたのがきっかけだった。
咲苗は昔からそういう人だ。人のよって態度を変えたりしない、真面目な子だけど、いざという時は見て見ぬ振りをしなくて、ちゃんと助けてくれる人。そんな咲苗にまつりは憧れたのだ。
「あちゃー、残念。咲苗ちゃんは、人に教えるのが苦手なの?」いのりは寂しそうな顔をして首を傾げた。
「それ、人によっては解釈を変える人がいるからあまりその言い方は良くないかもね。私はそもそも、自分が長い時間をかけて習得したものを誰かに無償で教えるつもりはないよ。」咲苗はキッパリ断った。
(お父さんの入れ知恵だねー、これは。)まつりは思った。
咲苗の父親は大学の教授で、あらゆることを娘に叩き込んだそうだ。
おかげで、咲苗は現在中学一年生とは思えない思考をしている。
「ねえねえまつり。」鈴之助はまつりに耳打ちした。
「咲苗って昔からこうなの?」鈴之助は聞いた。
「うん、昔から。鈴之助は咲苗と会ってから3年くらいしか立ってないもんね。多分お父さんに似たんだと思うよ。」まつりは苦笑いした。
(そういうと、確かに見た目は結構父似かな、、?)と鈴之助は思った。
面識はないが、見かけた程度である咲苗の親は彼女と同じ黒髪と藍色の瞳だった。
「ちなみにお母さんは結構癖毛に見えるけどあれ巻いてるだけだって」とまつりが言うと、
「貴方達人の家庭の個人情報どこまで知ってるのよ?」と咲苗は怒りにちょっと混じった顔で笑った。
少し離れた場所にいたいのりは小さくつぶやいた。
「ケチな人は嫌われるよー。」
コメント
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第5話、読みました!今回はまつりちゃんの授業中にお絵描きしたい!っていうあるあるな悩みから始まって、咲苗ちゃんのキャラがぐっと深まった回でしたね。咲苗ちゃんがああやってキッパリ断るのは、すごく彼女らしいというか。父親の影響なんだなって分かって納得しました。いのりちゃんの「ケチな人は嫌われるよ」も、結構核心をついた一言でドキッとしました。次が気になります!