テラーノベル
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裏路地には、ゾンビの姿がなかった。
それがかえって不気味だった。
表通りからは、まだ唸り声が聞こえている。なのに、この路地だけが不自然なほど静かだ。足音と荒い息づかい、それから遠くで鳴る波の音しか聞こえない。
メバルは、胸に抱えた救急箱を落とさないよう、両腕に力を込めて走った。
中身は包帯、消毒液、鎮痛剤、はさみ。どれも戦うための道具ではない。
それでも、仲間が傷ついた時に必要になる。
だから、置いていくわけにはいかなかった。
「メバルちゃん、その箱、重くない?」
隣を走るカキが、息を切らしながら尋ねた。
「重いけど、置いていけないよ」
「さすがメバルちゃん。俺が怪我したら、優しく手当てしてね」
「怪我をしない努力をして!」
その直後だった。
路地の出口から、腐った影が飛び出してきた。
「来るぞ!」
カキがオレンジ色の斧を振り上げる。
斧がゾンビの肩に食い込み、鈍い音を立てた。同時に、マサカゲが鉄パイプで別のゾンビの足を払う。倒れた身体を踏み越え、アオノはナイフを投げた。
ナイフはゾンビの服を柵に縫い止めた。
「今の、服だけ狙ったの?」
「動きを止めただけだ」
アオノは淡々と答えた。
その横で、ミステーが頭にかぶったピラミッド型の被り物を両手で押さえている。
「ミステー、それ……やっぱり邪魔じゃないの?」
「これは盾です」
「盾?」
ゾンビの腕が、ミステーの頭めがけて振り下ろされた。
ガンッ!
金属を叩いたような音が響く。
ピラミッド型の被り物はへこみさえしなかった。
「本当に盾だ……」
メバルが目を丸くする。
K-Tは武器を抜かなかった。
迫ってきたゾンビの腕を片手で掴み、そのまま押し返す。ゾンビの身体が地面を滑り、壁に激突した。
その瞬間。
K-Tの茶色いコートの内側で、何かが鳴った。
カチャッ。
小さな音だった。
だが、カキには聞こえた。
「今の、何か鳴らなかった?」
「気のせいだ」
K-Tは前を向いたまま答えた。
「いや、金属みたいな音が――」
「走れ」
K-Tの声が、いつもより低かった。
カキは口を閉じ、前を向いた。
路地を抜けるまで、誰も振り返らなかった。
K-Tのコートは分厚く、重そうだった。
それなのに、ゾンビの爪に引っかかれても、布地には傷ひとつ残っていない。
コートの内側で、何かがもう一度、かすかに鳴った。
カチャッ。
K-Tだけが、その音を聞かなかったことにしていた。
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コメント
1件
第2話、めっちゃ良かったです!!😭✨ それぞれの武器&役割が個性的で、特にミステーのピラミッド盾には笑いつつも「なるほど!」って納得しちゃいました。そしてK-Tのコートの中から聞こえる金属音…気になるー!!何が隠れてるんだろう…続きが気になりすぎます🔥💕