テラーノベル
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蘭丸視点。
昼。
雨明くんと晴明くんがおつかいから
中々帰ってこない。
あっちゃんに、
お前は飛べるから便利だ。
なんて言われて見てくるよう言われちゃった。
便利って何さ便利って。
物じゃないんだから。
…………?
人通りの少ない裏路地に、嫌な気配。
湿った空気。
壁と壁の*隙間*が、妙に。
僕は少し離れた場所で、足を止めた。
声。
「──っ、離せや……!」
雨明くんだ。
壁の隙間から伸びた*何か*が、彼の足を掴んで引きずり込もうとしている。
顔の歪んだ人の形で、幽霊みたいな。
典型的な、*すき間さん*。
「……や、やめ……っ、」
足が擦れる音。
抵抗しているのに、じわじわと、確実に引き込まれていく。
……さて。
どうする?
僕が今ここで出れば、終わる。
一瞬で、片付く。
でも──
足は動かなかった。
いや、動かさなかった。
そのとき。
駆けてくる足音。
「雨!!」
……来た。
迷いもなく、一直線に飛び込んでくる影。
晴明くん。
彼は状況を一瞬で理解して、
そのまま、何の躊躇もなく雨明の腕を掴んだ。
「雨を離して……!!」
引っ張る。
すき間さんと、人間。
綱引きみたいに、互いに引き合う形になる。
終いには、
雨明くんの体ごと引っ張ろうとしてる。
それじゃあ、
晴明くんが引きずり込まれてもおかしくないよね?
……本当にさ。
「っ……う″っ……!」
雨明くんの体が半分ほど沈む。
同時に、晴明くんの足元も引きずられる。
それでも離さない。
「……大丈夫、……っ」
「引っ張るから……っ」
声、震えてるのに。
笑おうとしてる。
……何それ。
なんで、そんな顔で。
助ける側が。
そこまでやる必要、ある?
もっと、上手くやれるでしょ。
傷つかない方法、知ってるでしょ。
ましてや前世の記憶を持ってるなら。
なのに。
やらない。
やらないで、わざわざ捨て身を選ぶ。
「──っ、晴……あかん……!」
雨明くんが叫ぶ。
その声に、ほんの一瞬だけ、
晴明くんの目が揺れた。
でも。
それだけ。
離さない。
……ああ。
やっぱりだ。
何も変わってない。
あの蔵のときと、同じだ。
他人を守るためなら、
自分がどうなるかなんて、最初から考えてない。
「っ……!」
ぐっと、さらに引き込まれる。
晴明くんの膝が地面についた。
腕が、沈む。
あと少しで。
本当に、落ちる。
──ねえ。
ここで。
僕がまだ、動かなかったら。
君は、どうするの。
誰にも頼らず、
そのまま、引きずり込まれていくのかな。
──もう、言わないんだろうな。
そう頭によぎった。
その瞬間、
胸が締め付けられる。
息が止まる。
ああ、これが現実か。
僕が駆けつけても、
どんなに必死でも、
君は僕に助けを求めてくれないんだ。
──もう、何をしても無駄なんだね。
目の前で2つの命が、明らさまに動く。
……あーあ。もう。
……君が助けを言わないから、こうなるんだ。
君は知らないの?
君がほんの一言、
「助けて」って言えば、
僕は一瞬で飛び込むことを。
なのに、言わない。
黙ったまま、引きずり込まれそうになっている。
──もう、
ほんと、嫌になる。
──くそ、
君のその頑なさのせいで、僕はここまで追い詰められてる。
……はあ。
……もう、待てない。
……もう、我慢できない。
喉に何かが突っかかったみたいだ。
声にならない怒りと苛立ち。
───もう良いよ。
君が助けを求めない人なら、
求めたくない人なんなら、
僕に何の希望も抱いてくれない人だったんなら、
このまま見捨ててしまおうか。
僕は、2つの命をも背にし、
何も見てないことにした。
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コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 蘭丸の視点、重かった…。助けられるのに動かない選択、その裏にある「もう言わないんだろうな」って諦めが切なすぎるよ。雨明と晴明が必死に引っ張り合う姿に、自分を犠牲にする優しさと頑なさを感じた。蘭丸の「このまま見捨ててしまおうか」って台詞、本心じゃないのに、そう言わずにいられない気持ちが痛いほど伝わってきた。次、どうなるんだろう…。