5日後。約束の日。
スタジオのドアを開けた瞬間、佐久間は満面の笑みで「おー!ふっか!会いたかったぁ!」と声を張り上げた。
明るすぎるくらいのテンション。
そのまま荷物を置く間もなく腕を引かれ、寝室へ直行。
そのまま首筋や耳を啄まれ、手は服の中へ。
「ちょちょ、さっくん、仕事は?」
「仕事?今日はいいんだよ。そんなの」
そう言って笑うと、首筋に軽く噛みつきながら勢いよくベッドに押し倒す。
いつもより距離近く、熱を帯びた視線に抗えない。
深澤の身体は本人も気が付かないうちにもう佐久間を受け入れる準備が出来上がっていた。
身体を重ねながら、佐久間は甘く囁く。
「気持ちいい?正直に言ってみなよ」
「は…気持ちいいっ…あ///さっくん…」
「もっと?ねぇ、もっと欲しいよね?」
「うん…っ、もっと…っ!もっと……さっくんが欲しい」
耳元に落ちる囁きも、腰を揺らすリズムも、何もかもが深澤を溶かしていく。
休む間も与えられず、何度も身体を重ねられた。
最初から最後まで甘くて激しい時間は永遠にもあっという間にも感じられた。
あの日の佐久間は最初から妙にテンションが高かった。
スタジオに着いても仕事なんて一切せず、笑顔のまま有無を言わせず寝室へ。
時間をかけて何度も何度も抱かれ、最後には思わず漏れたみたいに、佐久間から口づけられた。
それがたまたまだったのか、意味があったのか何も分からない。
でも深澤にとってはすべてを覆すような出来事で、その余韻に囚われたまま過ごしていた。
……けれど。
その後、佐久間から呼ばれることはなかった。
数週間、数ヶ月、連絡はない。
時折、翔太から「最近合わないけど忙しいの?」だの「さっくん怒らせちゃった?」だの連絡が来るが、肝心の予定の連絡は全く来ないので返す気にもならなかった。
知りたいのは次いつさっくんに会えるのか、それからあの日のキスに意味があるのか。
ただそれだけ……
佐久間から連絡が途絶え、最初の半月は深澤にとって悪夢のようだった。
目が覚めてからもベッドでだらだら。
髭も剃らず、ご飯もろくに食べず、お酒やお菓子で食いつないでいた。
パパからの連絡にも体調不良と嘘をついてのらりくらりと躱しつつ、佐久間のことを思い出すたび、身体が火照り、つい一人で慰めてしまう。
さらに2週間が経ち、いよいよ手持ちの現金が底を尽いた。仕方なくパパ活を再開し、取り戻すかのようにスケジュールを無理やり詰め込んだ。
でも佐久間からの連絡を待っている心はどこか浮つき、笑顔もどこか作り物になっていたと思う。
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