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あっさりと片付けた傭兵連中がいなくなり、もぬけの空となった小部屋の中には武器が散乱していた。
特に役に立ちそうな武器はここには見当たらなかった。だが腰袋の魔石が反応を示していたので、ここでガチャを試すことに。ガチャをすること自体が少なくなっていたが、ネーヴェル村の長の言葉を思い出し、ガチャを試す考えに変えた。
「ウニャッ? 魔石を出すのだ?」
「ああ、ガチャをするから蹴飛ばしたりしないでくれよ」
「シーニャ、もう魔石知ってる! アック、危なくない」
さすがに慣れたようで、少しだけ離れて見守っているようだ。
【Lレア 武具吸収の書 :錆びた剣が???する】
【Lレア ダメージ吸収の書 :錆びた剣のみ】
【Lレア 属性無効の書 :錆びた剣のみ】
魔石が反応したのでガチャを試してみたが、アイテム的なものでは無く全て習得系だった。それも錆びた剣だけに有効なものばかり。
フィーサが来ていないからなのかは不明だが、錆びた剣が急に成長し始めた感じがある。これもネーヴェル村で斬撃覚醒をしたからかもしれないが。
何にしても全て習得することにした。錆びた剣絡みで何かいい変化を及ぼすかもしれないからだ。
「ウニャ? アック、何も出なかったのだ?」
「いや、すでに得られているぞ。この錆びた剣の……んっ?」
「ウニャニャ!? 部屋中の武器が勝手に動いているのだ!?」
「こ、これは……!」
フィーサには鞘があるが錆びた剣は片手剣ということもあり、普段は腰にぶら下げたままだ。背中に背負うほど大きい剣でも無いので、腰袋と並びでぶら下げていた。
ガチャを終えたと思ったら、今度は錆びた剣が小刻みに震え出した。錆びた剣だけでなく、散乱している短剣や短刀も何かに反応してカタカタと音を出している。
その矛先が全ておれにでは無く、錆びた剣に反応している感じだ。
「全く、用も無い小部屋を動かずに一体何を騒いでいるかと思えば――! あら、その剣……」
おれとシーニャを残し、先の方へ進んでいたミルシェが戻って来た。ずっと怒らせてばかりのような気がするが、錆びた剣を見て何かに気付いたようだ。
「錆びた剣のことで何か気付いたのか?」
「……アックさま。剣をお持ちなら、使って差し上げればよろしいのではなくて?」
「使う?」
「別に敵を斬るだけが剣の役目ではありませんわ。……そうではなく、振ったりすればいいかと」
ミルシェを呆れさせてしまったが、確かにその通りだ。言われるがままに片手剣を手にして一振り、二振りほどしてみた。元々魔石ガチャによって出た剣のせいか、錆びた剣も熱を帯びた感じだ。
「ウニャ!? アック、アック!! 武器が襲ってくるのだ!」
「――む?」
「ウウウゥ! 全て叩き落としてやるのだ!!」
ミルシェは慌ててもいなく冷静に事の成り行きを見守っているが、シーニャは戦闘態勢を取っている。
短剣と短刀、もしかして――?
「……待て、シーニャ!」
「早くしないとアックが串刺しなのだ!!」
「いや、大丈夫だ。慣れている……ここは任せろ」
「慣れ……ウニャ?」
(物は試しというやつか)
錆びた剣を構えたままで武器たちの中心に突っ込んでみた――まさに次の瞬間。武器類が次々と錆びた剣に吸収されてしまった。
「フフッ、やはり!」
「ウニャ~? 武器が消えてしまったのだ? どこに消えたのだ?」
小部屋の中に散らばっていた武器類が全て錆びた剣に吸収された。それにより錆びた剣そのものが何かに変わったわけでは無さそうだが。
「ミルシェは何となく感づいていたのか?」
「ええ。あの村で見た光景……そして目覚めた覚醒で、その錆びついた剣も覚醒したものと思われますわ」
「覚醒か。フィーサよりも強力な武器になる可能性があるってことか」
「……面白いことになりそうですわ! フフフ」
シーニャだけは何が起きたのか分からずに小部屋の中を隅々まで探している。今のところルーンは何も示していないが、確かに散乱武器は吸収された。
この先、どうなるのか色々試していくしか無さそうだ。
「シーニャ! 行くよ」
「ウニャ」
「あたしは先に行きますわ! 明かりが近い感じがありますので」
「あ、あぁ」
ミルシェはまだシーニャと距離を取りたいらしい。衝突に冷や冷やものだったが、もうすぐ町にたどり着きそうだ。
シーニャはおれの傍を離れずにすりすりと足にくっつきながら歩いている。猫っぽいが、虎としての怖さも兼ね備えているから問題は無いだろう。
「アックさま! こちらへ!」
小部屋を出た後の通路は何も起きることなく進んでいた。だが先頭を歩いていたミルシェが、明らかに緊張の声色をさせておれを呼んでいる。
傭兵が小部屋に陣取っていた時点で大方の予想はついていたが、事態は深刻のようだ。