部屋にまた二人っきりになり、しばらくは本の続きを見ていたけれど、どうしても気になってしまい、
「……あの、いつも一人で食事をしていて?」
と、彼に確かめてみた。
急な問いかけに、貴仁さんがふっと本の見開きから目を上げる。
「ああまぁ、な。仕事関連での会食なども多いが、何も予定がなければ、たいていは一人だ」
その答えに、「……寂しいですよね」という一言が口をつく。
「そう……だな、ただ幼い頃からずっとそうでもあったから、ある程度は慣れているつもりだったんだ。……だが、君と出会ってからは、一人の食事が味気なく思えるようで、つい引き止めないではいられなかった。やはり迷惑だっただろうか?」
「迷惑だなんて」
とっさに首を横に振って、
「むしろそんな風に、私を普段から思ってもらえるなんて……」
ひたむきなその想いに、はにかんで応えた。
「いつも思っている、君を、君のことを」
頬に手が当てがわれ、コツンと額が触れ合う。
「……付き合いを始める時に、欲張ってみてもいいかと前置いたのを、まだ覚えているだろうか?」
コクっと頷いて返す。
「私は、君と付き合ってから、さらに欲張りになったらしい。君を、こんなにも離したくない」
切なくも甘い囁きかけに、衝動的に彼に抱きつくと、思わず自らの唇を押し当てた──。
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