第8話 温かい惑星
俺は抵抗する気も起きなかった。
自分の過ちを自分の命で相殺するつもりだった。
包丁が首に当てられ、切り口からは血が流れる。
「なぜ抵抗しない?」男は話す。
「私は、大量殺人の片棒をした。相応の報いだと思っている」
「そうか賢明な判断だな」冷たく言う。
首元のナイフが深い所まで届く。
結局私も会社の一部であり、不甲斐なさを感じていた。
・・・ここまでか頭の中で様々な物が蘇る。諦めの感情と共に、不思議と死にたくない気持ちが。
死にたくないというよりはSmileFuture社一死向かいたかった。
「待ってくれ」俺はとっさに発言する。
命乞いなんかじゃない。
「俺はセロトニンカプセルを世の中から消え去りたい。チャンスをくれないか」
「信じるに値する行動を私にどう証明するのかね?」
「今は証明するものがない。だが信じてほしい。厚かましいのはわかっている。だが、、、」俺は彼の目をみて答える。
「必ず戻ってくる」
「殺されにか?」俺は静かにうなずく。
彼は静かに椅子に腰かけ、質問をする。
「どうやって君は惑星に戻るのかい?」彼はまだ疑心暗鬼だ。
・・・そうこう話している中に、墜落を察知してSmileFuture社の船が状況確認のため降りてきた。
それを見た彼は、俺とシドニーを縛り上げた。
「不時着してきた2名を拘束してある」彼は船員と話している。
「二人には即刻処分命令が出されている重罪人でね、褒美として二ヶ月の配給を手配される」
「そこを三ヶ月、、、お願いできませんか?」彼の言葉を踏みにじるように、船員は笑う。
船員が後ろを向いた瞬間に包丁の柄で思いっきり殴り船員を気絶させる。
「今だ!!いけ!!」彼は大声で言う。
拘束なんて元々されていなかった。相手をかく乱するためのダミー。
俺は急いで船へと乗り込む。離陸体制が整い、出発する時、彼は静かに見送っていた。
(必ず戻ってきます)俺は心の中でつぶやく。
そこにシドニーが乗り込んできた。「シドニー、降りてくれ。これは俺の戦いなんだ」「君を巻き込むことはできない」
シドニーは「あなたのそばにいたいだけ」「どの道、死ぬというならあなたの隣がいい」
「君を死なせたりしないよ」俺は優しく答える。
自分たちの始まりの地へ旅立った。
「あっちでは私たちは、指名手配よ?どうするつもりなの?」心配そうに彼女は俺を見つめる。
「全ての元凶も元へいく。父に会ってくる」俺は最後の戦いに向けて呼吸を整える。
「あのね、惑星エフェリアは私の故郷なの。確かに貧しい惑星だわ。言えなかったの。見下される気がして」シドニーは不安そうに言う。
「俺が住んでいた惑星よりもとても温かく感じた。」俺は続ける。
「人の温かみを。次は旅行でいこう」彼女は微笑んだ。
惑星へと到着し、俺はシドニーを安全なところへ一時的に避難させ
「必ず戻ってくる。父に話をつけてくる」「気をつけて」抱きしめあった後、俺は、父の家へと向かう。
窓越しに父の姿がみえた。どうやらひとりらしい。俺は窓から侵入し書斎へと向かう。
扉を開けると父が待っていた。
サイレントアラームで俺のことはバレていたのだろう。
父は黙っている。
「惑星エフェリアの惨劇を知った。なぜあんな非道的なことができる。あなたも政府も人間という心が欠如している」
父は黙っている。
「どうしてそんなことができる??」
父は重い口を開ける。
「お前はまだまだ未熟だ、ただ何が起きたか見ただけで真相を知った気でいる」
「なにもわかっていない」
俺は憤怒のあまり父を押さえつける。
「なにがわかってないんだ!!!」
暫くの沈黙の後、父は話す。
「キリル、お前はもうすぐ死ぬんだ。政府まで、なぜ事実隠蔽するかを知らないばかりに」
「非人道的?お前はぬるすぎる」
「一度セロトニンカプセルを飲んだ者の末路を知らないから、そのようなことが言える」
「私たちは、最大の過ちを冒してしまったのだ」
そう言う父は泣いていた。
(続)
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