TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「さあて、そろそろ帰るとしよ……」


「あたしがあんたをこのまま逃がすわけないでしょう?」


彼はミノリ(吸血鬼)の顔を見るなり、こう言った。


「大罪持ちのモンスターチルドレンよ。貴様のマスターを私がこの手で葬《ほうむ》ったことを恨んでいるのか?」


ミノリは静かにこう言った。


「別にあんたのことを恨んでいるわけじゃないわ。油断したナオトも悪いからね。……だけど、あたしはあんたのやり方に無性に腹が立っている。だから……死んでも知らないわよ?」


彼女の黒い瞳からは、今にもその瞳に吸い込まれてしまうかのような感覚を覚えた。

彼が拳を構えた瞬間、悪夢は始まった……。


「我が身に眠りし、絶対の力よ。今こそ、その力を我が前に示せ……『|森羅万象を殺す形態《オールキラー・モード》』」


ミノリ(吸血鬼)がそう言った直後、彼女の髪と瞳が真紅に染まった。(それ以外は黒く染まった)


「ふん、少し姿が変わったところで何も変わら……」


「……殺す」


ミノリ(吸血鬼)は瞬間移動でもしたかのように、彼の目の前に移動すると、彼の腹を思い切り殴った。

彼は声も出す間も無く、結界の内側にある壁まで吹っ飛ばされた。


「……な、なんだ……この力は」


ミノリは結界の内側の壁に寄りかかっている彼の方へ、ゆっくりと歩き始める。


「あたしはあんたを絶対に許さない。大切な家族を傷つけた、あんたを……絶対に許さない」


彼は膝に手をつきながら苦しげに立ち上がると、こう言った。


「貴様のその力は、おそらく己自身を滅ぼすものだ。貴様は己の命を削ってまで、あの少年の仇《かたき》を討《う》つつもりなのか?」


「ええ、そうよ。本当は使いたくなかったけど、あたしがキレるぐらいのことをしたあんたを殺すためだから別に後悔してないわ」


「そう……か。ならば、私は貴様をねじ伏せるまでだ! うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


最後の力を振り絞り、走り始めた彼はミノリ(吸血鬼)の顔面に拳を打ち込んだ……だが。


「あんたの拳は、もうあたしには効かないわ」


「わ、私の拳を人差し指だけで受け止めただと!」


「もう……あんたは終わりよ」


ミノリは彼の拳をもう片方の手で払いのけると、ピョン! とジャンプして彼の顔面を思い切り殴った。


「グハァ!?」


鼻の骨が折れなかったのは奇跡だったが、それでも闘技場の床が彼の鼻血で汚れたのは言うまでもない。


「汚い血……。あんたの血を見たせいでナオトの血を吸いたくなってきちゃったから、あんたには死んでもらうわ。覚悟しなさい」


「ま、待て! 私は悪くない! 悪いのは油断した、あの少年だ!!」


「確かに油断したナオトにも責任があるかもしれないわね。けど、あたしはあんたが卑怯な手を使ってまでして勝とうとする、そのやり方が気に食わないのよ。あたしが言ってること、分かる?」


「言わせておけば、偉そうな口を叩きおって! 貴様らモンスターチルドレンは地獄に落ちればいいのだ!」


「残念だけど、先に地獄に落ちるのはあんたよ。知ってる? あたしが完全にキレると……無表情になるのよ」


ミノリ(吸血鬼)の顔から表情が無くなった瞬間、ミノリの動きは人の目では追えないほどのものになっていた。


「もうあんたは助からない……。あたしがあんたの全部を粉砕する」


「やれるものならやってみ……」


「十連超高速殺人拳《デスサイズパンチ》」


本当に十回殴ったのか分からないほどのスピードで打ち込まれた拳は、彼の顔面に全て命中していた。


「ぐ……ぐふっ……」


「ナオトが負った痛みは、こんなものじゃないわ。けど、少しはナオトが感じた痛みを味わえたでしょ?」


「こ……このっ!」


「そんなヘナチョコパンチはあたしには効かないわ。パンチっていうのはね、体重を乗せて打《う》つのよ!」


「ごはっ!?」


「顔面に十二発か……。まあ、こんなものじゃ、まだまだあたしは満足しないけど、そろそろ決着をつけましょうか」


「この……化け物が!」


「あんたに何を言われようと、あたしは構わないけど今度、今回みたいなことをナオトにしたら……あんたの家族を皆殺しにするから、そのつもりでいなさい」


「ま、まだだ! 私には、まだ奥の手が残っている!」


「へえ、それって、今のあたしを倒せるくらいの力なのかしら?」


「ああ、そうだ。貴様を殺すことができる唯一の手段だ!」


「あっ、そう。それじゃあ、今すぐその力であたしを殺してみなさいよ」


「……」


「どうしたの? その奥の手とやらを早く見せてみなさいよ」


「…………」


「ただの時間稼ぎなら、やめといた方がいいわよ。今のあたしは、フェアリータイプができる前には倒すことがほぼ不可能だった特性が『ふ○ぎなまもり』の『ミ○ルゲ』くらいの存在だから」


「…………時は……満ちた」


「え? なんですって?」


その時、目のハイライトが消えた状態の『トワイライト・アクセル』さんが突如して出現し、光の槍が突き刺さったままのナオトを運んできた。

その後、トワイライトさんは彼にナオトを手渡すとパタリと倒れた。(ナオトは彼にお姫様抱っこされている)


「貴様が一歩でも動けば、少年の命はないことくらいは分かるな?」


ミノリ(吸血鬼)は無表情のまま、静かにこう言った。


「それがどうしたって言うの?」


「き、貴様のマスターだぞ? 本当に私がとどめを刺してしまうのかもしれないのだぞ? 貴様はそれでいいのか!?」


「トワイライトさんに精神支配の魔法を使って、ナオトをここまで運ばせたのは良かったと思うけど、わざわざ、あたしの目の前にナオトを運ばせるなんてね」


「な、何が言いたいんだ! 貴様は!!」


「モンスターチルドレンのことをただただ化け物呼ばわりするだけのあんたに教えてあげてもいいけど、きっと後悔するわよ?」


「そんな安い挑発に私が応じるとでも思って……」


「固有魔法『絶対命令《アブソリュートドミネイト》』」


「……うっ!」


ミノリ(吸血鬼)の真紅の瞳が一瞬、ピカッ! と光った直後、彼はピクリとも動けなくなってしまった。


「モンスターチルドレンはね、マスターから名前を与えられるまでは真の力を解放することができない不完全な存在なのよ……。けど、名前をもらった瞬間、身体中から今まで感じたことのないようなエネルギーが溢れ出してきて、すっごく幸せな気持ちになるの。もちろん固有魔法の名前を付けてもらう時も同様よ。まあ、固有魔法の場合は自分であって自分じゃない『もう一つの人格』であっても名前を付けられるから『獣人型モンスターチルドレン』みたいな多重人格種は自分で固有魔法の名前を考えるでしょうね。そして、あたしのような大罪持ちは【大罪の力】と【固有武装】と【固有スキル】を使用できる。まあ、あたしはちょっと他の大罪持ちとは違うから、こんな姿になれるんだけどね。さて、そろそろとどめを……」


「……その必要はないぞ、ミノリ」


意識を取り戻したナオト(身長『百三十センチ』の主人公)は『オメガ・レジェンド』の両腕から脱出しながら、そう言った。(ナオトは、それまで彼にお姫様抱っこされていた)

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

25

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚