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ゆゆゆゆ
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乾いた銃声。
悲鳴。
崩れる空気。
「走れ!」
チャンスの声が飛ぶ。
ほぼ同時に、腕を引かれる。
「追ってくるぞ!」
後ろで、足音。
複数。
騒然とした店内を走り抜ける。
エリオットの呼吸が上がる。
でも、足は止まらない。
駐車場。
「チャンス、こっち!」
エリオットのバイク。
鍵は、もう手の中。
(……来んなって言っただろ)
一瞬、チャンスの言葉がよぎる。
でも――
「知るか」
小さく吐く。
スーツのまま。革靴でステップを踏む。
エンジンをかける。
爆音。
「乗れ!」
チャンスが後ろに飛び乗る。
同時に――
「撃て!」
後方からの声。
銃口が上がる。
「伏せろ!」
チャンスの腕が、エリオットの背中を押す。
次の瞬間――
銃声。
金属音。
火花。
「……っ!」
アクセル全開。
タイヤが滑るように回り、バイクが夜の道路へ飛び出す。
***
風が、叩きつける。
ネオンが流れる。
背後から追ってくる車のライト。
「右だ!」
チャンスの声。
同時に、身体が動く。
ハンドルを切る。
ギリギリで曲がる。
「お前、慣れてんじゃねぇか!」
「ピザのデリバリーでね!」
エリオットが笑う。
明らかに、テンションがおかしい。
銃声が追ってくる。
街の中を、疾走する。
車列の隙間を縫う。
信号無視。
クラクション。
全部無視。
「なんだこれ、やばい!」
声が弾んでる。
恐怖じゃない。
完全に――
高揚。
「チャンス、いつもこんな事してんの?!」
「たまにな」
銃声と同時に返す。
チャンスが振り返りざまに撃つ。
後ろの車がブレーキをかける。
「最悪だろ?」
「いや――」
エリオットが笑う。
夜風の中で。
「……最高」
その一言に。
チャンスが、一瞬だけ黙る。
「……っ」
(イカれてる)
でも次の瞬間には、また撃つ。
「前見てろバカ!」
「見てるって!」
バイクがさらにスピードを上げる。
細い路地へ。
車は入れない。
「そのまま突っ切れ!」
「了解!」
壁ギリギリを抜ける。
段差を飛ぶ。
着地の衝撃。
「っ……!」
腕に鈍い痛み。
でも。
止まらない。
「……っは!」
笑いが漏れる。
「ほんとにやばいこれ!」
「後で言え!」
最後の角を曲がる。
ライトを消す。
エンジン音を落とす。
静寂。
――追手の気配が、消える。
***
数分後。
人気のない路地。
バイクを止める。
「……はぁ……」
エンジンを切る。
一気に静かになる。
さっきまでの音が嘘みたいに。
「……撒いたな」
チャンスが呟く。
「だね」
エリオットが息を整えながら笑う。
少し荒い呼吸。
でも。
顔は――
楽しそうだった。
「……お前」
チャンスが呆れたように見る。
「普通ビビるだろ」
「ビビったよ」
即答。
「でも」
肩で息をしながら。
「それ以上に、やばかった」
少しだけ、目を細める。
「……楽しかった」
その顔。
あの時と同じ。
全部持っていかれそうなやつ。
「……」
チャンスが、ふっと笑う。
小さく。
「ほんと最悪だな」
「お互いにね」
エリオットも笑う。
そのまま。
どちらからともなく――
拳を出す。
コツン、と軽くぶつける。
乾いた音。
でも。
確かな感触。
***
「……っ」
その直後。
エリオットの動きが、わずかに止まる。
「どうした」
チャンスが眉を寄せる。
「いや……」
エリオットが腕を軽く押さえる。
スーツの袖。
じわりと、暗く滲んでいる。
「……マジか」
「かすっただけ」
軽く笑う。
でも、少しだけ顔が歪む。
「たいしたことない」
「バカ言え」
チャンスの声が低くなる。
一歩、近づく。
その腕を掴む。
さっきより、ずっと慎重に。
「見せろ」
「……平気だって」
「いいから」
短く、強く。
その声に、エリオットが少しだけ黙る。
「……」
視線が、ぶつかる。
さっきまでの高揚が、少しだけ落ち着いて。
代わりに――
別の熱が残る。
「……ほんと」
エリオットが小さく笑う。
「最悪な夜」
「……だな」
チャンスが低く返す。
でも。
その手は――
離れなかった。