次の日になっても、あの人のことが忘れられなかった
気づけば、あの人のことを考えていた
あの日から、勉強やら部活やらで忙しくなり、あの公園に行けなくなった
元々、帰り道にある公園ではないので、毎日行っているわけではなかった
それでも、あの人に会えるかも。と、時々、公園に来ていた
と言っても、すぐに帰らなければならなかったから、あの人には会えなかった
あの日から1ヶ月。
やっと勉強や部活が落ち着いたので、公園に寄ることにした
久しぶりのベンチに座り、空を眺める
もう、夕焼け色に染まり始めていた
少し肌寒くなってきて、やっぱり来ないか、と諦めて公演を出た
家に帰る道を歩いていると、喫茶店を見つけた
少し小さいけど、窓が大きくて中の様子が見える
その中に、一際目立つ人がいた
1ヶ月前、あの公園で会った人だった
俺は、思わず喫茶店に入って、その人のところへ向かってしまった
その人は勉強をしていて、教科書やノートが机いっぱいに広がっていた
その人が顔を上げると、目が合った
その人は驚いたように目を見張り、スマホを取り出した
文字を打ち、俺に見せる
『お久しぶりです。汚いですけど、座ります?』
きっと、同じ年齢なのに、丁寧な言葉で、少し笑ってしまった
その人は不思議そうに顔を傾げる
俺は首を横に振り、その人の向かいに座る
スマホを取り出し、打ち込もうとすると、俺の顔とスマホの間に手が入ってくる
顔を上げると、スマホの録音機能だった
喋ると文字にしてくれるらしい
早速、喋ってみる
「えっと…」
「こんにちは…?」
そのまま文字に移される
それを見た彼は面白そうに笑った
「何笑ってんだよ」
彼は笑いながらノートに字を書いた
『ごめん、つい面白くて』
繊細で、整った字だった。
「んだよ、それ」
そのまま、2人で笑い合う
そういえば、まだ名前も言っていなかった
「宮舘涼太、です」
文字を見ると、平仮名になっていた
『どんな字書くの?』
「えっと…」
目の前にノートとシャーペンが出される
俺はそれを手に取り、書いた
『宮舘涼太』
その字を、彼は見て、
『いい名前だね』
そんなこと、今まで言われたことがなかったので、照れる
「あなたの名前は?」
『ラウール』
「ラウール?」
思わず、反復してしまう
『ベネズエラとのハーフなんだ』
「ハーフ…」
そう言われて、なるほど、と納得する
整った顔をしていたので、あまり疑いはしなかった
「なんて呼べばいい?」
『なんでも。』
「じゃあ…ラウール?」
そういうと、彼…ラウールは、微笑んで頷いてくれた
微笑みも、ハッとするほど綺麗だった
気づけば、もう帰らなければならない時間になっていた
「ごめん、もう帰らなきゃ」
『分かった。』
『連絡先、交換してもいい?』
“連絡先”
俺も言おうとしてたことなので、少し驚く
「俺も言おうと思ってた」
2人で笑い合い、交換する
ラウールはまだ残ると言うので、先に帰る
連絡先を交換するのは、何度もやったことはある
でも、何故か、妙にくすぐったかった
『はいオッケー!!』
「silentやん!!」
康二が叫ぶ
だから、毎回うるさいんだってば
「今回は人死ななそうだから安心して見れるわ」
毎回死んでるよね、ほんとに
なんなん
「死ネタが好きなんだって」
ラウールが作者にインタビューしたらしい
そしたら死ネタが好きって
なにそれ
コメント
6件
好きな物語の予感!
見るの遅れて泣く(´;ω;`) マジで最高!